23 「はじめまして」を選びました
言い終わった夕雨に、誰も責めることなく静かにうなずき、温かな沈黙が広がった。
すると、不意に東が口を開いた。
「……なんか、納得したわ。朝陽くん、白石さんに吸い寄せられるようにグイグイ行き過ぎだったもんね。」
「写真見たとき、ちょっと嬉しかったんだよ、私たち。夕雨ちゃんたち、うまくいってるのかと思って」と日高も続ける。
「だって、たまに完全に"二人の世界"にイっちゃってますもんね」
坂元の言葉に、誰かがふっと笑い、夕雨も肩を揺らすように微笑んだ。
「でもまあ……なんか、噂の二人のことちゃんと知れてよかったよ」
山口も、軽口の中に、優しさがにじんでいる。
夕雨はそれを受け取るように、そっと頭を下げた。
「ありがとうございます。……皆さんに話せて、少し楽になりました。ご迷惑はかけないので、一旦忘れてください」
すかさず東が「なに言ってんの。これからは、みんなで支えるよ」というと、
「カッコつけてるけど、東、マジで午前中、魂抜けてたよね〜」と日高が茶化す。
「お〜い! 子ども預けてまで見に行ったんだぞ、俺は!」とわざと東が大きな声を出す。
テーブルが再び笑いに包まれ、空気がふわりとほどけていく。
過去の痛みを抱えながらも、それを誰かと共有できたことで、夕雨の胸の奥にあった冷たい部分が、ほんの少しだけ、あたたかく溶けていった。
*
その後、夕雨は朝陽との関係を少しずつ見つめ直していった。
過去の痛みを胸に抱えながらも、今の朝陽と向き合い、共に歩んでいく決意を新たにしていた。
同僚たちは、静かに二人を見守り、時折温かな笑顔を交わす。
夕雨は、そんな日々の中で、朝陽との「今」を選び続けている自分に、少しずつ自信を持てるようになっていった。
彼女の心には、以前感じていた不安が少しずつ薄れ、肩の力を抜いて歩めるような、穏やかな気持ちが広がっていた。




