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苦いレモンの香り──この恋には、嘘がある  作者: 晴海凜/Sunny
3.飲み会にて:朝陽が明かした過去
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18 ただ、見つめていた

その和やかな空気の中。


ふと、夕雨が顔を上げると──朝陽が、真っ直ぐにこちらを見つめていた。

その目は、何か言いかけたように揺れていて、夕雨は自然と時を止められたように感じた。


「なに?」


真顔のまま夕雨が問いかけても、朝陽は一切目を逸らさず、何かを考えるように、じっと見つめ続けた。


周りも、そっとふざけるのをやめて、口を閉じて、興味深そうにその様子を見守る。

少しの間、沈黙が流れ、朝陽はゆっくりと言葉を絞り出した。


「すみません、なんでもないです。」

「そう?」

「……よく、わかりません。」

「そっか。」


──その直後、空気を読んだかのように、東が咳払いをひとつしてから、わざとらしい声で口を開く。


「おーい朝陽くん見つめすぎだぞ〜。ここ職場の飲み会な!」


「そうだよ〜!」と日高がかぶせると、場にふっと笑いが戻り、夕雨も思わず吹き出した。


朝陽も、ちょっと照れくさそうに肩をすくめながら、グラスを軽く掲げる。

「じゃあ改めて。クソ野郎卒業に、乾杯で。」

「ああもう!何回やるんすか!」


あたたかな拍手と笑い声が、再びテーブルに満ちていった。



心の中で、夕雨は思う。


もしかして、私はまだ、どこかであの「レモンくん」に会えるのを待っているのかもしれない。


その思いは、誰にも告げることなく、静かに胸にしまった。


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