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守護狐の千年物語  作者: オリオン
第1章、妖狐錫音のとある1日
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挑戦者

鷹枝の受けた襲撃は自分へ対する挑戦状。

それを察知した錫音は鷹枝が襲撃された場所へ

アキエと栗牧を連れてやって来た。

鷹枝も同じ様に来ているが、この4人だけだ。


「あの、ご主人様。どうして私も?」

「アキエにとって、良い経験になると思ったからね」


そんな会話の後、強い風が周囲に吹く。

木の葉が舞い上がり、小さな渦が出来上がった。


「おやおや、派手な登場ですねぇ」


そして、一気に風が渦から噴き出し、木の葉が飛ぶ。


「おぉ!」


鷹枝と栗牧はその木の葉により、頬から血を流す。

だが、アキエと錫音は木の葉を全て避けており

体の何処からも血は吹き出すことは無かった。


「お忙しい中、申し訳無い。錫音殿

 私は天狗組織、山の影の長、黒野天狗くろのてんぐ

 以後、お見知りおきを」


木の葉の中から、男性が姿を見せた。

山伏の格好。錫音はその服装に見覚えがある。

白カラスのあやかし、羽美はねみと似たような格好。


髪の毛の色はその名の通り、真っ黒い漆黒と言える。

瞳はまさに漆黒と言えるほどに黒い。

大きく開かれた翼も黒い。


「男性……」


男であると言う事を確認した錫音と栗牧は

驚きの表情を浮かべた。

力ある悪鬼は、基本的には女性の姿を取る。

長い時を生きて、色々な悪鬼を見てきた2人は

その事を、当然知って居た。


無論、大体の悪鬼は異形の格好をしている。

しかし、一定の力を付ければ、人の姿へ変化する。

それは、悪鬼達は強き生き物に姿を変えていく為だ。

旧亭時代からそれは変わってないことを二人は知ってる。


「男性の姿を持った、力ある悪鬼。

 あなたはまさか、三大悪鬼が生きてた時代よりも」

朱婷童子しゅていどうしと同じ位ですかね」

「な……」


朱婷童子。三大悪鬼の1人である。

三大悪鬼とは、過去に存在した大妖怪の総称。

錫音達、妖狐族のルーツである珠尾の前。

北の島を死の島へと変貌させた破滅姫。

その2人は明確な被害を出して居る。

だが、朱婷童子はただその強さから三大悪鬼と評された。

現代まで生きている三大悪鬼、唯一の生き残り。、


そして、悪鬼の殆どが女性の姿をしているのは

この三大悪鬼の影響であった。

玉緒の前、破滅姫、朱婷童子。

彼女達は皆、女性である。それ故に、悪鬼からすれば

女性というのは強さの象徴に等しいのである。

それもあり、力ある悪鬼の殆どは女性の姿を取る。


「つまりは、珠尾の前よりも古い悪鬼。

 何で、そんな古い悪鬼が今更」

「そもそもですね、そんなに古い悪鬼にしては

 妖力少なくないですか?」

「我々天狗は、人間の霊力を殆ど奪いませんからね。

 精々、妻や夫とした人間からいただくだけです」

「人間と夫婦になってるの?」

「えぇ、私は最近まで独り身でしたが」


その言葉を聞き、錫音はとある事を思いだした。

それは、陰陽師達の組織にある特殊な部隊。

白爪部隊しろつめぶたい半妖のみで構成された

非常に独特な組織である。

自身と少し近く、霊力と妖力の両方を持つ。

だが、自身と違うのは彼ら彼女らは

人間と妖怪の混血であると言う事だ。


アキエ達の様な、ペットから変化したあやかしと

人間の混血も多いが、確かに中には天狗の混血も居た。

数はあまり多くは無いが、鬼や河童等の混血よりは多い。


「さて、私の話はこの際良いでしょう。

 錫音様も理解されてるでしょうが

 私が、あなたの部下を攻撃した理由。

 それは、あなたに挑みたいが為です」

「分かってる。でも、この子を狙う事は無かったでしょ?

 私と戦いたいと言うなら、屋敷に声を掛ければ良い」

「それでは、あなたと戦うまでの時間が延びてしまう。

 私はすぐに、あなたと戦いたかった。

 しかし……驚きましたよ。妹君まで一緒とはね」


恐らく、アキエや鷹枝を連れてくる事までは予想してたのだろう。

アキエは錫音派閥、最強のあやかしだというのは知られている。

だが、まさか栗牧という、

相容れないはずの妹と共にこの場に来る事までは

彼も予想出来なかった。


「別に栗牧はあなたと戦うつもりはありませんよ?

