表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護狐の千年物語  作者: オリオン
第2章、都の騒動
39/41

死闘の決着

総一郎が合流し、一気に攻勢を仕掛けられる状況にはなった。


「大人しく倒されて!」

「く! 小さいのに凄い攻撃力だ。

 流石は悪鬼だな」

「そりゃね!」

「うぐぅ!」


飛びかかった攻撃は総一郎に防がれ

その瞬間を清美が狙い一撃を振う。

辛うじてその攻撃を妖力の盾で凌ごうとするが

清美は一瞬だけ霊力を強く纏わせ

柳の妖力の盾を引き裂いて見せた。

これにより、清美の攻撃は辛うじて柳に届く。

大きな隙が生じたのは間違いなかった。


「そこだ!」

「あっぐ!」


その隙を総一郎が突き、更に柳を追い込んだ。

辛うじて柳もこの攻撃を捌くことが出来たが

このままだと確実に負けると言う確信が柳に走る。


「こ、このままだとやられる! ひ、卑怯よ!

 2人がかりなんて!」

「卑怯だなんて、随分と今更ね河童!

 元々、あんたらの方が先に仕掛けたくせに」

「だな、これは2対2だ。卑怯も何も無い」

「お、大軒様は……」

「あむ、むぐむぐ、あーむ、んんー、うまー」


大軒は変わらずご飯を口に運んでいる。

今回はどうやら鳥肉を食べているようだった。

彼女は沢山の食料を常に持ち歩いていると分かる。


「食事中のようだな」

「こ、このままじゃ……お、大軒様!」

「んー? あ、私も戦えって? えー、でもなー

 面倒くさいなー、戦うって好きじゃ無いんだよね。

 私、妲姫お姉様の次に戦うの嫌いだと思うの。

 お腹いっぱいに食べるためなら戦うんだけどな-」

「た、戦ったらきっと、あの陰陽師が霊力使いますよ!」

「そうだねぇ、あむ、うまー」


もし大軒が本格的に参戦すれば勝算はかなり薄い。

大軒がやる気を出す前に柳を倒すのが

清美達の勝利条件だと言えるだろう。

逆に柳の勝利条件は大軒がやる気を出すまで粘る事。

この戦いでは大軒の動向が全てのポイントとなる。

あの気まぐれがいつまでも続く事を祈るしか無い。


「総一郎、分かってると思うけど大軒は相当危険よ、

 あんたでも一瞬で殺されるくらいに強い」

「分かってる、陰陽師の天敵、まさに人類の捕食者。

 暴食の妖狐の名は伊達じゃない、それは分かる。

 お前がまともに霊力を使ってない位だしな」

「そうよ、もし万が一あいつが敵対したら……

 総一郎、あんたにお願いするしか無い。

 悔しいけど、霊力が使えない相手と相対したとすれば

 私より、あんたの方が強いんだから」

「は、そうなったら最悪の役回りになるな。

 そうならないように、少しでも早く倒さないと」

「えぇ、そう言う事よ」


2人はもしもの場合、どう動くかを共有した後

再び柳に向けて刃を向け、構えた。

可能な限り速攻で勝負を仕掛ける、その為に。


「はぁ!」

「く!」


一気に総一郎が接近し、柳に刀を強く振った。

柳は総一郎の攻撃を盾で防ぎ、時間を稼ぐ。


「そこ!」

「きゃう! こ、この!」


しかし、その隙を清美に突かれて攻撃を仕掛けられる。

