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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第2章、都の騒動
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河童の不安

都の周囲で河童が発生している。

その報告を聞いた帝は少しだけ焦りを見せた。

色々な報告を受けている立場である為か

この状況が危険なのを知って居るからだ。


「河童……河童が都の周囲に発生なんて」


河童が不自然に発生すると、

近くの村に長が現れると同時に

村が一つ壊滅してしまう。


この長が何処に居るかを見抜くことは

現状、あやかし達の中で最も索敵能力に秀でる

鈴亭の力を持ってしても分からない。

もしかしたら、都内に居るかも知れないと言う不安。

臆病な性格である帝は嫌な想像を繰り返し

どうしようかと頭を悩ませていた。


「うーん、うーん……陰陽師に索敵を命令して。

 で、でも、陰陽師は今、あまり動いてくれる状況じゃ。

 き、清美さんは私の命令に従ってくれないし……」

「豊様、だ、大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫じゃ無い……お腹が痛い

 うぅ、私は日の国の帝なのに、こんなんじゃ。

 どうしよう……どうしよう」

「豊様! お客人です!」

「お客!? こんな時に!? 誰?」

「はい、宝龍様が」

「宝龍さんが来たの!? い、急いで通して!」

「はい!」


宝龍は彼にとってかなり大事な存在であった。

親を失ってしまった彼にとって

自分に積極的に助言をしてくれたり

協力をしてくれる崎神族は親のような存在だ。

更には宝龍が動いてくれるときは基本的には

錫音も動いてくれる。錫音は彼にしても

自分が困ったときにいつも助けてくれる相手。

いつも彼は錫音を敬愛していた。


「唐突の訪問、失礼します」

「そ、そんな事は無いよ、宝龍。いつもありがとう。

 その、きょ、今日来てくれたって事は……

 えっと、河童のことだよね? 協力してくれるとか」

「そう……ですね、河童の事である事に違いはありません。

 しかし違うのは……あまり、良い報告では無いという事」

「え!?」

「実は錫音が負傷してしまったのです」

「え!? 錫音様が!? 大丈夫なのかい!?」

「えぇ、命に別状はありません。並の妖怪であれば

 命を落とす怪我ではありますが

 彼女であれば、死ぬ事は無いかと」

「そ、そんなに重傷なの!? ど、どうしてそんな!」

「彼女の妹が襲撃を仕掛けてきたのが理由だそうです。

 どうも、彼女に歪んだ愛情を向けてる妹が居るそうで

 その妹が彼女に深い傷を負わしたとか」

「な……」


帝は動揺した。ただでさえ河童の事で頭が一杯なのに

更に敬愛する錫音がかなりの負傷をしたのだと知り

一気に腹痛が彼を襲う。


「お、お腹が」

「大丈夫ですか!? 豊様!」

「だ、大丈夫。いつもの事だよ……

 責任が重すぎて、僕にはまだ辛いんだけど……

 あ、ごめん、つい口が滑った。わ、私だ、うん」


あまりの動揺に、つい油断した一人称が漏れてしまう。

彼からすれば、この状況は非常に辛いだろう。

河童の出現と言う事で、都内に河童の長が

不意に出現する危険性があるというのに

こう言う場面で頼りになる錫音は動け無い。

宝龍達が協力してくれるであろう事は分かるが

彼女達の今の主な仕事は妖狐達の監視。

この河童騒動には、あまり戦力を割けないだろうと分かる。

となると、この問題は自分達人類側で解決しなくてはならない。

それが、ほぼ確定したと言えるのだから。


「申し訳ありません。流石に報告をした方が良いと思って」

「う、うん、そうだよね。大事な事だし。

 後、その、い、一応聞こうかと思うんだけど。

 えっと、か、河童の長、見付かったりは……」

「申し訳ありません。まだ、鈴亭も河童の長、発見に至らず」

「だ、だよね……見付かるなら、とっくに解決出来てるもんね」


あまりに危険な河童の長を放置するはずも無い。

索敵して、見付ける事が出来るのであれば

既にあやかし達は河童の長を排除できているはずだ。

