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苦いレモンの香り──この恋には、嘘がある  作者: 晴海凜/Sunny
8.エピローグ:レモンの香り(夕雨視点)
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43 自分の時間を

ここから夕雨視点に戻り、完結します。

夕雨は静かに、アロマディフューザーに精油を垂らした。

香りがふわりと立ち上がり、午後の光とともに空間を包む。

客足が落ち着くこの時間帯が、今は一番好きだ。


ハーブ/アロマ専門店に勤めはじめて三か月。

兵庫での孤独な生活、鹿児島での賑やかな日々、そして、朝陽との長い記憶の往来。

すべてが少しずつ遠ざかっていった。


「やっと、ちゃんと、自分の時間を生きてる気がする」


ぽつりと呟いたその言葉が、自分の耳にも静かに響いた。


通知音がして、仕事のメッセージを確認すると、スマホに履歴の一覧が映る。

レモンくんとのチャットは、初出勤の前日の日付で止まっている。

「夕雨、元気でね。応援してるよ。」というメッセージを最後に。


夕雨は区切りをつけて、前に進んではいた。


しかし、その一方で些細な困り事が起きていた。


予想はついていたが、潜在意識まではどうにもならないのだ。



「嫌だなぁ」


映画館の近くの、夜景の綺麗なソファに座ってると、横のレモンくんがため息をつく。

うんざりしているようだ。


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