いじわる王子
■ いじわる王子 ■
昔々、ある国に、とても意地悪な王子がおりました。
王子は事あるごとに、家来や領民に対して意地の悪い事をしましたが、王子なので誰も止められません。これには、王様やお妃様も困り果てました。このままではとてもではありませんが、王位を譲る事など出来ないからです。
そこで側近の家来が、とある提案をします。
「王様。私が思うに、王子様は自分が意地悪をしているという自覚がないのでございます。ですから、ご自身が意地悪な行為をされれば、これまでの間違いに気がつかれるのではないでしょうか」
なるほどと思った王様は、魔法使いを呼び出して、王子と寸分たがわぬ複製を作らせました。姿形はもちろんの事、その意地悪さもそっくりです。ただ、あくまで作り物ですから、一定の期間が過ぎれば消滅する仕組みでした。
「これで王子も、自分がどれほど酷い事をしていたか気づくに違いない。我が身をつねって、人の痛さを知れじゃ」
王様は複製を、赤ん坊の頃にさらわれた王子の双子の弟だと偽って、王子と対面させます。最初は戸惑っていた王子ですが、やがてこの状況を受け入れました。
王様夫妻は息子が間違いに気づき成長するのを期待しました。しかし、ここでトンデモナイ誤算が生じます。夫妻は複製が王子に意地悪をすると考えていましたが、そうはなりませんでした。それどころか二人は意気投合して、ともに意地悪をやり始めたのです。
一人でも手に負えなかったものが二人となり、王宮ばかりでなく国中が大混乱。
後悔先に立たずですが、複製はその内に消え去る運命。そう思って王様は耐え忍びました。単に、一つの方策が破れたに過ぎません。また新たな方法を探れば良いと、王様は考えました。
ところが、その目論見も外れます。
複製は自らの秘密を王子に打ち明け、間もなく消え去る事を伝えます。それを聞いた王子は持ち前の意地悪を発揮して、魔法使いに複製の寿命を延ばす事を約束させました。そしてあろう事か、もう一体複製を作れとも命じたのです。
魔法使いは困り果てましたが、王子の陰湿な意地悪に負け、彼の要求を受け入れざるを得ませんでした。
そして三人のいじわる王子は王様とお妃様を辺境の城へと幽閉し、自分たちだけで意地悪に満ちた政治を始めます。
何で、こんな事になったのかって?
だって、こう言うでしょう。
「類は友を呼ぶ」ってね。
そして王子たちは”三人寄れば文殊の知恵”の言葉通り、彼らに仇名す者たちを次々と粛清し、三人による王制を確立しました。
またオリジナルの王子を含め、複製達にも寿命はありましたが、魔法使いに次々と複製を作らせたので、最初の三人が死んでも、やっぱりいじわる王子は常に三人いるのです(年齢はバラバラでしたけどね)。
こうしてかの国は、永遠に意地悪な王子たちに苦しめられる事となりました。
めでたし、めでたし……あれっ?
【終】