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苦いレモンの香り──この恋には、嘘がある  作者: 晴海凜/Sunny
8.エピローグ:レモンの香り(夕雨視点)
46/51

45 苦いレモンの香り

完結です。長らくお付き合いいただき、ありがとうございました。

ドアの向こうに立っていたのは、金髪の青年だった。

風が店内に入り込み、彼の髪を柔らかく揺らす。


あのときと同じ――いや、それよりも少し、落ち着いた眼差し。


口元が、ゆっくりとほぐれる。


「こんにちは。……レモングラス、だよね」


その声に、胸が詰まる。


あの日の笑顔と、大学の記憶と、兵庫の街角と、鹿児島の風景と――すべてが一度に重なって、夕雨の中で静かに波打った。


夕雨は言葉を探したけれど、何も出てこなかった。


ただ、彼の髪が()()だったこと。


それだけで、すべてを察してしまった。


何も言葉を交わさず、ただ香りの中で立ち尽くすふたり。



やがて、彼が一歩だけ、夕雨の方へ近づいた。


それ以上は何もなかった。


でも、それで十分だった。


過去のすべてを肯定するように、夕雨は静かに微笑んだ。


彼の姿が、自分の中にあたたかくほどけていくのを感じながら。


物語の終わりに香るのは、爽やかで、苦くて、少しだけ切ない――

それでも、確かに前を向ける、レモンの香りだった。


(終)

込み入ったお話にお付き合いいただきありがとうございました。

今後、ネタばれありの登場人物一覧や、年表などの設定も載せる予定です。

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