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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
五章
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最終試練

「ほわぁ~」

「欠伸ばかりして、そんなにファウナが殺し屋だった夢が怖かったんですか?」

「うるせぇよ」


 翌日、ファウナの手配により午後からの演習になった俺たちは、アテナ神様の試練場にいた。


「全くリーパーは……ファウナが殺し屋のはずある訳ないでしょう? 仮にもファウナは、英雄である私たちのお婆ちゃんと同じ名前をしているんですよ? ファウナが殺し屋なら私たちも殺し屋になってしまうじゃないですか? ねぇヒー?」

「はい、そうです」


 昨日、あの後部屋に戻った俺は、すぐに皆に電話を掛けた。すると、当然ながらもう寝ているうえに真面目なリリアたちは電源を切っており繋がらず、同じくフウラにもマリアにも繋がらなかった。その上アドラとパオラは当然のように出なく、上流階級のエリックとスクーピーも電源を切っているという始末だった。

 かといって繋がったからと言っても、キリアは『明日聞く』と言って速攻切るし、ツクモには『馬鹿じゃないの?』と言われ切られるし、ウィラには朝のお祈りがあるからダメだと切られるし、フィリアには『殺すぞ』と言われるしで、結局まともに話を聞いてくれたのはジョニーだけだった。


 そんな心優しいジョニーだが、あいつも絶対心の中では俺を馬鹿にしていて、『様子を見よう』だとか『話し合ってみよう』とか分け分かんない事言い始めて……もう全員ファウナに殺されれば良いなと思いました。


 まぁそんな感じで、俺の奮闘は全く意味を成さず、ただ俺は貴重な睡眠時間を奪われ苦しんだ。もちろんクレアの件は口外してはいないが、それでも普通少しくらいは取り合わない? ファウナが殺し屋かどうかはさておき、大司祭様を斬ったって話しすら誰も信じないし、もうほんと……皆殺されれば良いなと思いました。


 そんな事があったせいで、今日がクレアにとって最後となる試練日だったが、俺だけはファウナに殺されなければ良いやという感じで、クレアの演習を見守る事となった。


「クレアは上手くいくと思いますか、リーパー?」

「知らねぇよ。なんで俺に聞くんだよ?」

「だってリーパーは昨日、あの後クレアとずっと一緒にいてアドバイスしていたんですよね? 夜も一緒の部屋で寝たって聞きましたよ?」


 そう言うとリリアは、ニヤ~っといやらしい笑みを見せ、それを聞いていたヒー、マリア、フウラ、ツクモまでキモイ表情を見せた。それに対し、フィリアは意外とこういう話には興味がないようで、素知らぬ態度をとる姿にはなんか姉としての頼もしさを感じた。そして、女子たちに囲まれているせいで輪に入れず、聞き耳を立てているウィラとキリアとエリックには、なんとも言えない距離を感じた。


「はぁ? 誰に聞いたんだよそんな事? そんな訳ねぇじゃん」

「ファウナです」


 あの野郎~! 何でリリアたちにまで言うかな? こいつらまだ中学生だぞ!


「今日の試練が午後からになったのだって、リーパーがお願いしたからだって言ってましたよ? なんか~、昨日クレアとリーパーは夜、色々練習したから疲れてるからだって」


 最悪だなファウナ!


「でもリーパー、エッチな事ってしたんですか?」


 いや! した前提でお前揶揄ってたんじゃないの⁉ 


「してねぇよ!」

「分かってますよ、リーパーはそんなことしないって。そういうのは二十歳になってからですもんね?」


 酒、タバコじゃねんだよ!


 箱入り娘ではないが、純粋すぎてほぼ箱入り娘と変わらない五十嵐家の娘さんたちは、マジでそういうのは二十歳を過ぎてからだと思っているようで、疑念のぎの字すら抱かなかったようだ。当然フウラもそうだったようで、ブレハートの血筋は発育が遅そうだった。

 それに比べ、マリア、ツクモは穢れているようで、間違いなくヤったと思っているらしく、キモかった。


 うざっ!


