【プロローグ】無限に広がる世界
この世界は、幾千の歴史と可能性が折り重なって出来ている。だが我々は、自らが生きる“正史”の世界しか知らずにいた。
そんな時代は、もう古いと言える。
研究都市の東部、セクション・Δに設置された多元世界接続ゲートが数十年ぶりに再稼働、接続可能世界を過去・未来、そして並行世界に限定し調査を開始した。それを皮切りに、人類長年の夢であった時間旅行の技術開発が急進的に進められた。宇宙旅行よりも難しいとされていた時間旅行はあっという間に実現し、その技術は瞬く間に世界中に広まったのだ。
しかし足を踏み入れられる世界が広がったことで懸念されるのが、時間・時空を超えた犯罪だ。法整備が未だ進んでいない現状で、歴史改変を目論むテロリストや犯罪者による時空間逃亡が横行していた。そこで政府は、時間・時空を超えて歴史を守る新たな公的機関を立ち上げた。それが時空監理局だ。研究都市に本部を置き、世界各地に支部が展開され全ての世界線の変化に日々目を光らせている。そんな時空監理局の中でも、実地に赴き時空犯罪者を確保・取り締まりを行うのが並行世界特務捜査課(P.S.I.D.)―――所謂“時空警察”だ。
これは、無限に広がる世界の歴史を守るために戦う時空警察の物語である。