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【一輪車】

久しぶりの番外編です(笑)


一輪車の話を載せていなかったので、掲載いたします。


庭師のダウントさん、リューリくんからすると歳の離れたお兄さんみたいでたまに遊んでくれてます。本編には出てきてませんが……。


アリアはダウントさんに完璧に餌付けされて懐いてます。だってアリアが寄りかかってもビクともしないし、細マッチョボディで好みの体型らしくて(笑)


おっと、ではでは、リクエストも受けつけておりますので、感想がわりにでもいいですし、本編への感想、★評価、いいねも受け付けておりますので、番外編も合わせてお楽しみ下さい!

それは、まだリューリがフェアリアルキャットと出会い、従魔契約してアリアと名付け、そして、後に共に異世界転生・転移と分かり過ごして行く前の事。


その日、リューリは庭を母・イリスと散歩しながら魔法について聞いていた。


『魔法』リューリが前世で一人の青年として生きていた世界ではファンタジーの代名詞の一つであり、漫画、アニメ、小説、ゲーム等でしか知る事の無いものが、この世界では呼吸と同じように当たり前にあった。



「いい?魔法は確かに私達にとっては当たり前に扱えるわ。でもね?それに頼り過ぎてはダメよ?大切なのは、身体を鍛える事、知識を身に付ける事。時に魔法よりそれらが私達の助けになるわ。そして、一番大切なのは、人を思いやり助け合う事。忘れないでね?」


「うん!今の僕たちが居るのは、皆のおかげだもんね!困ってる人が居たら助ける!」


「そう!その気持ちを大切にするのよ」



なんとも微笑ましく優しい光景にその場に居合わせた使用人達は皆、和みつつ優しい主人家族に仕える自分のなんと恵まれた事かと各自内心で喜んでいた。


そんな中、庭師が散歩をする二人の前を歩いていた。重そうな道具を麻袋に入れ右肩に、左脇に肥料を持っていたのだ。



「……あら、ダウント。今日も精が出るわね。怪我には気をつけるのよ」


「………はい」


「ダウントさん。こんにちは!」


「………どうも」



庭師・ダウント。寡黙であまり話さないが、ライヘン家で彼以上に庭の花木、野菜等に詳しく世話が出来る者は居らず、細身ながらもしっかりと鍛えられている身体は冒険者と見られてもおかしくはない程に。


しかし、彼の性格は花木や野菜、小動物が好きで争いは好まず、後にやってくるアリアに何かと世話をして、餌付けする姿が度々、目撃される事になる。



「いっぱいな荷物だね。台車とかないの?」


「………台車?見た事ないです」


「マジかよ……」



聞けば、いつもこれくらいの荷物は通常で収穫や草むしりの時は籠を背負うぐらいだという。台車が無ければ、一輪車どころかリヤカーなど持っと無いだろうと想像がつく。そのことにリューリは驚きとショックを受けて呟いてしまった。



「いつも大変なのにありがとうございます!」


「いえ……」


「えっとね、今閃いたんだけど、後でお手伝いお願い出来ますか?」


「自分がですか?……分かりました」



ダウントは膝を折ってリューリと目線を合わせて話を聞く姿勢になった。まだ、子供のリューリからすれば、ダウントは大きく話がしにくかったので、リューリのダウントに対する印象を優しい人と位置付けるには充分かもしれない。



「リューリ、何を閃いたのか教えて?」


「うーん……。ダウントさん、手で運ぶには大変だからそれを少しでも纏めて運べて狭い所でも入れる台車みたいな物かな?」


「ダウントの為に?」


「うん!……だって、庭の仕事の他にいっつも力仕事をしてくれるんだもん!少しでもお礼したい!」


「まぁ!ふふっ……良かったわね、ダウント。妬けちゃうわ」


「あ………いや、あの……自分なんかの為に申し訳ないです。………その、ありがとう……ございます」



リューリの話にイリスは嬉しかった。優しい子にいつの間にか育っているのに、喜びつつもイタズラにダウントをからかう。ダウントはしどろもどろに恐れ多いと断わろうとするが、リューリの自分を慕っている目と優しい笑みを浮かべるイリスに断れず、頭を下げた。


