1:プロローグ
「ほんと……耳が腐るぜ」
俺の一言で会場はそれまでの熱気を失い。
集まった冒険者たちが一斉に、俺の方へと視線を向けた。
「お前ッ!! やる気が無いなら帰ってもいいんだぞ!」
壇上で戯言をほざいていた奴は、俺を指差してそう言った。
会場に集まった雑魚どもも、壇上の奴に同調する様に罵声をあげる。
何が……「仲間と力を合わせて」「個々が持てる力を発揮すれば」だ。
俺はふっと鼻で笑い。
「馬鹿かお前ら! もしかしてお前らって……自分の事、『特別』だと勘違いしてないか?」
そう言うと、ドカドカと近づいて来た短気な大男は俺の胸ぐらを掴んで、高く持ち上げた。
「勘違いしてるのはどっちだッ!? ハハハハハハ」
勝ち誇った顔で自慢げに笑い出す男と、その様子を見て小馬鹿にする冒険者たち。
まあ、理解出来ない馬鹿には現実を見せるのが一番だろう。
なんせ、それなら犬猫でも主人が誰なのか理解するからだ。
「『特別』は俺一人だ」
見下して発した、俺のその一言で。
会場に集まった冒険者たちのボルテージは最高潮を迎えるのだった……。
*
「……ぐぬぬ。おかしい、おかしいぞ……? 俺の知っている異世界は、どんなザコスキルでも俺TUEEEできるはずだったのに何故だ?!」
冒険者の去った会場の真ん中。
袋叩きされた俺はふと、こっちの世界に来た日を思い出していた。
「サトル、お疲れ~~。おかげでみんなの士気が上がったよー」
声を掛けて来たのは、壇上にいた身内の一人。
クニオの演説は綺麗事が教科書通り語られ、その言葉を信じたら馬鹿を見る。
爽やかな見た目と、澄んだ瞳の彼は――俗に言う『詐欺師』だ。
「クニオ……そんなことよりもランはどこ行った? あのバカ思いっ切り殴りやがって、寸止めの予定だろ?」
「あぁ……ランならあの姿のまま。冒険者たちと飲みに行っちまったよ……」
短気な大男に変身していたのはラン。クニオの妹だ。
「ったく、あいつ。飲みすぎたら変身解けるのもう忘れたのかよ?!」
異世界に転移して来て五年。
俺、天龍院悟23歳は幼馴染みのクニオと、ランと共に『士気上げのサクラ』として旅をしている。
依頼主は主にギルドや隣国と戦を控えた国など。
俺のスキル【俺TUEEEもどき】は挑発相手を強化するというゴミスキル。
他にもこのスキルは、なろう系主人公のような俺TUEEE発言が自然に出てくるという……特典付き。
全く……生きていく上では地雷にしかならない。




