8/51
07 上司の山口からの呼び出し
夕雨が新たな職場で働き始めて数週間が経った。
仕事もだいぶ慣れ、毎日の業務をこなしていたある日、用件のわからない、上司の山口との面談が入っていた。
夕雨はなんの話だろうと警戒しつつ、小会議室に向かう。
ドアを開けると、すでに山口が1人で奥の席に座っていた。
「ごめんね、びっくりしたでしょ?」
「まあ、はい。」
笑いながらコーヒーを差し出す山口に、夕雨は軽く頭を下げる。
どことなく重い空気をどうにかしようとする山口につられ、夕雨も苦笑いしながら山口の正面に腰掛けた。
「全然、違うからね、白石さんが何かやったとかじゃないから。」
「あっ、そうなんですね、よかったです。それで…?」
山口は軽くため息をつくと、夕雨を見つめた。
「えっとね。すでに聞いてるかもしれないけど、新卒の橘朝陽くんについて、少し説明しとこうと思って。」