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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第2章、都の騒動
32/41

強い長を目指して

御剣部隊。帝を守護する直属部隊。

都に存在する組織には色々な組織があり

代表的なのは陰陽師。

半妖のみで構成されている白爪部隊。

そして、純粋な剣技のみで帝を守護する

普通の人間代表とも言える御剣部隊。


本来、御剣部隊は帝の護衛が役目であり

妖怪を退治する事が得意な部隊では無い。

だが、霊具神姫の武器により

御剣部隊も悪鬼を排除する事が出来る。

しかし、並の人間では陰陽師には敵わない。


だが、今代の長、歴代最強の剣士と言われる

天才、鮫島 総一郎は違う。

圧倒的な剣技を持ち、並の相手には容易に勝てる。

まさに人間最強の剣士と言えるだろう。


「お待たせしました、豊様」

「総一郎さん。ありがとう、来てくれて」

「いえ、私に対し、さん等と付ける必要はありません」

「で、でも、年上相手だと抵抗が……

 玄王さんにもさん付けるし」

「儂の事も宝龍と同じ様に呼び捨てでも構いませんよ?」

「げ、玄王さんはお爺様の様で、あまり呼び捨ては……」

「ふふ、そう思って頂けて光栄です」

「玄王様も来られるとは驚きですな」

「そうだね、でも、今回は非常に重要な任だ。

 本来なら宝龍も共に動きたい事案だろうが

 錫音の事もあるからね」

「錫音様に何かあったのですか?」

「うん、錫音様、今は怪我をしてるらしくて。

 だから、霊力を探知出来る私が動きたいんだ」

「何と……して、他のあやかしは?」

「勿論、彼らにも周囲の探索は指示をしてるよ。

 とは言え、河童の長が相手となれば非常に危険。

 蓮司達も苦戦は必至だろうしね」


1種族の長となれば、非常に高い実力があると確信出来る。

蓮司に高い実力があるのは間違いないだろうが

彼女達でも勝利は難しい程だろう。


「なる程……しかし、あの錫音様が負傷などとは

 私にはとても想像も出来ません。

 彼女には一分の隙も感じませんでした」

「あぁ、でも相手が悪い。彼女を負傷させたのは甘露だ。

 錫音が彼女と相対した場合、必ず負傷する。

 それが、甘露の能力だからね」

「甘露……どのような相手なのですか?」

「幼い少女だ。だが、実力は本物。

 しかし、この話は後にしようか。

 あまり時間があるわけでも無いしね」

「う、うん。気になるけど、時間は有限だ。

 まずは清美さんの所に行こう」

「清美ですか。彼女は手を貸してくれるでしょうか」

「流石の彼女もこの事態ならば動くだろうね。

 ましてや豊様まで動くんだ。動かない筈は無い」

「それもそうですね。では、向いましょう。

 護衛はお任せください」

「うん、お願いね」


その会話の後、帝は2人に護衛をされながら

陰陽師達の屯所へ向った。

都の人々は帝を前に平伏するが

帝はその必要は無いと伝えていた。

だが、ほぼ全ての住民は平伏する事を止めない。

それだけ、この都において帝の権威は圧倒的なのだ。

最も自分達を守護している

偉大な相手に失礼な態度を取るはずも無いが。


「ふんにゅぅうー!」

「幸子、もうちょっと気合い入れなさい」

「はぁ、はぁ、はぁ」

「桐絵、あんたは少しは体力を付けなさい。

 何度も言ってるけど、体力は大事よ?」


屯所では色々な陰陽師達が修練をして居た。

だが、清美は長の席でみたらし団子を食べながら

少しやる気が無さそうに指示を飛ばしている。

だが、その指示は態度とは裏腹に的確だった。

前とはかなり違う。玄王はそう感じた。


「清美様!」

「あによ、また河童でも出たの?」

「い、いえ、あの!」

「あ、こ、こんにちは、清美さん」

「……はぁ!? 豊様!? 何で!?

 あっと、ヤバい、何の準備もしてない。

 え、えっと、貧乏臭いけどみたらし団子で良ければ」

「あ、ありがとう」


動揺しながらも、清美は何故か帝に団子を渡した。

少し焦ってる様子を見せている。

帝も少し焦りながら、そのみたらし団子を受け取る。

そして、少し考えた後団子を口にして笑った。

好物を渡された事で食べたくなったのだろう。


「やっぱり美味しいなぁ……みたらし団子……

 あ! ごめん清美さん、何のお話しもしなくて」

「えっと、こ、今回はどんな用件で?

 玄王に総一郎のアホまで来て、随分な大所帯ですけど」

「清美貴様、豊様の前で私をアホなどと」

「はぁ? 霊力使えないアホが偉そうに」

「ふん、剣技で俺に遙かに劣るくせに貴様は」

「あぁ? 剣技しか取り柄の無い脳筋と違って

 私には色々な技術ってのがあるんですがぁ?」

「言わせておけば」

「帝の前で喧嘩をするな! 貴様らは!」

「す、すみません、玄王様」

「はぁ、すみませんでした」


帝の前と言う事もあり、清美は珍しく引いた。

あまり帝を評価しているわけでは無いのだが

流石に仕えるべき相手に牙を向けることは無い。


「それで、今日はどんな用件ですか?

