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RPG風の世界で、色々みなさん頑張ってる物語

周辺機器を繋げてみました -”呪われました”の21作目-

作者: 茶屋ノ壽

 ここは、とある辺境の”お山”です。”呪われ”ている、の娘さんであるところのシルフィさんは、今日は”お山”の”鍛冶屋”さんにして、”発明家”の、黒い竜の人であるところのヤミさん(10万と38歳)の住む洞窟へと来ています。ヤミさんが絶賛開発中である、”見えない手”と幻影を駆使した、simulatorの調整のお手伝いの為です。

 今回の顔ぶれは、まず”ガンマン”の美少女シルフィさん、相変わらず、にこにこと無邪気な笑みをうかべて、楽しそうに話を聞いています。

 次に、”堕天使”のエルさん。以前、竜のヤミさんが物理的にひっかけて落としてしまった、美人の天使さんがその後、いろいろあって、”堕ち”まして、現在は、ヤミさんの洞窟で居候中です。

 その隣りには、美少年に見えるかたがひとつ。数十世紀の経験がある、霊力豊富な、神主さんの技を基盤に、国つくり級の、神様2柱分の、”力”を付加された、いろいろ規格外な式神(不思議な力でつくられた、人工生命体のようなもの)である、四季さん。

 そして、最後は、たまたま暇をしていた、その式神に力を継承させた、国造り級の神様であり、見た目は軽薄な美青年であるところの、ナギさまです。

「暇というか、また逃避されているわけでありましょうか?」ある意味親にあたるナギさまに対して、いろいろ、見切った台詞を言う四季さんでありました。

「いやね、正直こんな”ろーとる”が現役を張っているのは、若い世代の成長を阻害していると思うんだよね、だから、あえて、面倒なところを、放り出してきたわけだ。うんうん」腕組みをして、もっともらしく、うなずいているナギ様でございました。

「いやそこはもう少し丁寧に指導いたしましょうよ。何から手を付けたらよいかわからなくて、膨大な資料に埋もれていく気持ちは、かなりつらいものがありますよ」何かを思い出すようにして、”堕天使”のエルさんがいいます。

「前の職場の上司さん”にーと”で”ひきこもり”なんでしたっけ?」シルフィさんが人差し指を立てながら言いました。

「ええ、最初の7日くらいでしたかね?真面目に働いていたのは……それも7日目は休みにすることを決めただけですから、実質6日くらいしか働いていませんよ、あのお方」あの頃は大変だったなあ、と、遠い目をするエルさんでありました。

「ご愁傷さまでございますね。それならば、現在は都合よく(?)、堕天しておられますから、羽根を伸ばしてみるのもよろしいかと存じ上げます」なんだか優しい目をしている、式神さん(0歳)です。

「ええ、ありがとう。同僚には悪いですが、せっかくなのでたまりにたまった有給休暇を消化させてもらっています」黒く変色した羽根を、物理的に伸ばしながら、にこやかに言うエルさんでした。

「なんだが、対応ちがくね?私も普段働いているんだから、こう、もちょっとねぎらってもらってもいいような気がするんだが?」ちょっとすねた感じの神様のナギ様です。

「ナギ様はなんだか、働きづめで倒れるという想像ができかねますからね。どなたかがおっしゃられなくても、適度に休息をとられていらっしゃるので、あまり、労わるという感覚が発生しないのでございます」淡々と返事を返す、四季さんです。

「なるほど、言われてみれば、仕事で疲れたことはないな!」すがすがしい笑みの駄神様でございました。

「ええと、でも、ナギ様はうちのボスと違って、結構現場に出てくださっているみたいなので、うらやましいです。私なんてここしばらく、ボスの声すら聴いていませんよ」ちょっとフォローに回る発言をする苦労人の堕天使、エルさんです。

「それはすごいですね、いつから”ひきこもり”をしているのですか?」少女のシルフィさんが、不思議そうに尋ねます。

「そうですね、あー、最後にボスのお声を聴いたのが…………あら?いつだったかしら?異空間通路ぬけみちを利用したときに、時系列が乱れているようで、はっきりしないですね。うん、たぶん2千年くらい、声を聴いてませんね、確か、ボスが新しく直接の信徒のとりまとめ役をスカウトしたあたりぐらいに、聞いたきりだったような?」首をかしげながら、思い出そうとするエルさんです。