その攻撃は妖力の刀で凌ぎ、即座に柳に武器を放った。


「っとと! 甘いわ!」

「きゃう!」


当然、その程度の攻撃でどうにかなる相手では無い。

柳の攻撃を即座に対処し、清美は一気に踏み込み

柳に向けて、強く刃を振った。

この攻撃を柳はギリギリで回避、大きな隙が生まれた。


「終りだ!」

「あ」


大きな隙を突かれ、一気に総一郎が近付いた。

柳の視線は総一郎の刃に向かい、一気に青ざめる。

彼女は死を確信した。ここで終わるのだと言う確信。

折角勝てると思ったのに、このままここで死ぬ。

もう、動ける体力が殆どない状態。

彼女は終わったと確信する。


「ほい」

「な、ぎゃう!」

「え!?」


だが、彼女は唐突に2人の足下から伸びた

異常な火力の狐火に救われた。


「く、ま、まさか……」

「ここで河童ちゃんを殺されちゃったら

 戦いが終わっちゃうでしょ? それは嫌だなぁ。

 霊力をもっと食べたいからね」

「お、大軒様ぁ!」

「クソ! 何よもう!」

「少しは戦おうかなー」


そう言って、大軒は懐から枝の様な物を取り出す。

最初は小さかった枝を大軒が軽く回すと同時に

一瞬で枝が杖のように伸びる。

大軒はその杖を軽く回しながら、

ちょっとした笑みを見せながら片目をつぶり

杖で地面を突く。

同時に放たれた、妖力による衝撃波。


「い! きゃぅ!」

「うぐぅ!」


一瞬の間に周囲に伸びた衝撃波を2人は辛うじて防ぐ。

だが、周囲の建物は一瞬で崩壊し、村が消え去った。


「な、なんだ、この破壊規模!」

「私は-、皆と違ってー、特殊な妖術は無いんだけどー

 その変わり、妖力だけなら姉妹で1番多い。

 だから、私が得意なのは本当に単純な妖術。

 ふふ、ただ妖力を周囲に放出するだけの妖術。

 細かい術は得意じゃないけど、

 その代わりと言ってはなんだけど」


杖を楽しそうに回転させながら、一気に強く振う。

同時に放たれた、狐火による炎の壁。


「な!?」

「単純な妖術は誰よりも高火力になる。

 規模だけなら、妲姫お姉様にも錫音にも負けない」

「クソ! 総一郎! 私の後ろに来い!」

「な! そんな事!」

「余裕は無い! あんたら!」

「はい!」


狐火の壁が迫る前に式神達が一斉に集う。

そして、総一郎を守るように前に出た。

同時に一斉に放たれた炎の壁。


「止めろ!」

「うぐぅうう!」


式神達と清美が全力で結界を展開した。


「無駄ー」

「く、併用出来るの!?」


だが、大軒が指を鳴らすと同時に結界は一瞬で消える。


「きゃぁ!」

「うぅ! き、清美! ぐぁ!」


結界が消えれば当然、身を守るための盾が無くなる。

大軒が放った狐火は非情にも2人を包み込む。

激しい炎に身を焼かれ、2人と式神達は動け無くなる。

だが不思議なことに、生きている。


「ごちそうさまー、結界を張るしか無いよね?

 だから、霊力を奪える。美味しいよ〜

 本気で結界を張って防ごうとしたみたいだね。

 今までで1番多くの霊力を美味しく頂けたよ」

「あ、はぁ、く、クソ……」

「おっと、総一郎だっけ? 良く立てるね?