 河童の件なら、私が出現してすぐに始末してますので

 都には侵入してこないと思いますけど」

「君は河童が不自然に出現したらどうなるか知ってるだろう?」

「え? 何かあるんですか?」

「……君は本当に陰陽師の長としての自覚が無いね」

「な、そ、そんな重要な情報な訳!?」

「河童が不自然に出現した場合

 近場にある何処の村に河童の長が現われ

 同時に村が一つ滅ぶ。それ位知ってるだろう?」

「あー……そう言えば、そんな話を聞いた気がぁ」


確かに何処かで聞いたり考えた気もしたが

幸子や桐絵の訓練に集中していたためか

彼女の頭の中からはすっぽりと抜けていた。

あまり本気でやってない証拠と言えるかも知れない。

あるいは、本気で2人を鍛えてた証拠なのか。

だが、ほぼ全ての人間は前者と解釈するだろう。

それだけ、彼女の普段の行動が悪いのだ。


「やはりお前は馬鹿だな、清美。

 才能だけで来たからだ」

「あぁ!? あんたこそ才能だけでしょうが!」

「何を馬鹿な、私は鍛錬を怠ったことは無い!」

「はぁ!? それを言ったら私もだけど!?

 毎日毎日霊力すっからかんにしてますがー!?」

「喧嘩をするな!」

「ぬぐ!」

「あっぐ! な、殴るとか最低よ!」

「貴様らは長だ! くだらない喧嘩をするな!

 そもそも帝の前で喧嘩など愚か過ぎる!

 状況を考えないか馬鹿者共が!」

「も、申し訳ありません、玄王様……」

「こいつが挑発してきたのが悪いわ!」

「貴様が忘れているのが!」

「あの、け、喧嘩は止めて欲しくて!

 一緒に都を守る立場なんだから、喧嘩は!」

「あ、す、すみません」

「も、申し訳ありません」


流石に帝に直接言われてしまったことで

2人は大人しく喧嘩を止めた。


「ありがとうございます、豊様」

「い、いや、大丈夫だよ、うん。

 げ、玄王もあまり2人を叱らないで……」

「豊様がそう仰るなら、

 これ以上は言わないでおきましょう」


帝がかなり動揺をして居るが

彼の一声で2人の喧嘩は止まる。

あまり頼りない様な雰囲気を持っているが

彼が帝である事に変わりは無いのだから。


「そ、それじゃあ、あの、来た理由を話すね」

「は、はい」

「清美さんには河童の長を探して欲しいの。

 河童の長は妖力を隠すのが凄く上手らしくて

 鈴亭さんの能力でも見つけ出すのが困難なんだ」

「崎神族も大した事無いですねぇ」

「あやかし達は私達を護ってくれてるんだ。

 そんな風に相手を貶すことは言わない」

「あ、はい……」


普段はおどおどしている帝ではあるが

こう言う所には非常にしっかりと反応してくる。

あまりあやかしが好きじゃ無い彼女には良い気分では無いが

帝相手に変な事を言う訳にはいかない為、大人しく引いた。


「じゃあ、続きを話すよ。どうやったら見抜けるかだけど

 妖怪は一部を除いて霊力を持たない。

 これを利用して見付けようって事になったんだ。

 でも、微弱な霊力にも気付ける人間は少ない。

 だけど、清美さんなら気付けるでしょ?」

「そ、そうですね。私達、安野柄家の人間なら

 基本的に微弱な霊力にも気付けますが」

「うん。そして、私も微弱な霊力に気付ける」

「そうなんですね」

「だから、清美さんには微弱な霊力を探知出来る

 そんな陰陽師達を集めて周囲の探索をお願いしたいんだ。

 勿論、清美さんにも探索をお願いしたいの」

「あー、でも、河童の長ですよね?

 私以外じゃ殺されますよ? 私のお父様お母様も

 そんなに強くないですし

 長には勝てない思うんですが?」


安野柄清流の再来と謳われるほどの実力を誇る清美は

まさに他の陰陽師達とは隔絶した強さがあった。

並の陰陽師であれば、1種族の長にはとても勝てないが

彼女の場合は例外。だが、それ故に彼女は誰も信じない。


「うん。そこは清美さんの判断でお願いしたいんだ。

 私は2人を護衛にして、私達で探すつもりで」

「な!? 豊様が自分で!? あ、危ないですよ!?

 仮にもあなた帝ですよ!? あなたに何かあったら

 都どうなると思ってるんですか!?」


さも当たり前の様に告げられた言葉に驚きを見せる。

帝に何かあれば、都の統治者が消えてしまう。

現状、唯一生き残ってる帝は豊だけなのだ。

彼に何かあれば、都の統治者が消えてしまい

一気に路頭に迷う危険性が出てくる。

それだけ、帝の存在は重要であり

そんな彼が命の危険に身を投じるのは異常なことだ。


「危険は承知だけど、私は私に出来る事をしたいんだ」

「……げ、玄王! あんた正気なの!?