「それって、部屋の中で干からびているんじゃないか?」ナギさんが、笑いながらいいます。

「そんなまさかあるわけがないじゃないですか」乾いた笑いのエルさんです。

「神様ってなくなる(=存在が消える)ことってあるの?」無邪気に尋ねる幼い少女のシルフィさんです。

「神様として存在がなくなってしまう方もおられますね。まあ、結構生命力は旺盛でございますので、なかなか消滅とかはされないようですが、忘れ去られることは、あるようです。まあ、話題の渦中のお方に限っては、まずしばらくは消えることはないでしょう。もっとも自分から消えようとしたらわかりませんが」四季さんが解説していきます。

「”独居老人の孤独死”みたいな絵面が浮かんできたよ」乾いた笑いのナギ様です。

 独り、蒸し暑いへやで、力尽きている神様……なんだか怖い想像になってきました。乾いた笑いが周囲に響きます。


「おまたせー、機器の調整ができたから、そろそろはじめようか、って、なに、この空気?」simulator room へ入ってきた巨大な黒い竜の人であるところの、ヤミさんが、乾いた笑いが響き渡る空間に少々驚きながら、言いました。

 その巨体に隠れるようにして、20代前半くらいに見える白い髪の女性も部屋に入ってきます。彼女は、シルフィさんが、先日拾ってきたDungeonさんの、現身うつしみです。発明家の竜の人であるところのヤミさんが、うっかり義体を与えて、個性化してしまったのです。

「あ、Dungeonさんだ、こんにちは」明るく声をかける、見た目10歳くらいの美少女さんであるところのシルフィさんです。

「ひぃっ」なんだか、恐ろしいものを見たといった風に、ひきつった声をあげて、ヤミさんの巨体(大きな建物ほどもあります)の後ろに隠れます。

「えっと、何か怖いものがみえるのかな?」シルフィさんは自分の背後を確認しながら、可愛く言いました。

「シルフィさんは確か今朝も裏山のDungeonさんの所を攻略してきたんでしたっけ?」堕天使のエルさんが確認します。

「はいですよ。だんだん出てくる”怪物”が強くなってきて、楽しくなってきてます。罠とかも工夫がみられて良かったですね」にぱりと笑いながら、拾ってきたDungeonさんの育成状況を伝えるシルフィさんです。

 少し、安心したような表情のDungeonさんです。

「そろそろ、壊滅直前まで攻略して、急成長を促してもよいくらい、地力がついてきましたでしょうか?」かわいく、言ってますが、その発言内容は、『存在できるぎりぎりまで、追い込みますよ』と言っているのと同じです。綺麗な笑顔が怖いですね。周囲も若干引いています。

「ひい!」悲鳴をあげて、硬直するDungeonさんでした。

「けっこう厳しい教育方針なんだな、お嬢ちゃんは」冷や汗をたらしながら、軽薄美青年風である神様のナギさまがおっしゃられました。

「そうですか?私くらいの人が簡単に攻略できるようなDungeonは、ちょっと不安ですから、最低限身を守れるくらいに急いで育ててみようとしているだけなのですが?」不思議そうに言うシルフィさんです。


 みなさん、あー、という表情です。いつものとおり、自身の実力を低く見積もりすぎていますね、という、『あー』ですが。

 Dungeonさんは、あれで実力低いの!と驚愕の表情でまた固まっていますね。


「さて、と、今日の本題ですが、その少し急いでいるDungeonの育成にかかわりつつ、こちらのSimulatorの開発に活かせる方法が浮かびましたので、試してみよう!というものです」空気を変えるかのごとく、巨大な竜の人でありますので、自然に、大きな、明るい、声で、ヤミさんが宣言します。

