あの星は今でもコーヒーの味と温かさを覚えているだろうか
初めての投稿ですので、広い心で読んでもらいたいです。
感情を揺さぶられる感覚がありましたら、抱え込まずに思いのままに吐き出してあげてください。
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遠い昔、今は秋の始まり。
「ハァー…今日も寒いなぁ」
これを爽やかな風と言っていいのか、少し冷たい風に肌が悴む、なんて事のないいつもの寒い日。
ぼくには友達と呼べる人がいない、どのグループにも属さないし特別仲のいい人もいない、少し怪我の多いただのひとりぼっちだ。
安心して欲しい、いじめられているわけではない。
しかし1人でいることが好きというわけではないが、特に寂しいとも感じたりはしない、1人で気ままな日々を過ごすのは慣れっこだったんだ。
「そういえば、そろそろ冬か…」
少し戻って、今は春。
ぼくにはおじいちゃんだけがいる。
お父さんとお母さんはぼくが嫌いと言って、ある日突然いなくなっちゃったんだ。
行く当てもなくテレビを見ていたら電話がかかってきた。
「あれ?おじいちゃんだ」
ぼくは咄嗟に電話を取る
「おー坊か、じいちゃんだ、話は聞いた、これから迎えに行くから待ってろ」
何が何だかわからずにリビングで待つ。
少ししておじいちゃんが家に来て、ぼくを車に乗せておじいちゃん家に向かった。
車に乗って少しして、ぐうぅとお腹が鳴る。
「お?そうかまだこんな時間だったな、どっかで朝飯食って行くか!」
ぼくは驚いた!
「朝もご飯を食べていいの?」
その言葉におじいちゃんは目を丸くしてぼくを見る
「そうか」とだけ言葉にして運転を続ける。
木造の古い平屋についた。
「さぁ、これからはここが坊の家だ、坊とじいちゃんの家だ。」
それからはおじいちゃんの家から学校に通うようになった。
ぼくには相変わらず友達ができない。
引っ込み思案な性格という訳ではなく、ただ周りとどう接したらいいのかわからない。
そんなある日、家族についての作文を書く授業があったので、大好きなおじいちゃんのことを書いた。
そしたら作文を覗き込んできたクラスメートに揶揄われた。
「こいつパパやママじゃなくておじいちゃんだってー!変なのー!」
確かにぼくは変かもしれない、いつも1人でいるし…だけどぼくはおじいちゃんをバカにされた気持ちでムキになって言い返してしまった。
「おじいちゃんを悪くいうな!」
辺りが静まり返った、みんなが目を見開いている。
普段ほとんど声を発さないひとりぼっちのぼくが、初めて大声を挙げたからだ。
授業参観にも来たことがないおじいちゃんだけど、僕は知っている、仕事で毎日忙しいおじいちゃんだけど、「ただいま」と言ったら笑顔で「おかえり」と言ってくれるおじいちゃん。
朝と夜にご飯を作ってくれるおじいちゃん。
休みの日はいろいろな場所に遊びに連れて行ってくれたおじいちゃん。
だからぼくはそんなおじいちゃんが大好きだったんだ。
その日から余計に声をかけられなくなった。
夏休みに入ってからはよく山に虫取りに行ったりした。
カブトムシにクワガタムシ、名前はわからないけど大きな蛾、あと色鮮やかなトカゲ!
