さくら、ふるふる
高校の入学式は、なんだか味気なかった。
あれだけ勉強しろ勉強しろ言われて、頑張って希望校に入学できたにも関わらず、嬉しさも感慨深さも、何も、何も浮かんでこなかった。
唯一思ったのは、三年間この制服かということ。近所でもそれなりに可愛いと有名だったブレザーだったけれど、似合う似合わないかはまた別の話だ。
まあそもそも、誰の希望校なんだ、って話。
校門の脇には立派な桜が鎮座していて、風が吹いては淡いピンクの雪を降らしていた。おかげで校門前は絨毯が敷いてあるみたいで、それはちょっと綺麗だった。もっとも、すぐに踏みにじられて色濃く、石や土と混じるんだけれど。
担任の先生、普通。クラスメイト、普通。別段目立つところもなければ、悪いところもない。その他大勢って言葉がぴったりで、漫画や小説なら主役どころかサブにもなれない感じ。もちろん私を含む。
中学校の友達は幾人かいた。初日はその子たちと共に行動し、ちょっと寄り道をして帰って終了。これが華やかな女子高生生活の始まりかと思うと、本当、誰のための人生なんだろうって感じ。
終わりよければ全て良し、っていうのは何についてだっけ。そんなことを感じながら、スタートした高校生。
綺麗なのは校門の主だけ。でもそれも入学して数日で全て散ってしまった。
その後私はみんなと同じスピードで友達を増やしていき、無難にテニス部に入り、浮きもしなければ中心にもいけないポジションに当然のごとく収まった。早い子は既に恋人を作り、髪を染めピアスを開け、女子高生って感じになっていたけれど、背伸びした感じは否めなかった。私も出来ごころで髪を染めてみたけれど、だからといって何も変わらない。
そうやって、みんなと同じということに慣れて、いやそれが当たり前だと気づいて、ふと嫌になった。
母は私のことを「いい子」だと言った。でも母の中では一番じゃない。それは弟が持っている。
気が早いのか周りに焦らされたのかもう大学の話をし出し、かと言ってプレッシャーはいけないと思っているのか自分と同じ大学に行く必要はないのよ、と言い出す。
構われていないわけではない。愛されていないわけではない。
だけど、満たされることもなかった。
対して父は何も言わない。仕事で疲れてるのかもしれないし、いわゆる年頃の娘ってやつを難しく考え過ぎなのかもしれない。だから私も何も言わない。言って余計に疲れさせたら、困らせたら、それはそれで申し訳ない気持ちになる。
学校から帰るとき、若葉が芽吹き出した桜をよく見上げた。
一気に花だけを咲かせて、散らさないと葉を出せない桜。花と葉が会えないのは彼岸花もだったっけ、と思いながら、その両者の扱いの違いに苦笑してしまう。
たぶん私は桜みたいになれない。かといって彼岸花みたいにもなれない。
何も変わらない。学校と家とを行って帰ってしてるだけの毎日。時折友達とカラオケに行ったりカフェに行ったりして、だらだらと時間を過ごしているだけの日々。
私って、なんだったっけ。
そう思えば虚しくなるから、考えないようにした。
私って、何がしたいんだっけ。
そう考えれば進路を期待する母の顔が浮かぶから、思わないようにした。
緑でいっぱいになった桜は、校門に日陰を生んだ。葉の隙間から零れる光が、たんぽぽを照らしていた。
空を仰げば、私の名前がそこにはあった。眩しいぐらいに、私とは似ても似つかない明るさで。