そんな事があった次の日、リューリの姿は鍛冶屋にあった。


「ごめんくださーい!」


「なんじゃぁ?リューリ坊じゃねぇか。どうした」


「あ!親方!あの、作って欲しい物があるんだ!」


「おいおい、此処は子供の遊び場じゃねぇんだぞ?」


「知ってるさ!でも、鉄の扱いなら親方以上の腕の立つ職人さんは知らないからさ!」


「ガハハハっ!よくわかってんじゃねぇか!よし!何を作って欲しいんだ?」



気を良くした鍛冶屋の親方はその筋骨隆々の身体を大きく揺らしながら豪快に笑った。


そして、リューリはさっそくとばかりに家出書いてきた出来上がり図を見せた。それは、リューリの前世の工事現場や畑仕事にと見かけた一輪車だった。ただ、リューリの記憶頼りなので、何となく違う気がするのは、仕方の無いことではあるが。



「なんじゃこりゃ?見た事ないもんじゃのぉ」


「あーえと、道具や荷物を運べる物で、一輪車って名前の物を作ろうと思うんだ。人一人の幅ぐらいの狭い所なら畑でも、ちょっとしたでこぼこ道でも走れるように丈夫にしたいんだ」


「……ふむ、この物を置く箱のような部分は鉄をなるべく薄くしないとな……。うぅむ、骨組みも難しいが他の職人を巻き込んでやってみるわい!腕がなりよる!」



そうして、始まった一輪車作り。幾ら職人とはいえ作った事の無い品物にあーだこーだと話し合いと試作品が出来たのはそれから一週間後。


鍛冶屋の親方の元にリューリが弟子から知らせを受けてダウントを連れて様子を見に行った時、見せられたのは、ほぼ前世の記憶にある一輪車。


ダウントは子供との約束。あまり期待しては可哀想だと思っていたので、気にして無かったがリューリと共に見せられた一輪車に驚かされた。



「す、すごいよ!親方!僕の拙い説明で良く形に出来たね!タイヤの部分に巻かれてるのは………もしかして、魔物の皮?!」


「………これが、台車という物ですか?」


「ガハハハっ!リューリ坊、よく気付いた!多少のでこぼこ道ならこの皮が衝撃吸収して走れるってもんよ!いや、実にわかりやすい説明だったぞ!……そこの若いの!台車って代物は知らねぇが、これはリューリ坊が考えた『一輪車』ってもんだ!」


「ダウント!動かしてみて!これが、僕からダウントへのお礼だよ!」


「は、はい……」



リューリに急かされるままダウンは一輪車の持ち手を掴み持ち上げた。驚く程に軽く推し進めて曲がってみても、自分の意のままに軽快に動く。ダウントはその軽さと運びやすさにリューリの約束をあまり期待していなかった自分を恥じた。



「ど、どうかな?」


「どうじゃ?」



リューリと親方や他の職人達も固唾を呑んでその様子を見守った。



「リューリ坊ちゃん、親方さんや皆さん、ありがとうございます」



そっとリューリの前に片膝を着いて頭を下げながら礼を言うダウントの姿はさながら騎士が主君に挨拶をする姿のようで、服装と場所、リューリが姫君なら………と絵になるようだった。



「このダウント、一生の宝でございます」


「いやいや、そんな事言わないで?!しかも、なんか、恥ずかしいんだけど?!一輪車だよ?!使わないと意味無いものだからね?!」


「………そんな事ありません。私のようなたかが庭師にそのお心を砕かれ職人の皆さんと共に作り上げた一輪車。私の一生の宝といって過言ではありません」


「いつも物静かなダウントがすっごい喋ってる!けど、物が一輪車!しかも、その姿勢は騎士っぽくて様になってるのが惜しい!」


「ガハハハっ!良いじゃねぇか!それだけ嬉しいって事だ!こっちもいい仕事出来て満足だしな!」



中々のカオスである。方や心底嬉しそうな庭師。方や鍛冶屋の親方。リューリは嬉しいやら恥ずかしいやらで誤魔化すようにダウントを立たせた。



「親方、本当にありがとう!ちゃんとお金払うね!ダウント、せっかくだし一輪車をそのまま押して帰ろう!」


「おう!また、何かあればいつでも来な!」


「……はい」



後日、ダウントが道具等を乗せてどことなく嬉しそうに庭を手入れする姿がライヘン家で見られ、街に一輪車で行けば、あの荷車はなんだ?と問いだたされる事になった。


そして、商標登録される運びになって売りにだされると親方さん達がてんやわんやの大忙しになるとは、その時は誰にも予想出来なかった。


それを聞いたリューリは荷車ならリヤカーの方がいいんじゃないか?と考えまた無茶ぶりを鍛冶屋に持っていくという流れもその後の出来事だった。


読んで下さった方々、ありがとうございます!


稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)

一輪車………本編には出て来なかった話を載せました(笑)


感想、ご意見、誤字脱字報告など受け付けております。


本編共々、今後ともよろしくお願いいたします。

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