17 それでも誰かがそばにいてくれた
「最初は、ほんと悔しくて。八つ当たりもいっぱいしたし、何にでもイライラしてました。でも……誰も俺を責めないし、むしろ優しくされるんですよ、それすらも悔しくて。でも黙って、そばにいてくれて。それに……」
少し間を置いてから、唇を噛み、目を伏せたまま、ぽつりと漏らす。
「たぶん……母親だったと思うんですけど。暴言も吐いて。でも、それでも支えてくれました。」
そして、ようやく顔を上げ、夕雨たちの方を見て、穏やかに続けた。
「そしたら、だんだんアホらしくなってきて。変なプライドとか、邪魔だなって。助けを求めるのって、悪いことじゃないんだなって。むしろ、助けてもらったら感謝しなきゃって、思えるようになりました。」
テーブルのグラスが、かすかに揺れる。
「……それで。たぶん、あのときから変わったんだと思います。」
少し照れたように笑って、冗談めかして言う。
「今の俺は──まあ、ちょっとはマシになったかなって。クソ野郎、卒業しました。」
そう言ってグラスを軽く持ち上げ、小さく乾杯のジェスチャーをする。
周囲からは「よっ、卒業おめでとう!」と拍手や笑い声が起こった。
「マジで卒業できてんの〜?」
「補習ありそうだな」
「絶対まだ単位足りてないだろ」
みんながにぎやかにからかう中、朝陽も肩をすくめて笑った。
そんな中、夕雨はそっとグラスを置き、微笑みながら言った。
「……そっか、大人になったんだね。」
その一言に、朝陽はびっくりしたように目を見開いた。
「えっ!めっちゃまとめた!?」
わざと大げさなリアクションに、みんなが笑い、夕雨も思わず吹き出しそうになるが、口角を上げるだけで我慢する。
「うんうん、そういうこともあるよ」
夕雨はふいっと視線をそらし、両手でホットウーロンを持ちながら、ズズズーッと音を立てて飲んだ。
「うわ~白石さん、めっちゃめんどくさいって思ってる!?」
朝陽が苦笑しながら言うと、東がすかさず「まあちょっと長かったもんね」と横から茶化す。
日高も「朝陽くん、頑張れー!」と冗談まじりに応援し、みんなの笑い声がまた一段と広がった。




