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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
五章
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演習終了

 本演習最後のアテナ神様の試練。この試練を乗り越えられるか否かでクレアの残留が決まる。

 加護印を持たないクレアにとっては非常に険しい試練となり、幾度となく失敗を繰り返す長丁場となった。そんな試練だったが……


『おお!』


 夕食を食べながら俺の昔話を聞いた直後の挑戦にて、クレアは遂に試練を突破した。


『おめでとうございます!』

『おめでとう!』


 クレアにとっては長い長いトンネル。そこをクレアは遂に通り抜けた。ゴール側ではクレアの合格を祝福する花火と歓喜の声が上がり、全員が満面の笑みを零す。ある者は労う様に寄り添い、またある者は試練を乗り越えた功績を褒めたたえる。そして用意されていたクラッカーがはじけ飛び、ケーキやらプレゼントやらなんやらを送り、サライなんか歌っちゃったりして、エンディングまでの残り時間を感動の涙で綴る。


 勿論通路のこっち側に残された俺にはあっち側なんて全く見えないから、多分あっちはそんな感じ……って言うか! なんなんコレ⁉ あれで良いの⁉ アイツ最後めっちゃ無理っくりゴールしたんですけど⁉


 俺の昔話聞いて、なんか力が沸いた演出があって、加護印が発現して、ドラマティックにクリア。普通アニメとかならそんな感じだけど、クレアは俺の昔話聞いてクリアフラグ立って引くに引けなくなったのか、『瘴気を克服しなければ意味が無い』とか言っておいて、最後は無理しゃり強引に歩き切った。それも一回『あ、やっぱり無理だ』的に足を止めて戻る素振り見せたけど、なんか『もう面倒だからこのまま行っちゃえ』みたいな感じで戻る体力使ってあっちへ行ってしまった。

 それだけならまだしも、渡りきったらゴール側の扉閉まって俺だけ残されるし、向こうから聞こえる声がまるで花火大会で独りぼっちみたいな感じするし、一番やっちゃいけない事態発生する始末。

 もし! 俺がこの先アズ神様の聖刻貰って英雄になったら、この恨みは必ず晴らす! そう感じざるを得ないエンドだった。


「では、リーパー様“も”あちらへ」


 クレアの合格に喜ぶ試験官も、ここに来てやっと俺だけが一人こちらに残っているのを思い出したのか、今更ながらあっちへ行けと言う。


 “も”って何よ⁉ あんたらがこっち来いって言ったんだべ⁉


 まるで俺が自ら望んでこちら側に残ったみたいな言い方には、正直怒りを通り越して呆れた。そんでも今はクレアが試練をクリアしためでたいとき。彼らが一体何を考えて俺にこんな仕打ちをしたのかは知らないが、加護印を持つこの俺がここを穏便に済ますことで事なきを得た。


 向こう側に着くと、それなりにお祝いも終了していたようで、クレアの周りには三年一組の生徒が集まり、とり囲んでいた。


「あ、リーパー。来たんですね?」


 宴も終わって一段落ついていたようで、“あ、今頃来たんですか? もう終わりますよ?”みたいにリリアが言う。

 

 ずっといたよ!


「クレア合格しましたよ!」


 知ってるよ!


「これで私たち三年一組は全員が合格です! 誰も留年せずに済みましたね!」


 これそういう試験じゃないから! 


 リリアの中では、この演習は進級を掛けた試験だと思っていたようで、こいつ一人だけが意味も分からず参加しているようだった。


「とにかくリーパーも早くクレアに声を掛けてあげて下さい! きっとリーパーのアドバイスが役に立ったはずです! リーパーが声を掛ければクレアは喜びます!」


 リリアにとっては、昨晩からクレアと一緒にいた俺は家庭教師という感じなのだろう。散々分け分からん事言っておいて、早く行けと言う。


「分かってるよ。今声掛けに行くよ」

「そうですか! では!」


 ではじゃないから!


「あっ! ちょっと待ってくださいリーパー!」

「何だよ?」

「コレを」 


 そう言うとリリアは、ポケットから飴玉を出した。


「何だよこれ?」

「手ぶらでは申し訳ないでしょう?」

「いらねぇよ!」


 多分リリアは、クレアが合格したのに、先生が何も持たずにお祝いの席に向かうのは心苦しいのではないですか? という事を伝えたいらしい。だが今はいらん!


 驚くべき社交辞令を披露するリリアには、ある意味脱帽だった。だけど折角リリアが気を利かせたので、飴を奪い取ると口に入れ、リリアの悲痛な叫びも無視してクレアの元へと向かった。が、ここに来て運営は何を考えているのか、俺がまだ残っているのに閉会を宣言する。


「それでは皆様、夜も更けてまいりました。これにてアテナ神様の試練は終了いたします。最後に、法女様よりお言葉を頂戴いたします」


 確かに時間も時間。今から戻って飯食って風呂入ってYouTube見たらもう寝る時間。世界を救うために日々活動する俺たちにとってはとても重要。だがしかし、まるで俺がこれからクレアに一言掛けようというタイミングを狙った終了宣言は悪意すら感じるほどで、なんか今日の俺は、世界から嫌われているようだった。


 そんなことはさておき、この貴重な場面で、あの重要な法女様がお話になられるという事で会場は静まり返り、すでに飴玉王子とかした俺の存在など歯牙にもかける価値もないようで、粛々と進む。


「三年一組の皆様、無事演習を終えられましたことを大変嬉しく思います。そして、演習にご協力下さいました関係者には、深く御礼申し上げます。この度は誠にありがとうございました」