 宝龍達は!? てか! 錫音の奴に任せれば良いじゃ!」

「錫音は今負傷してるんだ」

「はぁ? 最強とか言われてんのに怪我してんの?」

「甘露の襲撃を受けたんだ」

「はぁ? 誰だっけ、いや、そんなのは良いけど

 何で襲撃なんて受けてんのよ!」

「河童の問題に対処しようとした結果だ。

 その結果、運悪く甘露に遭遇してしまい

 心臓に大きな負傷をしてしまった」

「はぁ!? 心臓に負傷って、死ぬでしょ!?」


心臓を負傷すれば、普通の妖怪は命を落とす。

それ位は流石の清美だろうと理解はしてる。

人間なら当然即死。妖怪でも即死する負傷だ。


「並の妖怪なら。だが、彼女なら問題は無い。

 だが、この状態で下手に動いてしまうと危険だ。

 彼女に万が一があれば……いや、彼女ならば

 心臓を負傷した程度であれば

 河童の長だろうと屠れるかも知れないが

 九尾状態を使う事になる。それは避けたい」

「何でよ」

「九尾状態を使えば圧倒的な力を持つが

 最低でも1年は動け無くなってしまう。

 そうなれば、命を落とす子供達が増える」

「動け無くなっても傘下が居るんでしょ?」

「傘下は全員、錫音の補助に回るからね。

 それだけ、九尾状態の反動は大きいんだ。

 その間、彼女が東西南北の屋敷に配置してる

 式神達も活動を停止してしまうんだ。

 当然、連携は崩れ、子供達の救助に時間が掛かる。

 本宅のあやかし達も彼女の看病で手一杯になる。

 その為、可能なら彼女に無茶をしては欲しくないんだ」


弱点を知ることが出来たからなのか

清美は少しだけ機嫌が良さそうになる。

周囲が崇めている存在だろうともそんな程度。

やはり自分こそが最強なのだと感じる事が出来たからだ。


「錫音様にあまり無茶をさせるわけにはいかない。

 そもそも、都周囲の守護は貴様ら陰陽師達の仕事だ。

 それを錫音様に頼ろうなど」

「守護は」

「そもそもだ、本来は貴様の仕事であると言うのに

 貴様は仕事を放置し、豊様に心労を掛けた。

 更には貴様のせいで豊様が危険な事をする事になった。

 貴様が河童の危険性を忘れず、河童の不自然な発生に

 いち早く気付き、行動していればこんな事にはなってない」


「私が悪いって言うの!?」


「あぁそうだ! 貴様が素早く河童の長を探って

 いち早く解決していれば、

 錫音様も負傷してなかったかも知れない!

 貴様の対処が遅いから、錫音様が子供達の保護では無く

 河童の長を探ろうとした結果! 甘露に襲撃され

 負傷してしまったんだ! 悪いのは貴様だ!」


「言わせておけば! 私は私に出来る役目を果たしてた!

 そもそも! 鈴亭が河童の長を見抜ければそれで!」

「なら! 貴様が河童の長を何処に居ても即座に

 見抜ける術があればよかったな!」

「そんな能力無いわよ! 無いものねだりよ!」

「それは貴様も同じだろうが!

 鈴亭様にも出来ない事は当然ある!

 万能な能力であれば、誰も犠牲は出ないだろう!?

 だが、鈴亭様の能力が届かない場所を

 宝龍様達や錫音様達が協力して補助し

 人々を守っていた!

 貴様が文句を垂れることではない!


 そして! 都周囲の守護というのは本来!

 お前達陰陽師達が行なうべき仕事だ!

 それは、宝龍様達と貴様らの先祖が話し合い

 引き継いできた役目である筈だ!

 だが! お前はサボった! その結果がこれだ!

 文句を垂れるな! この愚か者が!」

「言わせておけば!」


激しい口論の末、お互いがお互いに殺意を見せ

2人が同時に自分の刀に手を伸ばそうとした瞬間。


「やめろー!」

「う!」

「うぅ!」


おどおどしていた筈の帝が大きな声を張り上げ

2人を静止させる。


「喧嘩をしない! 今は危機的状況なんだ!

 仲間同士でそうやって喧嘩しても進めない!

 こうなったのは確かに清美さんに非があった!


 それはそうかも知れない! でも! ここで喧嘩して!

 まだ救えるかも知れない人達を殺すつもり!?

 誰が悪いとかは後で良いんだよ! 後で!

 今は被害を出さないことを優先する! 分かった!?」

「わ……分かりました」

「は、はい……」


普段の帝とは全く違う雰囲気を感じた2人は萎縮し

そのまま大人しく、帝の言葉に従う事にした。

2人を怒鳴ろうとしていた玄王も

2人に対してハッキリと物を言う帝を見て

ここで何かを言うべきで無いと判断し、身を引いた。


「じゃあ、お願いね、清美さん」

「はい、わ、分かりました」


清美は自分が帝に気圧された事に驚きを見せるも

反発をする事は無く、彼の指示に従う事にした。

被害を出さないために行動する。

今更遅いかも知れないが、

少しは陰陽師らしく頑張ろうと。

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