だが、今の時代まで河童の長は人類に害を与えてる。

それなのに今更分かる筈も無いだろう。


「じゃ、じゃあ……その、どうすれば見付かるとか

 そう言う、糸口みたいなのって、ある?」

「……そうですね、錫音や私達の推測ですが

 恐らく河童の長は妖力を完璧に抑えられている。

 だから、鈴亭でも発見できないのです。

 ならば霊力を探知出来ない対象を探せば

 それが河童の長だと見抜けるかと」

「霊力を探知出来ない対象?」

「はい、人間は多かれ少なかれ

 必ず霊力を持って生まれます。

 その為、霊力を持たない人間は居ない。

 ですが、我々、錫音、甘露を除けば

 妖怪は霊力を持っては居ません」

「じゃあ、霊力がない人間は妖怪と?」

「はい、しかし微弱な霊力を探知出来るのは

 高い実力を持つ陰陽師か妖力を持つ妖怪のみ」

「そうなのかい? 僕は霊力に気付けるんだけど」

「左様ですか!?」

「う、うん……」


あまり大きな力を持っていないはずの帝ではあるが

彼らは霊力を探知出来る特別な性質があった。

これは、帝が神に近い存在だと人々から信仰されてる為だ。

神は人々を導き、守護する存在である。

その為、人間を探知する能力に優れている。

だが、これは世間には知られては居ない。


何故ならば、

この世界に顕現できるほどの信仰がある神は

殆ど存在しない為である。

歴代帝の優れた統治能力と

錫音やあやかしという守護者が居る事による

弊害とも言えるかも知れない。


「でも、その話が本当なら河童の長を見付けられるのは

 現状だと清美さんと僕だけって事か……よ、よし

 こうなったら覚悟を決めないと」

「な、何をなされるおつもりで?」

「清美さんを説得して、私も河童の長を探す」

「な! それは危険です!」

「だ、大丈夫だよ、今代の御剣部隊には

 とびっきりの天才が居るんだ」

「しかし危険です」

「大丈夫だよ、ま、任せて!」


このままだと人々に被害が出てしまう。

それを理解している帝はこの行動を躊躇わなかった。

自分はこの国の長。人々を救うことが出来るならば

自分は積極的に動くべきだと彼は考えていた。

その為、彼は自分の正義に疑問は抱かない。

まだ未熟であるが故に、彼は真っ直ぐなのだ。

解決の糸口があるのならば、彼は躊躇わない。

これが彼の強さとも言えるかも知れない。


そして、宝龍も彼の本気を感じていた。

同時にこのまま無理矢理止めてしまえば

彼の為にならないと言う事も感じている。

歴代の帝達は、基本的に臆病な性格が多い。

だが、何かの切っ掛けがあれば成長する事が多い事を

世代を超えて帝に付き従って居た彼女は理解していた。


「……分かりました、豊様。

 しかし、あなたとその天才のみでは危険です。

 なので、玄王も一緒に行動させて貰えませんか?」

「え!? で、でも、玄王が来たらあやかしの国が」

「大丈夫です。あやかしの国には私を含む

 崎神族が他に4名。更に力あるあやかし達もおります。

 なので、玄王も共に。彼の結界術があれば

 必ずあなたを守ってくれるでしょう」

「う、うーん、わ、分かったよ」

「ありがとうございます。では、少々お待ちを」

「うん。ありがとうね、宝龍」


その言葉の後、宝龍の姿が一瞬で消えた。

見慣れているため、あまり驚きはしないが

自分もあんな風に移動したいと帝は感じる。


「よし……いちさん、総一郎そういちろうさんを呼んで」

「しかし豊様……ほ、本当に行くつもりですか?

 もしかしたら、河童の長が出てくるかも知れません。

 それは、非常に危険で」

「でも、私にしか出来ない事だ……む、村が滅んだり

 都で沢山の死人を出す訳にはいかない。

 そ、それに、玄王さんと総一郎さんが居れば大丈夫だよ」

「……わ、分かりました」


心配だと感じながらも、女中は帝の指示に従い

すぐに御剣部隊、最強の剣士、

鮫島さめじま 総一郎そういちろうの元へ向った。


「ぜ、絶対に……被害は出させない」


少し震えながらも、帝は決意を新たに窓の外を見た。

自分に出来る事を全力で熟してみせる。

それが、死んでしまった両親への親孝行だと確信して。

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