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35 あなたのことが好きだった
朝陽視点です。
夕雨の答えは驚くものだった。
「私はあなたに嫌われていると思ってたから。あなたの態度も、言動も、冷たかったから。」
それを聞いた朝陽は、何かが急に解けるような気がした。
自分があの時、何を考えていたのか、何をしてしまったのか、全く思い出せない。
だけど、気持ちだけは覚えている。
「でもあのとき、たぶん、俺は夕雨のこと…」
言葉が詰まる。
夕雨の口ぶり。夕雨の、真顔だが、その奥で苦しさを我慢しているような表情。
それを見て、なにかは思い出せないけれど、"あのとき自分が夕雨のことを深く傷つけたのだろう"ということが今さらのように分かり、胸が苦しくなった。
「夕雨、俺は…」言葉が詰まる。
夕雨はその時、少し驚いたような表情を浮かべながらも、優しく言った。
「今は、言わなくていいよ。でも、私はあの頃、あなたのことが好きだった。」
朝陽は、自分の胸の奥で何かが崩れ落ちるのを感じた。
過去に対する後悔、今の自分に対する迷い、そして何よりも、夕雨への未だに消えない感情。
それらがぐちゃぐちゃに絡み合い、言葉にできなかった。




