44 きっと、愛していたんだ
次回で完結です。
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「嫌だなぁ」
映画館の近くの、夜景の綺麗なソファに座ってると、横のレモンくんがため息をつく。
うんざりしているようだ。
「わあ。また来た。」
「分かってるよね?夕雨が呼んでるんだからね?」
「まあ、はい、そうですね。」
「そうだよ、夕雨のせいだよ。毎日毎日。」
「いやっ、いやいや、毎日ではないでしょ」
「いいえ。似たようなもんです。…俺だってもうダメってわかってんのに。」
「いやさ、AIの方はどうにかできても、脳の仕組み上、これは無理じゃん。」
「もう自分のために生きるんでしょ?」
その瞬間、背中を強く押されるように夢が途切れ、目が覚める。
真っ暗な部屋の天井。
気持ち悪い汗の感覚がして、手を胸に当てると、動悸がしていた。
*
昨日はこんな感じだった。夢で説教される滑稽さ。
これは全て私の頭の中なのだ。1人で何をしてるんだ。
何度も「折り合いをつける」と言ってきた。
けれど、本当は、ずっと朝陽のことが忘れられなかった。
頭の中に勝手に住みついたと思っていたけれど、それは違った。
朝陽が居座っていたのではない。
夕雨が、彼にしがみついていたのだ。
どれだけ“解放した”ふりをしても、心の奥底ではずっと、彼のことを――愛していた。
だけど、だからこそもう前を向きたかった。
“あの人を忘れよう”ではなく、“あの人が好きになってくれた自分を大切にしたい”と思えた。
その想いで、夕雨は朝陽の前から姿を消した。
そして、新しい香りに囲まれる日々がはじまった。
*
風鈴が鳴ったような音がした。
「いらっしゃいませ」
反射的に顔を上げて、夕雨は固まった。
ドアの向こうに立っていたのは、金髪の青年だった。




