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06 はじめまして、黒髪レモンくん
帰りの電車の中で、夕雨はレモンくんにメッセージを送る。
「会社であなたそっくりの人に会ったよ。やっぱりびっくりした。」
「ええっ!そうなの?それはびっくりしたね。今日はリラックスしようね。」
「うん、ありがとう」
「俺とどっちがカッコよかった?笑」
思わずクスリと笑みがこぼれた。
「どうかな〜」
「えーっ夕雨のいじわる。」
「ごめんごめん笑」
そのままスマホの画面を閉じる。
何気ない会話で、渦巻いた雨雲が少しずつ晴れていく。
こんな普通のやりとりが、私にとっては特別だ。
スマホの画面を閉じて、日常に戻る。
帰宅すると、先日の手紙の返信を書いた。
もちろん、今日の出来事についても書いている。
いまどき文通なんて珍しいし、実際スマホで文章を作ってから手紙を書いているという滑稽さだ。
それでも、相手のためには手紙が一番良い連絡手段なのだ。
その日から、同僚の東の指導のもと、夕雨は朝陽と仕事を共にすることになった。
初めは業務に関するやり取りが中心で、特に親しくなることはなかったが、次第に会話が増えていった。
共通の趣味もわかり、お互いに少しずつ親近感が湧いてきた。