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27 遠ざかるレモンの香り

レモンくんは静かに頷いて、口を開いた。

「理由、あったんじゃん。」


夕雨は静かに返す。


「そうだね。」


今、バスの中でそのことを思い出した夕雨は、少しだけ安堵の息をついた。

あの時、「レモンくん」とつけた理由が、やっと心にしっくりきた気がした。


「でも、本当は……夕雨が彼と向き合って話せたから、気づいたんだよね。」


夕雨はレモンくんの言葉にハッとした。


「ああ、そうか…」


夕雨の中で、いろんなことが繋がり、整理されていった。


「そう……そうだね。朝陽を、朝陽として受け止めきれなかったから……別の名前をつけて、切り離してたんだ。今、やっと分かった気がする。」


レモンくんはうん、と頷き、窓の外に目を向けた。


景色は流れ、淡く色を変えていく。


しばらく沈黙が続いた後、レモンくんは、ほんの少しだけ寂しそうに、けれど穏やかに言った。


「もう、大丈夫だよ。夕雨はちゃんと、朝陽と、みんなと向き合えたから。」


夕雨は、そういわれ、その言葉の意味をすぐに理解した。

目の前にいるこの存在は、静かに離れていこうとしている。


「……うん。ありがとう、レモンくん。」


夕雨は、少しだけ泣きそうな顔で笑った。

レモンくんも笑って、それきり何も言わなかった。


二人の間に流れる時間は、あたたかく、そして少しだけ切なかった。



誰かの降車ボタンが鳴り響き、夕雨ははっと目を開けた。


気づくと、一人、隣には誰もいない。


慌てて窓の外を見る。

よかった、まだ乗り過ごしてはいないようだ。


濡れた顔を拭うが、指では足りなくて、ハンカチを取り出す。


車窓の向こうに広がる街の光が、ぼんやりとにじんで見えた。


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