いろんな虫や生き物を見て捕まえて観察して、夏休みの自由研究にしたんだ。
そんなおじいちゃんが今日特別なことを話してくれた。
「じいちゃんは夏も好きだけど、1番好きな季節は冬なんだ。冬は寒いからコーヒーが美味いんだ。冬の夜に星を見ながら飲むのが好きなんだ、いつか大きくなった坊と一緒に、寒空に浮かぶたくさんの星を眺めながらコーヒーを飲みたいもんだなぁ」
その翌日初めてコーヒーを飲んだ。
「うぇぇ…」
苦くて飲めるようなものじゃなかった、おじいちゃんはガハハと笑っていた。
今は夏の終わり。
おじいちゃんが起きて来ない。
何度声をかけても返事もしてくれないし朝ごはんも作ってくれない、そこにおじいちゃんと仲の良かった郵便屋さんが来たので、おじいちゃんが起きて来ないと伝えたら焦った様子でどこかに電話をしている、少ししてサイレンを鳴らしながら救急車が来た。
何が起きてるのかわからずにいたら救急隊員の人にこう言われたんだ。
「残念だけど君のお爺さんは、星になってしまったんだ」
夏の暑さにやられて熱中症と脱水症状で身動きが取れず、そのまま逝ってしまったらしい。
今は冬の始まり。
ぼくには家族がいない。
大好きなおじいちゃんにはもう会うことが出来ない。
葬式などはおじいちゃんの会社の人が全部やってくれた。
涙は流れなかったけど、寂しさでいっぱいになった。
「おじいちゃんにはどこに行ったら会えるの?お父さんもお母さんもどこにいるの?」
学校の帰り道の河川敷沿いを歩きながら1人呟く。
辺りは薄暗く、もう冬だなぁ…
おじいちゃんに言われたことを不意に思い出した。
「坊、辛いことや悲しいことがあってどうしようもなくなったら、空を見上げるんだ。星は昼間でもこっちを見てくれているんだ。」
そうか、今ぼくは悲しいんだ。
お父さんやお母さん、大好きなおじいちゃんに会えなくて悲しいんだ。
空を見上げる…
空気が澄んでいて綺麗な星がたくさん見えた。
「わぁ…星がいっぱい」
そんな時「おじいちゃんは星になった」そんな言葉を思い出した。
たくさん光る星の中に一際小さい星を見つけた。
まるで生まれたばかりのような光の小さい星。
「おじいちゃんだ!」ぼくは瞬時にそう思った。
その瞬間、今まで抱え込んでいた悲しみと寂しさが一気に溢れて、いっぱいの涙が流れた。
「おじいちゃん…おじいちゃん!会いたいよ!降りてきてよ!なんでぼくを置いていったの!ぼくをひとりにしないでよ!もうひとりぼっちはやだよぉ、おじいちゃん…寂しいよぉ…」
ぼくはその日初めて、物心ついてから初めて、声を出して泣いた。
「おじいちゃん…お父さん…お母さん…」
お母さんにどんなに叱られても、お父さんに何回ぶたれても、一度も泣く事のなかったぼくが初めて、涙を流して大声で泣いた。
そしてまた空を見上げる。
あの星がまるでぼくの声に応えたかのように大きく光を放っていた。
「やっぱりおじいちゃんだ、降りてきてくれないけど、頭を撫でてくれないけど、あの日からずっとぼくを空から見守ってくれていたんだ」
そう思うとまた涙がたくさん溢れた。
どれくらい泣いたのだろう、辺りはすでに真っ暗だ、これ以上泣くのを我慢して家に帰った。
しばらくしてからぼくは保護されて施設に入り、転校した。
これがぼくの、遠い昔のおじいちゃんとの思い出。
あれから十数年の時が経った、少し戻って秋の始まり。
仕事の帰り道あの河川敷を歩く。
相変わらず僕はひとりぼっちだし、この肌寒い風を爽やかと言っていいのかわからない。
ふと空を見上げるとあの星が見える
光の小さいあの星。
「おじいちゃん、僕は今日も元気だよ。もう秋か、そろそろ約束の冬が来るね、そしたらコーヒーを一緒に飲もう」
返事をした様に光を放つ小さな星。
星になった僕の大好きなおじいちゃん
寒い季節にだけ現れる、ぼくの一番星
お読みいただきありがとうございます。
星に深い感情を感じて一筆した作品となりましたが、いかがだったでしょうか
温かいコーヒーを飲みたくなりましたか?
これからの季節の夜は空は澄み切り、星が綺麗に見えます。
たまにはホットコーヒーを片手に星を眺めてみてはどうでしょう
もしかしたらあなたにも、あなただけの特別な星が見つかるかもしれませんね




