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苦いレモンの香り──この恋には、嘘がある  作者: 晴海凜/Sunny
2.目の前に現れた、黒髪レモンくん
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08 上司の山口からの呼び出し

夕雨はその名前を聞いて、胸がわずかにざわついた。そういうことか。


「橘くんはね、大学でちょっとした事故に遭ったらしくて、卒業に時間がかかったんだよね。」


山口は少し間を置いてから続けた。


「それに、事故のせいでね、その頃のことを、正確に思い出せない部分がまだあるらしいんだよ。」


手をもみながら、山口は言った。


「だから、年齢とか、色々…気になるとは思うけど、本人が嫌がるときは、あまり踏み込まないでほしくて。まあ、白石さんはね、全然、そういう人じゃないから、全く心配してないけどね。」


笑う山口に、夕雨も口を開けずに頷きながら笑う。


「確か…白石さんよりは上ではなかったから、今まで通り、新卒として接してもらって問題ないよ」


「わかりました」


夕雨が目線を落とすと、手に握った紙コップのコーヒーの水面に、話を続ける山口が映る。

山口は少し間をおいて、遠くを見つめながら続けた。


「リハビリして、なんとか復学して1年生からやり直したって言ってたけど、血の滲む努力だったんだろうと思うよ。事故の前と後では、全然違う人生を生きてるようなもんだからね。」


夕雨は何も言わず、ただ山口の言葉に耳を傾けた。

内心ではもうすでに知っていることだったが、山口がそれを話すことで、改めて朝陽の過去に触れさせられた気がした。


コーヒーの水面に、忘れたい過去が映る。



気づくと夕雨は、過去の風景に立っていた。

螺旋階段の前には、金髪の青年が、糸の切れた操り人形のように歪な体勢で倒れていて、大雨に叩きつけられている。

螺旋階段の上の方に目線を移すと、それを真顔で見つめる女性がいる。

その顔が、少しずつハッキリする。この人は、…



「白石さん?」


山口の声が聞こえて、夕雨はハッとする。


「いまどっか行ってた?ハハッ…」


それはよく言われるが。

比喩でなく、本当にどっか行っていた。

夕雨は口を開いた。


「あの…実は…彼は知り合いだったんです。」夕雨は口を開いた。



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