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15 本当に、面倒くさいやつでした
静かな笑い声が交わる中、居酒屋の賑やかな音とはまた違う、あたたかな時間が流れていた。
ふと、グラスを置いた朝陽が、ぽつりと口を開いた。
「俺、昔クソ野郎だったらしいんです。」
突然の朝陽のパンチのある切り出しに、夕雨は料理をひっかけそうになる。
咳き込みながら、「な?え?」と困惑しつつ、とりあえず続きを促す。
東がすかさず、「どうした〜?」と笑いながらツッコミ、
日高も「今日そんなカミングアウトする会なんだ!」と肩を揺らして笑い、
近くにいた坂元も、「急にぶっこみすぎっすよ!」と声を上げる。
夕雨は目線を落とし、思わず口角が上がる。
(そういや、こいつ酔うと素直さが限界突破してたな…)と密かに懐かしさを感じていた。
「いやいや、さすがにそんなことないでしょ」
「どっちかっていうと、真面目なタイプだと思ったけど?」
「むしろ、ちょっと堅いくらいのイメージでした」
周囲から一斉に上がる「そんなわけないでしょ」コールに、朝陽は照れたように苦笑しつつ、手元のグラスをいじる。
「……ありがたいことに、そう言ってもらえるのは今の俺だからで。実際は、ほんとに面倒くさいヤツだったと思いますよ、昔の俺。」
その言葉に、みんなの表情が少しだけ真剣になる。
からかいのトーンは和らぎ、自然と耳が朝陽に向けられていった──
朝陽は語った。