 まぁ、本気で攻撃はしてないから

 死んでは居ないとは思ってたけど。根性あるね」


総一郎は朦朧とする意識の中、周囲を見渡す。

式神達は動ける様子はなく、清美も動けそうに無い。

だが、清美は必死に立ち上がろうとしてるのが分かった。


「はぁ、はぁ、く、くぅ……こ、こんなの……まだよ

 ま、まだ、私は動ける……まだ、動けるのよ……!」

「わ、私は無事なんだ、す、凄いや。

 周囲の河童は吹き飛んだのに」

「あなたには当らない様にしたから」

「ありがとう、大軒様。ふふ、これで殺せる」


まだ立てそうに無い清美に向って柳はゆっくりと近付く。

そして、清美の前に立ち、妖力の刀を召喚した。


「ふふ、私、ここまで苦戦するとは思わなかったよ、お姉さん」

「くそぉ……う、動け、動きなさいよ、わ、私の足……!」

「だから、お姉さんが苦しむように殺してあげる。

 ふふふ、お尻の穴に手を突っ込んで、お姉さんの霊力

 全部引きずり出して、大軒様に捧げるわ」

「嬉しいけど、お尻の穴は嫌だなぁ」

「そう言わず、河童印の尻子玉ですよ」


笑いながら、柳は清美の背後に回り構えた。


「や、やめ!」

「頂きまーす!」

「さ、させるかぁ!」

「あだ!」


清美に柳の魔の手が伸びる前に総一郎が刀を投げた。

侍である総一郎にとって、相棒を投げるという行為は

屈辱に近い行動であった。侍としての誇りを投げ捨てる。

それは御剣部隊の隊長である彼からしてみれば

どうしようも無い屈辱に近いだろう。

だが、目の前で少女が殺されそうになってるときに

そんなくだらない誇りに拘るような男では無かった。

総一郎の刀は柳の腕に突き刺さり

彼女の動きを止めることは成功した。


「刀って、侍の誇りじゃ無いの?」

「そうだな、誇りだ……だが、こうするしか無い。

 今の俺は、ほぼ動け無い。清美を助けるには

 これしか無かった……」

「そ、でも、無駄だよ? 時間稼ぎにしかならない」

「だ、だろうな……

 だ、だが、何もしないわけにはいかない!」


総一郎は脇差しを抜き、まだ戦う意思を見せていた。

殆ど動けない清美と違って、総一郎はまだ戦おうとしてる。


「く、クソ、こ、こんな……ま、まだ、まだよ……私は!」

「動ける状態じゃ無いと思うけど」

「じゃぁ、お姉さんは後。先にお兄さんを殺してあげる」

「や、やってみろ!」

「あは!」


柳が刀を出し、総一郎に飛びかかる。


「くぅ!」


最初の一撃は辛うじて防ぐ事が出来た。

だが、ただ一撃を防いだだけで態勢を崩し

すぐに再び倒れることとなってしまった。


「うっぐぅ」

「あはは、じゃ、さよならだね。

 あなたの霊力は、いらない」

「そ、総一郎!」

「さよな」


柳の刀が振り下ろされようとした瞬間だった

清らかな鈴の音が周囲に響き渡ると同時に

強い風が吹いた。


「へ?」

「……大軒姉様、どういうつもり?」

「あ……え?」


そして、大軒の目の前に唐突に錫音が姿を見せる。

同時に錫音の背後から血が噴き出す。


「なん……」


総一郎は驚愕した。目の前の河童が斬り裂かれ

背から大量の血を吹き出している状況に。

何も見えなかった、気配も感じ無かった。

あまりにも素早い一撃。自分の目でも見えなかった。


「え、えっと……す、錫音……そ、その、だ、大丈夫?

 な、何か口から血が出てるけど」

「無理してるからね……私、今心臓負傷してるんだ。

 ケホ、でも、宝龍から伝言があってね。

 大軒姉様が暴れてるからどうにかして欲しいって」

「……」


さっきまで余裕綽々だった大軒の表情が青ざめていく。

異常な程の冷や汗を流しながら、目を泳がしていた。

その光景を見た清美も唖然として居る。


「さて……大軒姉様、返答次第じゃ……私の尻尾が増えるよ?」

「ご、ご飯を食べたくって! その! そう、ご飯を!」

「2人と式神が負傷して理由は?」

「ちょ、ちょっと威嚇しようかなって……き、気分良くて」

「そう」

「構えないで! は、反省してるからぁ!」


さっきまで自分達を弄んでいた圧倒的強者が

錫音を前に土下座をしてまで許しを請う。

この状況を見て、2人の表情はドンドンと変化していく。


「せ、せなか……が」

「い、生きてる!?」


唖然として居る総一郎の耳に聞えた小さな声。

どうやら、まだあの河童は息がある様子だった。


「結構しぶといね。でも、今は後だよ。

 まずは大軒姉様」

「ゆ、許して錫音! この通りだから!」

「……本当に反省してる?」

「反省してるよぉ!」

「本当に反省してるなら……

 1ヶ月間、ご飯を3食だけに抑えて」

「え゛!?」

「これが最低条件。鈴亭にお願いして監視して貰う。

 もし1ヶ月間で間食したら容赦しない。

 これはお仕置き。私が出来る最大限の譲歩」

「う、うぐぅ、じ、地獄だぁ……で、でも、でもぉ

 それで錫音が許してくれるなら従うよぉ!」


涙を流しながら、大軒はその罰を受けることにした。

暴食の妖狐である彼女からしてみれば

1ヶ月間、間食が出来ないのは地獄の様な物だろう。

彼女は毎日どんな時もご飯を食べてるくらいには

食事を取るのが大好きなのである。

そんな彼女が1ヶ月間も間食無しなど地獄に近い。


「……それじゃ、次はあなただね」

「あ、ひぅ……」

「私の一撃を耐えたあなたには

 特別に選択肢をあげる。

 ここで私に首を斬られるか

 1度、あやかしの国に来て情報を吐くか」

「あ、あやかしの、国、へ、い、いきます。

 し、死にたく無い……お、お願い、殺さない……で」

「……そう、分かった。じゃあ、そこで待ってて」


その後、錫音は総一郎の手当てをする。


「あ、ありがとうございます、錫音様」

「気にしないで、あまり酷い怪我じゃ無くて良かった」


その後、今度は清美の方に彼女は近付いてくる。


「清美ちゃん、今度はあなたを」

「ひ、必要無い……」

「え? でも、結構怪我が」

「ひ、必要無い……わ! こ、これ位……これ位!」

「無理をしても良いことは無いよ」

「さ、触らないで!