「それはさておき。クレアの方は大丈夫そうですか、リーパー?」


 腐っても純粋なのがブレハート一族。マリアやツクモ、その他はまだスケベ状態だが、ブレハート三姉妹にはそんなことは毛ほども興味がないようで、先日喧嘩していたのにも関わらず、ヒーの問いかけに揃って心配そうな表情を見せた。


「大丈夫だよ。クレアはアレでも三年一組の学級委員長だぞ。俺たちが出たのに出ないわけないだろ」


 これは嘘。だけど、こうでも言わんとこの三人はずっと心配する。それが功を奏したのか、三人の表情から陰りが消えた。


「そうですよね! クレアは私たちの中では一番頑張っていましたもんね!」

「そうですリリア! クレアほど真剣に英雄について考えていた人物はいません!」

「そうです! クレアは私たちの中で最も英雄に近い存在だと私も感じます!」


 人に優しく、自分に厳しく。その言葉を真面目に貫く三人だからこそ、昨日喧嘩した事などすっかり忘れ、仲良くクレアを称賛する。っというか、この三人のことだから、昨日の喧嘩のせいでクレアに加護印が出なかったとでも思っている節があり、猛省したのだろう。だけど聞いたら面倒そうだから、仲直りしたかは聞かない。


 そんな純粋を通り越してバカの域に達している三人は、俺が適当に言った嘘でさえ信じてしまい、もう大丈夫だという感じで喜んでいた。


 そこへ、いよいよ準備を終えたクレアとファウナが登場した。


 試練は、今日で演習は終わりという事と、午後へ変更となった事もあり、瘴気への耐性テストだけで終わる。っというか、元々この演習の目的はそこにあるため、実質上これが本試練である。

 だが、エリックのように瘴気への耐性を持たないクレアにとっては、加護印の発現が絶対条件となる以上、下手をすれば俺たちの中で最も厳しい条件の試練となる。特にクリア出来なければ脱落もあり得る試練のため、今日のクレアの表情は一層険しかった。


 その表情は、さっきまで和やかにしていたマリアたちでさえ声援を送る事を躊躇うほどで、場は一気に緊張感に包まれた。


「さて、どうなるかな」


 かなり重々しい空気に包まれ、会場に静寂が訪れる中、腕を組んだエヴァが静かに言った。

 その言葉は、まるで見守る俺たち全員の声を代弁したようで、それを聞くと増々俺たちの空気は重くなった。


 会場に姿を現した二人は、そのまま試験官の前に立った。それを受けて、試験官は気遣う様に問う。


「お二人とも、準備は宜しいですか?」


 試験官に問いかけられると、ファウナはクレアの顔を見て、返事を待った。


「……だ、大丈夫です」


 もう全然大丈夫じゃなかった。表情こそ変えなかったが、視線が集まってからの間や、声の張りの無さからは不安が滲み出ていて、完全に落ちるフラグだった。何より、クレアの返事を聞いた時にリリアとフウラが静かなる驚きの表情を見せるほどで、その後の俺に刺さる全員の疑いの視線は、クレアの脱落を物語っていた。


 これには試験官ですら戸惑ったようで、本当に大丈夫なのか? という感じでファウナの顔を見た。


「構いません。始めて下さい」

「……分かりました」


 流石のファウナ様もこれにはどうする事も出来ないようだった。っというか、準備は良いかと聞かれたのに構わないと答えるあたりに、ファウナ自身も本心ではもう駄目だと思っているのだと思った。


「それではこれより、アテナ神様の試練を開始致します」


 こうして、クレアが駄目だろうが何だろうが、大丈夫だと言ってしまった以上試験官も試練を開始せざるを得なくなったことで、遂に演習最後の試練が始まった。


 ウンコしたいので、本日の後書きは無しです。

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