サンライド皇国~ルイゼン通り~
誤字脱字やその他指摘がありましたら連絡お願いしますm(__)m
では、どうぞごゆるりと(*^_^*)
にぎやかな街の通りに俺たちは買い物と依頼探しに来ていた。
ここはサンライド皇国。この大陸における三大強国と呼ばれるうちのひとつで、平和な国だ。
ちなみに、残り二つの国は隣国のシルヴェスタ王国とリスタール帝国。シルヴェスタはサンライドの同盟国であり、なかなか友好的な関係だが、リスタールはこれら二つの国と敵対関係にある。
リスタールは武力に優れ、力が絶対であるという理念を持っているため、力よりも文化やつながりを大切にしているサンライドとシルヴェスタとそりが合わないのだ。
「今回の依頼はガウル地方の妖狼退治だ。ジゼット」
横目で眼鏡越しに俺の相棒であるジゼットを確認する。
大きなあくびをしている野性的な青年であるジゼットとは昔からの腐れ縁だ。
「スノーマウンテン。永遠の雪山かぁ~地図は……あるよな。ロイドのことだし」
「お前がアホなだけだろうが」
俺の正しい指摘に文句を言いはじめたジゼットは無視した。そうでもしないと、俺の持病になってしまった頭痛が起こるからだ。
そもそも頭痛持ちになったのがジゼットと生活するようになってからなので、原因は十中八九こいつだ。
俺たちの受けた依頼場所である『永遠の雪山』スノーマウンテンは呼び名の通り雪が溶けることはないい。場所はサンライドとシルヴェスタの国境にある。
ガウル地方は皇国側の領土で鉱山からたくさんの鉱石がとれることで有名だ。妖狼は普通の狼とは違い、主食が鉱石などの石だ。まぁきまぐれに肉も食べるが。
「まぁいい。狼ではなく妖狼なのは少しやっかいだが、さっさと片付けるぞ」
「りょーかい~!」
「のばすな。鬱陶しい」
また騒ぎ始めたジゼットに本当に頭痛がしてきた……。
相棒をやめたいのはやまやまだが、不本意なことにジゼットはかなりの実力者だ。あくまでも、策を練ったり、後方支援が主な俺にとって、このまま手放すのは損が多い。
「あー……とりあえず黙れ」
自分が非力なのはわかっているので思いっきり、げんこつをジゼットの頭に一発。
「いっっってぇぇぇえ!!」
そういって、座り込んでしまったジゼット。
「戦闘中はもっと大きい怪我するだろ?」
「……いや、机割れるくらいのげんこつだぜ? 痛いって」
あぁ。そういえばそれくらいはできたっけ。
それにしても、頭をさすりながら痛みからなのか瞳の潤んでいるジゼットはホントに犬みたいで可愛かった。いや、俺の意識の中では、こいつは大型犬だからな?
「なんか、すっげぇ失礼なこと思ってるだろ」
「あぁ。犬として可愛いぞ」
「可愛いって……俺の方が背高いし~犬って……なんか微妙」
「今は座っているからな。それに、犬と思われているだけましだと思え」
元気のなくなったジゼットをみつつ、さてどうしたものかと考える。
人気のない路地だからいいものの、こんなところを誰かにみられたら、変に思われるかもしれない。
選択肢を考えてみた。
1,無視 2,慰める 3,蹴る
3はかわいそうだ。よって1だな。
と、結論を出し、何事もなかったかのように先を急ぐ。
「うわっ置いてくなよロイド! じゃないとお前の学生時代の話大声で言ってやるからな!」
ピタッと止まる。周りを見渡し、眼鏡に内蔵されている生体反応を確認する機能でさらに探す。
誰もいなかったことに胸をなでおろし、背後から近づいてきたジゼットに肘鉄。
「グハッ! マジいてぇ~……」
「おやおや。そんなことで痛がっていてはこれからの苦痛にたえられるのでしょうかね?」
口調の変化に気づいたようだ。
「……怒ってる?」
「い~え、とんでもない。はらわたが煮えくりかえっておりますが、これから無残に死んでいくジゼットさんを考えて、とてもとても愉快な気分でございますよ?」
あくまでも、ニコニコと微笑みは絶やさない。
怒りの沸点に達すると口調が変わりまくるのが俺の悪い癖だ。そして、その状態の俺をもっともよく知っているのがこいつ。
「めっちゃ怒ってるだろ! ごめんって俺が悪かった! ロイド様が正しいから! 機嫌直して~!」
「お黙りなさい? 買い物から帰ったら楽しみに待つことですね」
怒りを静めるために俺は一人転移魔法を使用し、ジゼットを置いて、目的地へ向かった。
ロイドが転移魔法でいなくなってしまったあと。
「どうしよ……」
と魔法が大の苦手なジゼットはひとり、肩を落としていた。