 誰も、た、助けてくれなんて言ってない!」

「……大丈夫だよ。これは、私が勝手に助けるだけ。

 私は誰かの手当てをするのが大好きだから

 あなたの手当てをするの。それだけだよ」

「や、やめ、さ、触らないで……う、うぐぅ

 よ、妖怪の、ほ、施しなんて……わ、たしは!

 私は、お、陰陽師よ! あ、あんたなんか!」

「ごめんね、でも、これは私の姉様が悪いんだ。

 だから、私が少しだけ償いをさせて貰うよ。

 すぐに姿を消すから、ちょっとだけ我慢して」


嫌がる清美を錫音は慰めながら手当てをする。

そして、短い間に清美の手当てを終わらせた。

短時間でありながら、その処置は的確。

医師の処置を受けたのかと誤解する程だ。


「よしっと、これで大丈夫」

「……」

「清美ちゃん。今日はごめんね。

 私の姉様が馬鹿な事をして怪我をさせちゃって。

 そして、いつもありがとう。」

「は、はぁ!?」

「これは言っておこうと思って。

 あなた達が都を守ってくれてるお陰で

 私も安心して動けるから。今日はごめんね。

 本当なら私がやらないと行け無かったのに任せちゃって。

 でも、清美ちゃんのお陰でこの村の人達の命は救われた。

 本当に感謝してるよ」


清美に向けて、満面の笑みで感謝の言葉を告げる。

この状況に清美は困惑を見せながらも

その笑みに何故か惹かれてしまっている自分を

無理矢理押さえ込み、彼女から視線を逸らした。


「総一郎君もありがとう。そして、ごめんね

 私の姉様が馬鹿な事しちゃったせいで怪我をさせて。

 これからも、清美ちゃんと豊君の事を

 しっかり支えてあげて欲しいな」

「は、はい、錫音様! 清美と豊様は必ず守ります!」

「うん。お願いね」


総一郎に笑みを向け、錫音はゆっくりと起き上がり

動け無い状態の柳を背負って移動を始める。


「大軒姉様。誤魔化そうとしても無駄だからね」

「う、うん……我慢します」


そう言い残し、錫音は清美達の前から姿を消す。

大軒もうなだれながら、2人の視界から消えていった。

2人は少しだけバツが悪そうな表情を浮かべながら

2人とも正座をして視線を逸らしていた。


「……清美」

「ふん、認めないわよ、私は……あいつの事」

「なんでお前はそんなに強情なんだよ。

 錫音様が来なかったら、俺達は殺されてた」

「……クソ、認めない。認めないわ……絶対に!」

「お前!」

「清美様! だ、大丈夫ですか!?」


2人が喧嘩をしそうになるが、

その前に桐絵がやってくる。

桐絵は清美の状況を見て焦りの表情を浮かべる。


「だ、大丈夫ですか!? ど、どうしてそんな……

 て、手当ては誰が? 総一郎さんですか?」

「いいや、錫音様が来て下さったんだ」

「え!? 錫音様が!? で、でも、怪我をしたって!」

「あぁ……本来はまだ動ける状態じゃない筈なのに

 俺達の為に来てくれたんだ……錫音様の口からは

 血も垂れてたし、本当に無理をしてたんだって分かる」

「え!? だ、大丈夫なんですか!?」

「あぁ、大丈夫そうだった」

「そんなのはどうでも良い、とにかく都に帰るわ。

 一応、まだ私は動けるし」

「あ、はい! 分かりました! お守りします!」

「……例え負傷しても、あんたに守られるほどじゃ無い

 ……けど、一応は、まぁ、期待してるわ」

「はい! お任せください!」


2人は桐絵の案内に従い、都へ戻る。

悔しい思いを拭いきれないまま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