「それはどのような方法でございましょうか?」丁寧に、合いの手を入れる、式神の人です。

「現在のSimulatorは、ご存じのとおり、僕こと竜の人の自前の演算能力に、僕が開発した超高性能の電子頭脳が加わって、各種事象を、つまり、”見えない手”で行う、作用反作用の再現や、現実と見まごうばかりの幻影の制御をしているわけですが、正直みなさんの能力がハイスペックすぎて、計算が追い付いていません」ひょいひょいと、黒板に”見えない手”を使用して白墨で図を描きながら説明する竜の人です。

「?電子頭脳の世代を上げることで対応することになったのではないですか?」エルさんが、たずねます。

「まあ、将来的にはそうするのですけど、開発に少々時間がかかりそう+コストがね、かさみそうなので、ここはいっぱつ、もう一つ『周辺機器』を増やしてみようかと」

「あー、だから、『彼女』がここにいるのだね」色気のある視線を、女性型の現身に向ける女好きのナギさまです。

「そのような目を婦女子に向けていますと、また、奥方様の雷が落ちてしまいますよ、比喩ではなくて本当に、『ぎがわっと』級の」息子みたいな立場であるところの、式神の四季少年が、母親にあたるナギ様の奥方である方を思い、釘をさしてみます。

「そうそう、Dungeonさんは、そのまま”怪物”や罠の管理の専門家でありますから、その能力をこのSimulatorへつなげて、処理を手伝ってもらおうかなと」

「だいじょぶなのです?そのDungeonさん実力はまだまだですよ?」不安そうに訊ねるシルフィさんです。

「うん、それはまあ、大丈夫……かな?あくまでも補助だし。それに、このSimulatorなら、安全にDungeonの練習(?)とか、できますしね」

「そうなんです、私も、いつもいつも、滅ぶんじゃないかな?と戦々恐々としながら、”飼い主”様に調教されるのは、精神的にきついのですよぅ」泣きそうな表情でDungeonのおねーさんが言います。

「美少女に調教される、薄幸の美女……うん、どんなプレイだか想像すると、いろいろ萌えるね」そこで親指をたてて、片目をつむるのは、いかがなものかと思うのですが、ナギ様。

「教育上、よろしくない発言はやめましょうね。まあ、確かにSimulatorなら、安全でしょうね」エルさんが、ナギ様の発言にげんなりとしながら、ヤミさんの発言に同意します。

「そうですよね!」嬉々として同意するDungeonの御嬢さんでございました。

「いえ、しかし……。まあ、大丈夫でしょう」少し迷った末に、発言を取りやめてしまった四季さんです。

 シルフィさんはにこにこと笑っています。



 ***



 Dungeonさんは、その現身の頭部の上半分を覆うような兜をかぶります。目にあたる部分に画像が表示されます。その白く細い手は、球形の接続装置に乗せられていています。

「思考制御、つまり、思った通りに、Simulatorを動作させる、機構と、タッチパネル式の制御装置を併用しています。動かしかたは、事前に説明した通りです。いつもの、Dungeon制御の感覚で行えばいいですよ、いつもの通りの違和感なく行動できますら!情報もリアルタイムで全て、伝達されますから、素早い対応が可能です!」ヤミさんがえっへんと胸を張り、説明します。

「わかりました、ええ、あまり違和感ないですね。本体のDungeonとの接続も通ったままですが、意識しないと反応しないようになっているんですね」Dungeonさんが感心したように言います。

「ええ、完全に感覚を閉ざしてしまうと、Dungeonさんへの経験が蓄積されにくいですからね、あと不安でしょうし」

「ありがとうございます、なんだか久しぶりに人権を認められているような気がします」

「(ふだんどんな対応をされているんだろう)まあ、人格を固定化しちゃった責任もありますし、そこは十分考慮いたしますよ」ヤミさんは、爬虫類顔なのでよくわかりませんが、少しひきつった表情をしたようです。