 流石に栗牧ではあなたには勝てないでしょうし?

 そもそも、今回はただの見学ですし?

 でも、しばらくは錫音お姉様と共に居る予定です。

 しばらくは九つの珠尾に誘いますし」

「……九つの珠尾。鬼の宴にも勝らずとも劣らない組織」

「錫音お姉様が参加してくだされば、朱婷童子も狩れますが

 流石に錫音お姉様が居ないとなると苦労するでしょうしね」

「倒せないと思うけど? 私でもあの人は」

「錫音お姉様と萩花しゅうかお姉様が共闘すればいけるでしょ?」

「過大評価しすぎだよ」


三大悪鬼唯一の生き残りである朱婷童子はまさしく最強の悪鬼だ。

錫音は過去、朱婷童子に敗北した過去がある。

その強さは筋金入りである。唯一の救いと言えば

彼女はあまり人間に被害を加えないという所だ。

とは言え、人を喰らう事もある悪鬼である為

錫音も彼女をどうにかしたいという気持ちが強い。

しかしながら、未だに勝ち筋すら見えない程だ。


「人間に興味を抱く我々としては、

 あなた達が人間を殺さないという現状はありがたい。

 理由も錫音様でしょうし、実に感謝しております。

 しかし、これとそれとは話は別ですかね」


そういって、黒野天狗はゆっくりと刀を引き抜いた。

一目見ただけでその刀は業物だと分かる。

秋時雨以上の名刀。それは、栗牧にも分かった。


「錫音お姉様が贈ったという、秋時雨。

 それよりも位が上なのでは?」

「うん。間違いない。そして、あの刀。

 霊具神姫の技術で打たれた刀だ」

「私の妻が打ってくれた刀です。

 霊具神姫を志すも、1度折れてしまった妻ですが

 私の為に、自身の全技術を持って打ってくれた名刀。

 名は、天吹雪あまふぶき。これを妻から貰い

 挑みたくなったのです。我の千年以上の鍛錬と

 我が妻が全力を持って私に授けてくれた天吹雪が

 どこまで、あなたに届いているのかを」

「……そう」


彼の動きに呼応し、錫音は花吹雪を引き抜く。

彼女が花吹雪を引き抜くと同時に栗牧は目を奪われる。


「……やはり、美しい刀ですね。宝石のようだ」


錫音に刃を向けられたときはあまりの動揺に気付けなかったが

今、冷静にその刀身を見れば、その美しさに目を奪われる。

栗牧は頬を僅かに赤く染め、その刀身に見惚れていた。


それは、アキエと鷹枝も同じだった。

それ程にまで美しい刀身。まさに、人類の宝に等しい。


殆どの人の姿をした悪鬼達は彼女が抜刀すれば

その美しさに目を奪われる。だが、黒野天狗は違った。

彼は錫音の持つ花時雨を見ても、表情を変えない。


「ふふ、私の天吹雪の方が美しいですね」

「いや、私の花時雨の方が美しいね。それは譲れない」


お互いにとって、絶対に退けない部分である。

今、錫音が携えている刀が、自らが打った秋時雨ならば

錫音は当然、相手の方が美しいと答えただろう。

だが今、錫音が持つ刀は花時雨。

自らの為に由紀恵が必死に打ってくれた刀なのだから。


「あなたはその花時雨ともう一振りの刀。

 どちらが美しいと思いますか?」

「どっちもだよ。優劣は無い」

「ふふ、そうですか。では何故、一振りだけで?」

「あなたのお嫁さんは霊具神姫に憧れたんでしょ?

 なら、霊具神姫の始祖である、由紀恵ちゃんが打った

 この刀と戦いたいはずだと思ったから」

「……なる程、感謝します。錫音様」

「黒野天狗。この勝負、

 私が勝ったらあなた達の里に案内して貰うよ」

「ならば、私が勝ったら、

 決して山の影を詮索しないで頂けますか?」

「分かった。約束だよ?」

「えぇ」

「皆は手を出さないでね。これは、私と黒野天狗の戦いだから」

「は、はい……」


アキエ達は怯えの表情を見せる。それは栗牧も同じだった。

普段の飄々とした態度が完全に消え、怯えの表情が見える。

これから起る戦いは、彼女とは別次元の戦いなのだから。

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