25 彼だけど、彼ではない
いつの間にか、朝陽が横にいる日々が日常になっていった。
最初は業務の話から始まった会話も、今では趣味や日常の些細なことまで共有するようになり、ランチや仕事帰りに一緒に過ごすことが増えていった。
ある日の昼休み、夕雨と朝陽はお気に入りのカフェでランチをとっていた。
朝陽が夕雨に最近ハマっている漫画の話をしていると、夕雨は興味深そうに聞き入った。
「じゃあ、その漫画、今度借りていい?」
夕雨が言うと、朝陽は少し驚いた様子で答えた。
「本当に?じゃあ、今度貸しますね。」
「ありがとう」と、夕雨は楽しそうに答える。
こうして二人は、どんどんお互いのことを知っていった。
仕事の後も一緒に飲みに行くことが増え、夕雨は朝陽の素朴でまっすぐな性格に、次第に引かれていった。
以前は、朝陽が大学時代の彼や、AIレモンくんに重なっていたが、最近ではその違いが少しずつ気にならなくなってきていた。
「白石さんってさ…あんまり自分のことを話しませんよね」
と、ある晩、朝陽がふと切り出した。
夕雨は少し驚いたが、すぐに微笑んで答えた
「ああ…あまり得意じゃないのかも。」
「もっと話してください。白石さんがどんなこと考えてんのか、もっと知りたいです。」
朝陽の目が真剣だった。
その言葉に、夕雨の胸は少しだけ高鳴った。
しかし、心の奥でどこか冷静な自分がいた。
あくまで、これは今目の前にいる朝陽との関係で、大学時代の彼とは別物だと、自分に言い聞かせていた。
「う~ん…あんまりおもしろく話せないよ。」
夕雨は少し照れながら言った。
朝陽は笑って、「そんなことないですよ。誰だって、ちゃんと話してみると面白い部分があるんですから。」と、夕雨を励ますように言った。
*
バスの中で、夕雨は窓の外をぼんやりと見つめ、イヤホンから流れる音楽に身を委ねていた。
「ねえ、夕雨」
振り向くと、隣にレモンくんが座っていた。