「そんな、責任と取るだなんて……」頬を赤らめるDungeonさん。

「いがいと、大胆だなー」ちゃちゃを入れるナギ様。

「”だんじょん”と”どらごん”なら夫婦めおととして相応しいでございますね」しみじみと呟いているのは、四季さんです。

「いや、違うからね!意味が違ってきてるからね!」あわてるヤミさん(独身)です。

「『私というものがありながら、浮気するのね?』」ついでに、面白がってからかっている居候のエルさんです。

「あのね……そういう意味では、僕はエルさんにも責任を取らないといけないんだからね」憮然としている口調のヤミさんです。

「あーそういえば、私、竜の人に(物理的に)ひっかけられて堕ちたんでしたね」ぽんと手を叩く堕天使のエルさんです。

「わすれていました」意外にびっくりしているのは、その前後の事情を知っていたはずの、シルフィさんです。「エルさん、自然にここになじんでいますから」それはもうどっぷりと、堕落してましたから。


「はい、話を戻すね!とりあえずテストとして、単純なDungeon Attackをしてみようかと思います。Dungeonさんのいつものやつを、Dungeonsさん自身と、僕と超高性能電子計算機で再現しますね」

 はーい、といい返事で、皆様嬉々としてDungeon Attackを開始されたのでありました。


 ***


「ひいぃぃぃぃぃ!」

 ええと、響き渡っているのはDungeonさんの悲鳴です。あれから、容赦なく身体(迷宮)を蹂躙(攻略)されていっている『彼女』の悲鳴です。出現させる”怪物”は端から消滅させられて、罠は華麗に回避されて、もしくは、破壊されていきます。つまり、いつもの通りなわけですが。

 四季さんの双方の手に構えたが短剣がひるがえると、怪物ががスライスされコマ切れになるわけです。堕天使のエルさんの、槍や、放つ魔法の氷の刃が、身を貫くのです。ナギさまはひょいひょいと攻撃を避けながら、敵を、手も触れずに投げ飛ばしていっています。”ガンマン”のシルフィさんが放つ光弾が、対象を消し炭に変えるのです。

 とくに、シルフィさんは、普段手加減していた攻撃を、いっさいやめて、本気モードです。冷徹に、的確に、無駄なく、一撃で、壊滅させていきます。

「うん。壊れる心配がないから、おもいっきりやれていいですね!」嬉しそうに、笑顔で、2丁拳銃を乱射するシルフィさんです。

 で、Dungeonさんは、それらの壊滅的な攻略情報というか、蹂躙情報をいっさいがっさいそのまま受け取っているわけでして……結果として……

「うにゃがぁぁぁぁaaaaaa、ふぃぃぃiii、ラァRameeeeeee」Dungeonさんは、このように恐慌状態におちいるというわけでありまして。

「あーやはりこうなり申しましたか」達観した表情の式神少年さんです。

「よーし、ここは私の出番だねっ」ナギ様が、Simulatorの幻影を無視して(!)、Dungeonsさんに接近して、抱きしめて、あやします(?)。

 だけどまず、ダンジョンの攻略を止めたほうがいいんじゃないかな?なんだか、Dungeonさん、痙攣しているし、あれは、人のする表情じゃないですね、それに、いろいろ中身か漏れているような……。

 おっと、シルフィさん、ついにDungeonのBossを嬉々として仕留めて、クリアしました……容赦ありませんね。それと前後して、あわてて、ヤミさんがSimulatorを止めはじめましたようです。

 軽薄青年駄神のナギさまの、Dungeonさんへの、手の動きが怪しくなったあたりで、エルさんと四季さんからから突っ込みが入ります。Dungeonさんは少し落ち着いたようです……というか、その表情色っぽ過ぎませんか?

「役得だろ?」「セクハラです!」「奥方に報告しますよ?といいますか、すでに情報体が接続されているように思います?」「おっと、治療だからね?!治療?」「わわ、システムが止まらない!」「ははははは」笑っているのはシルフィさんです。



 てんやわんや



 安全に成長させるはずの仕掛けが、さらに『彼女』を追い詰めることになった、くらいで、いつもの通り、平和な”お山”の日常でございました。








 Dungeonさんはその後、無事(?)に回復したそうです。そして、精神的に一回り強くなったようですよ?

 ……何か開けてはいけない扉を開きかけたようで、その後の、シルフィさんを見る目が怪しいですが……。


 …………いろいろ、大丈夫です、多分きっと。



 

 

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