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29 ゆう、ちゃんと休んで
ここからしばらく朝陽視点が続きます。
朝陽は、日々、夕雨と過ごす時間が増える中で、どこかで見たことがあるような感覚に襲われることが増えてきた。
それは、ただの懐かしさとは違う、深い違和感だった。
夕雨が微笑むたび、彼女の声が耳に届くたびに、朝陽は心の中で何かが反応するような感覚に捉えられていた。
ある日、朝陽は夕雨と遅くまで残業していると、急にめまいがした。
歩いている途中、ふと足元がぐらつき、朝陽はそのまま地面に倒れ込んでしまった。
夕雨の心配そうな声が耳に入るが、朝陽はうわごとのように言葉を漏らしていた。
「ゆう…ちゃんと休んで…」
その一言を発した瞬間、朝陽は自分でも驚いた。
心の奥で誰かに伝えたかった言葉が無意識に口をついて出たのだ。
だが、その感情がどこから来たものか、朝陽にはわからなかった。
自分がなぜ「ゆう」と呼んでいるのか、その意味もわからず、ただただ心がざわついていた。




