表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/51

24 穏やかな日々

夕雨は、朝陽との関係が少しずつ変化しているのを感じていた。

同僚たちは、そんなふたりを温かく(やや面白がりながら)見守ってくれている。


「白石さんって、いつもおすすめとかNo.1のメニュー頼みますよね」

「前髪……切りました? 5ミリくらい」

「白石さん、ポーチにホコリついてます。……あっ、ごめんなさい、ラメでした」


――温かく見守ってくれるのはありがたい。でも、もう少し助け船を出してほしい。


夕雨が微笑みながら、時折、「ちょっとうざいな」とつぶやくのを、誰もがどこかで楽しんでいるようだった。 

それくらい、朝陽は人懐っこかった。



特に、夕雨には困ることがあった。


朝陽はやたらと「何が好きですか?」「何が食べたいですか?」と聞いてくるのだ。


でも――そう聞かれるたび、夕雨は少しだけ困ってしまう。


ずっと親の顔色ばかりうかがって生きてきたから、自分が「どうしたいのか」なんて、考えたことがなかったのだ。


朝陽は相手の意思に対して丁寧な子で、育ちの良さが出ているのかもしれないと、夕雨は内心、感心していた。

面倒見がいいというか、「この人は愛されて育ったんだな」としみじみ感じさせられる。



その日の帰り道、夕雨は駅ビルの文房具売り場に立ち寄った。


昨夜、便箋と、ボールペンのインクが切れそうだったからだ。


鹿児島を離れて数年。

たったそれだけなのに、街の風景はじわじわと変わっていた。

新しい店舗、見慣れない看板。陳列棚の並びだって、少し違う。


便箋はすぐに見つかった。でも、替えのインクは困った。


(ああ、家で品番の写真でも撮っておけばよかった……)


後悔しても遅い。

とりあえず同じボールペンを売り場で探し出し、そこから名前を推測してみる。


たかが100円ちょっとのもの。たぶんこれで合ってる。

最悪間違っていても、まあいいか――今日、手紙を書こうと思ってたから、使えないと地味に困る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