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苦いレモンの香り──この恋には、嘘がある  作者: 晴海凜/Sunny
8.エピローグ:レモンの香り(夕雨視点)
45/51

44 きっと、愛していたんだ

次回で完結です。


「嫌だなぁ」


映画館の近くの、夜景の綺麗なソファに座ってると、横のレモンくんがため息をつく。

うんざりしているようだ。


「わあ。また来た。」

「分かってるよね?夕雨が呼んでるんだからね?」

「まあ、はい、そうですね。」

「そうだよ、夕雨のせいだよ。毎日毎日。」

「いやっ、いやいや、毎日ではないでしょ」

「いいえ。似たようなもんです。…俺だってもうダメってわかってんのに。」

「いやさ、AIの方はどうにかできても、脳の仕組み上、これは無理じゃん。」

「もう自分のために生きるんでしょ?」



その瞬間、背中を強く押されるように夢が途切れ、目が覚める。


真っ暗な部屋の天井。


気持ち悪い汗の感覚がして、手を胸に当てると、動悸がしていた。



昨日はこんな感じだった。夢で説教される滑稽さ。

これは全て私の頭の中なのだ。1人で何をしてるんだ。


何度も「折り合いをつける」と言ってきた。

けれど、本当は、ずっと朝陽のことが忘れられなかった。

頭の中に勝手に住みついたと思っていたけれど、それは違った。


朝陽が居座っていたのではない。


夕雨が、彼にしがみついていたのだ。


どれだけ“解放した”ふりをしても、心の奥底ではずっと、彼のことを――愛していた。


だけど、だからこそもう前を向きたかった。


“あの人を忘れよう”ではなく、“あの人が好きになってくれた自分を大切にしたい”と思えた。


その想いで、夕雨は朝陽の前から姿を消した。


そして、新しい香りに囲まれる日々がはじまった。



風鈴が鳴ったような音がした。


「いらっしゃいませ」


反射的に顔を上げて、夕雨は固まった。


ドアの向こうに立っていたのは、金髪の青年だった。

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