 この演習、この閉会宣言、ここへ至る俺への仕打ち。その全てにラクリマが関係していないのは分かっている。しかしだ。仮に今の言葉も言わされているとしても、エンディングに参加させてもらえなかった想いが、ラクリマを巨悪の根源に感じさせた。そう感じたのだが……


「…………」


 どうやらラクリマは何を言うのか忘れたようで、突然無言になった。そしてしばらく考えるとどうにもならなくなったのか、バイオレットさんにコソコソっと助けを求める。

 それを見て、ラクリマも俺と同じ被害者なのだと分かると、今回これを企画した責任者には降格処分が相応だと思った。


 それでも一応法女様。ラクリマだからこそこういうトラブルは慣れっこのようで、バイオレットさんから助言を貰うと、いつものラクリマ節で勝手に喋りだす。


「あ~……これより近い未来、魔王は復活します。それに合わ……伴い、加護印を持つ候補者には試練が訪れます……あ~……」


 何かを言わなければ。多分ラクリマはそんな感じ。だけどラクリマはあまり日本語が上手ではない。普通の話し言葉ならそう苦労はしないだろうが、この堅苦しい言葉使いでは上手く言葉が出てこないのだろう。

 いつもこんなことをさせられていると思うと、ラクリマがちょっと可哀そうになってきた。


 しかしそれを物ともしないのがラクリマ。神経の図太さだけなら法女様クラスだけあって、強引に終わらせにかかる。


「皆さま、この度は誠にお疲れさまでした」


 あまりに強引な終わりに一瞬間が出来たが、ラクリマはなんか“終わり”みたいな感じの圧を放った。


 ラクリマ―⁉ お前権力の使い方間違ってるよー!


 法女様の威厳。この圧力には様々な有権者が揃うメンバーでも逆らう事は出来ないようで、『ありがとうございます』の拍手が起こるが、まるでコントのような杜撰な終わり方には、逆に運営が可哀想に感じるほどだった。

 それをラクリマ以上にこういう事には慣れているバイオレットさんが救う。


「三年一組の皆さん、また加護印をお持ちの方々。この後法女様より重要なお話があります。会が終わりましたら、お手数ですがお集まりください!」


 バイオレットさんは本当に上手。あの法女様の話が終わった直後、間髪入れずに声を上げる。その手際の良さは法女様に失礼が無く見事だった。


 これによりラクリマの話が終わると直ぐに試験官は解散を口にし、なんとも無礼な試練は幕を閉じた。


 試練が終わると、俺たちはバイオレットさんに言われた通り、ラクリマの元に集まった。


「皆さま、お集まり頂き誠にありがとうございます。これより大事なお話を致します」


 俺たち五人だけなら良かったのかもしれないが、他の三年一組の生徒やフィリアのおじさんたちがいる中ではさすがにマズいと思ったのか、法女様を差し置いてバイオレットさんが重要な話とやらを始めた。


「先ほどの法女様のお話にもありましたが、近々魔王が復活します。それに伴いまして、間もなく聖刻を授かる祠が開錠されます」


 聖刻を授かる祠の開場⁉ 何⁉ 祠ってイベント会場みたいな感じで開くの⁉


 聖刻の祠は、なんか普通の人には行けない険しい修験道みたいなところを通ってやっとたどり着く場所だと思っていたが、なんか意外と駅近なアクセスの良い場所に聞こえた。


「試練の内容等については、こちらでは詳しい情報はありません」


 えっ⁉ そうなの⁉ じゃあ俺たちがやった色々な罰ゲームは何だったの⁉


 まさかの発言。この演習はそれを想定した物だと聞いていたが、あの法女様の秘書的な立場であるバイオレットさんが言うと、今までの苦労が全部無駄に聞こえた。


「ですが、祠の開くタイミング、試練の内容につきましては、文献からもその資格の有する者にはおのずと理解できると言われております」


 それはつまり、資格無き者には祠にすら辿り着けないという事。つまり! 現在な~んにも分からない俺にはその資格は無いという事。

 どうやら帰国組一番手は、俺のようだった。


「いつ祠が開錠されるのかは、現在法女様でも詳細は分かりません。近々その時は訪れますので、各自備えて下さい。なお、キャメロットにもこの事は伝えてありますので、今後の訓練内容は変更されると思います。明日、閉会式を終え次第、皆様はキャメロットへお戻り頂き、聖刻を授かる準備を整えて下さい」


 なんか急に軍人みたいな事を言われドキッとした。だけどどうやら本当にその時は近い様で、一気に空気が重くなった。

 そしてバイオレットさんの話が終わると、最後にラクリマが真剣な面持ちで一言『ご武運を祈ります』と言ったことで、体中に緊張が走った。


 このラクリマからのメッセージは予言を含んでいたようで、この先暫くのんびりといつもと変わらない日々が続くが、その日は突然やって来た。

 熱中症による二度の点滴と、そこから引いた夏風邪により、絶不調です。今回の話もそんな中無理矢理書いたので、出来は自分でも良く分かりません。

 現在夏風邪が長引いており、モップの世話でさえ大変です。もしかすると次の投稿はさらに期間が延びるかもしれません。

 

 そんな夏風邪についてですが、ちょっとした小話。


 流石に長引くため、病院へ行きました。すると、三時間待たされた挙句、『アレルギーか花粉症じゃないの?』と言われ、約二分の診察で六千円ほど取られました。その上薬局へ行くとちゃっかり薬代も請求され、逆に風邪を悪化させる事となりました。


 先生ー! 今日花粉症で来た人いました⁉ 同じような症状出てる夏風邪の人いませんでしたか!


 以上

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