【昔話】
PV記念ではありませんが、番外編になります!
若かりし頃のゼルバさんと本編には出てこない侯爵様の仲の良さと悪巧み?になります。リューリ君の苦労性リカルドパパからかな?(笑)
それは、若かりし頃のゼルバ・ライヘンとデリーム・レンジ侯爵の酒の席から始まった。
先の大戦の時、九死に一生を得たデリームとその恩人となったゼルバは気が合うのかそれ以来、度々酒を酌み交わす仲にまでになった。
「なぁ、デリームよ。儂はそろそろ騎士爵を返上しようかと思っておる」
酒は入っているが、少しばかり酔うのは早く、勿体ぶってゼルバは話を切り出した。
「急にどうした。お前は私の恩人。それ相応の礼をしたいと陛下に賜ったものだぞ?それを返上したいとは一体何があった?」
久しぶりに飲む友人との酒の席での話にデリームは眉を寄せた。何処か身体でも悪いのか?しかし、酒を普通に飲んでるし、まさか。と色々と勘ぐってしまう。
「おいおい、何考えておるのか知らんが、別に何処か悪くなってとかではないからの?……簡単にいえば、元はただの一介の冒険者じゃ。やっぱり貴族の水は合わん」
「しかしな……。一度賜った爵位を返すのはなぁ……」
「だが、騎士爵は一代限り。儂で終わりのはずじゃ。そう難しい問題でも無かろう?」
「普通ならばな?だが、私がお前に分けた領地は魔素の森に面している。その先は隣国だ。元Sランク冒険者ゼルバ・ライヘンが目を光らせているから隣国の者はそう易々と攻め入る隙が無いのだ」
ゼルバの言葉にあれからもうお互いいい歳だ。そう考えさせられる程に共に過ごしてきた月日は以外に長い。
しかし、国王陛下の手前返上するのは申し訳がたたないのも事実。酒を一口飲みどうしたものかと悩むデリームにゼルバは世襲制ではないから仕方ないのう!と何時ものように快活に笑った。
「それだ!」
「ぬぉっ?!な、なんじゃ?いきなり」
デリームはゼルバの言葉に閃いた!とばかりにニヤリと笑った。ゼルバはその様子に驚き訝しげに友人を見るが、デリームは応える事無く一人ブツブツと呟きながら思考を巡らした。こうなってしまっては、放って置くしかない。なんせ、答えが出るまでその思考は戻っては来ないのだ。
「ゼルバよ。お前の息子は今ランクは幾つだ?」
「リカルドか?彼奴は確かSになったのぉ。まったく、時間がかかったものじゃ。だが、それがどうした?」
「ほぅ!Sになったのか!ならば祝いをしなくてはならないな!」
「よせよせ!彼奴はランクより旅ばっかりしとるからのぉ!子供もそろそろ生まれるというのにフラフラしよって」
「なぬ?!子供が生まれるのか!」
思考の海から戻ってきたと思えば、今度は息子のリカルドの事を聞いてくる。一体それがなんだ?と思うが、次のデリームの言葉に驚いた。
「ならば、世襲として息子のリカルド君に継がせてしまえ!」
「はぁ?!なにを言っておる!騎士爵は一代限りではないのか?!」
「ふっふっふっ……領地とリカルド君の冒険者ランクがあれば問題ない!むしろ、安泰だ!」
「こ、国王陛下にはどうするのじゃ!」
「案ずるな!私から進言してリカルド君に跡目を継げるよう手筈は整える」
「ならばよいがリカルドがなんというか……」
「そこはお前が説得しろ」
名案とばかりにさっそくその案を形にすべく紙に書きなぐる。一通り書くと今度こそゆっくり二人は酒を飲み明かした。
後日、ライヘン家へと帰ってきたリカルドは父ゼルバの引退宣言という名ののんびりしたいと聞き、揉めた。それはそうだ。歳は歳だが未だに魔素の森の魔物に一切遅れを取らないのに、いきなり過ぎる。
最終的には母シェリンダにいい加減、ゆっくりしたいと言われるわ、生まれてくる子供を盾にされるわと散々な目に合うと、父の説得の為に訪れたレンジ侯爵からは、国王陛下からの勅命でゼルバの騎士爵をリカルドに継がせる。との事。
「準備がよすぎるっ!!」
「あらー……さすが、お義父さん。周りを巻き込んで見事な手順だわぁ……」
息子夫婦はなんかもう色々と諦めた。こちらがいくら騒いでも国王陛下からの勅命がある以上、跡を継ぐしかない。まぁ、子供が生まれるのでライヘン家でゆっくりしていたイリスさえこの騒ぎは蚊帳の外だったので、どうしようもない。
「ふむふむ……これで、魔素の森を心配する事はないな。ふはははっ!」
一番安心したのは何を隠そうレンジ侯爵その人だ。なんせ魔素の森を相手にするには自領の兵士だけではどうも難しい。しかし、あのライヘン家に任せとけば、安心していられるというもの。
デリームは自身の邸宅の執務室の窓から空を眺める。
「それにしても……孫ズルい」
なんだかんだと友の為に手は回したが、しょんぼりとそう呟いたのだった。
読んで下さった方々、ありがとうございます!
稚拙な文章で読みにくかったり、誤字脱字があったりすると思いますが、温かーく、優しーく見守ってくださいませ(笑)
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