20 ひとりでは抱えきれない
休み明け。
朝陽は通院のため、その日は職場を休んでいた。
昼休み、東はそっとスマホを取り出し、夕雨のもとへやってきた。
「……白石さん、ちょっと、見てもらっていい?」
どこか妙にかたく、落ち着かない東の声。
夕雨が不思議そうにスマホを覗き込むと──そこには、遊園地のジェットコースターの記念写真が映っていた。
笑顔の夕雨と、その隣で金髪の青年──朝陽が、並んで笑っている。
「……っ」
思わず息を呑む夕雨。
「これ……隣にいるの、朝陽くん、だよね?」
東の問いかけに、周囲の同僚たちも自然と集まってくる。
スマホの画面を覗き込んだみんなが、驚きとざわめきを隠せなかった。
「え、めっちゃいい笑顔!」
「金髪だけど……朝陽くん!?」
「うそ、いつの間にそんな進展してたんすか!?」
わっと盛り上がる一同。
冗談半分、からかうような空気が広がる。
だが、そんな中、東だけは気まずそうな顔で、少しみんなを制した。
「いや、違うんだ……」
東はスマホをスワイプし、写真の端に小さく写った日付を拡大した。
「ほら、ここ……。」
「……え?」
「2016年……?」
ぱた、と静まる空気。
その場にいた誰もが、事態を理解し始める。
「これ……大学生のころ?」
「それって、…」
最初は軽い冷やかしのつもりだった。
だが、写真に刻まれた年月と、二人の自然な笑顔に、誰もが言葉を失っていく。
東は気まずそうに頭を掻きながら言った。
「ごめん……からかうつもりはないよ。最初は気のせいかと思ったけど、これ、見れば見るほど……一人では抱えきれなくて。」
日高が、そっと口を挟む。
「……うん。当たり前だよ。」
東は小さく頷き、夕雨を見た。
「……これは、一人じゃ抱えきれないよな。……きっと、白石さんも」
動揺した夕雨は、視線を逸らし、横の日高を見る。
日高は、何も言わずに静かにうなずいた。"大丈夫"と言いたげに。
その空気を感じ取って、夕雨はそっと目を閉じ、東を見て、小さく頷いた。
すると東が、ぱん、と手を叩いて言った。
「よし! 今日の夜、飲みに行こう!」
その夜、いつもの居酒屋で、朝陽だけがいない飲み会が始まった。




