大司祭 2
大司祭トーマ。前期の魔王復活時に、ガーディアンとして討伐に参加した英雄……くらいしか俺は知らない。っというか、元々歴史とか社会とか全然興味が無く、家のじいちゃんの昔の事さえ知ろうとさえしない俺にとっては、なんか色々聞いた気もするが全く記憶がないせいで、ほんとそれくらいしか知らない。そりゃもうどれくらいかと言われれば、俺、中学の時の社会のテストで十二点取ったことある人間だから、坂本龍馬が何をした人なのかくらい知らない。
それ程よく分からない大司祭トーマ。ファウナやエヴァの話では、ち〇こに加護印があるほどのエロオヤジらしく、嘘か本当かは知らないが、その駄目っぷりは加護印を持ちながらもガーディアンにさえ選ばれないほどの人物らしい。
そんなエロ大司祭の元へ、加護印で悩むクレアが一人で向ったという話を聞いたファウナが、AVみたいなことが起こるのではないかと危惧し、エヴァまで招集して大司祭トーマの部屋へ突撃する事となった。
「エヴァ、状況はどうですか?」
「今クレアはシャワー浴びてる」
「何ですって⁉」
エヴァはこう見えて意外と凄い。その力がどれほどの物なのかは知らないが、どうやら生命探知に近い透視能力まで兼ね備えているらしく、クレアの状況が分かるらしい。っというか、本当にAVみたいな展開になっているらしく、エヴァの言う事が本当ならそこまでして加護印を欲しがるクレアには失望した。
ファウナとしてもそれは許しがたい行為らしく、それを聞くと握る手に増々力が掛かり、さらに歩くスピードを速めた。
そんな感じでファウナを先頭にドスドス進むと、司祭やお偉い様方関係者が住む屋敷へと続く扉が見えて来た。
入り口の前には、警備のために二名の強そうな守衛が立っており、先に進むにはかなり厳しそうだった。
そう思っていたが、ファウナかエヴァか、どっちが凄いのか分からないが、俺たちが近づくと守衛は何故か扉を開き、何故か顔パスで通ることが出来た。それも二人は思っていた以上にVIPなようで、通るとき労いの一言も掛けずそのままスルーする。
「えっ! お、おい⁉ エヴァとファウナって一体何者なんだよ⁉」
「え? 何って、リーパーたちと同じ、次期英雄候補様だろ?」
「いやそうじゃなくて! こっちって普通行けないんじゃないのか⁉」
「あ~……多分な?」
多分ここまでの扱いを許されるのは世界各国の首脳クラス。なのにエヴァは、まるで『次期英雄候補だから普通じゃね?』くらいの感じで返事をする。
「どういう事だよ⁉ 特別養子縁組ってこんなことしても許されんのかよ⁉」
「まぁ落ち着けよリーパー。トーマのとこ行きゃ分かる」
「だからそれがどういう事だよって聞いてんだよ⁉ 大体エヴァとファウナって、トーマって人とどういう関係なんだよ⁉」
「だから、そりゃトーマのとこ行ったら全部分かるって。それよりも準備しとけよリーパー。お前クレアと結婚すんだろ? お前が未来の嫁さん助けんだからよ」
「結婚しねぇよ!」
もうエヴァとファウナの中では、俺とクレアは結婚するのが決まっているらしい。その証拠に今更ながらファウナが驚く。
「何を言ってるんですかリーパー⁉ そのためにリーパーは来たんじゃないんですか⁉」
「い、いや、違うから⁉」
「何ですって⁉」
この二人あれだ。病気だ!
こんなことが許されるほどVIPな二人。おそらく自分たちが決めた事は全てまかり通って来たのだろう。ちょっとこの二人とは、これ以上関わるのは人間として止めておこうと思った。
だが超VIPである事には変わらず、目の前に立ちはだかる扉は全て守衛が自動ドアのように開けてくれる。それどころか、分かれ道があっても教えてくれるように扉を開けて待っているほどで、まるで守衛さえ大司祭トーマをやっつけてくれと言っているような様には、どんだけ大司祭トーマは嫌われているのかと声を大にして言いたいほどだった。
そんなもんだから、これだけ厳重な警備の中でもあっという間に大司祭トーマの部屋に辿り着いた。それも部屋の扉さえ守衛が開けて待っていてくれているほどで、ノンストップで部屋へ突撃できた。しかし……
「おい。誰もいないぞ?」
大司祭様らしい難しい本に囲まれた書斎のような部屋。そこを抜けてリビングに入っても物音どころか人の気配さえしなかった。
「エヴァ、入り口はどこです?」
「こっちの方だ。あ~……多分この辺に隠し扉のスイッチかなんかあんじゃね?」
隠し扉⁉ 何でエヴァはそんなことまで分かんの⁉ って言うか本当に⁉
生命探知でクレアたちの位置からそう推理したのかもしれないが、壁の方を見てスイッチを探すエヴァを見ていると、なんか適当な気もして来た。っというか、よくよく考えたら壁の向こうなら一個部屋間違っているんじゃないかと思った。その矢先だった。
「な、なぁ? 隣の……」
「エヴァ、リーパー、そこをどけて下さい」
「え?」
もうファウナは相当焦っているのか、そう言うと突然左手に真っ白な刀を創り出した。
魔具⁉ ファウナって魔具まで創れるの⁉
「おいファウナ⁉ 一体何する気……わっ⁉」
もうここからはマジで意味が分からなかった。ファウナが刀を創り出したかと思うと、カメラのフラッシュのような眩い閃光が一瞬走った。
「なんだ今……えっ⁉」
フラッシュに驚いていると、今度は壁から音がしたと思ったら、積み木が崩れるように壁がバラバラに割れ落ちた。
「さぁ行きましょう」
「おい⁉ ファウナ何したんだよ⁉ 何なんだよこれ⁉」
ファウナは刀を出しただけ。それこそ柄にさえ手を掛けていない。だけど口ぶりや素振りから、ファウナが壁を壊したのは間違いないようだった。
「説明は後です。トーマとの話が先です」
「え?」
ファウナが見つめる壊した壁の向こうに視線を向けると、そこにはベッドの上に上半身裸の大司祭トーマの姿があった。その姿を見た瞬間、急に自分の置かれている状況を判断でき、大変な事に巻き込まれたと絶望した。
「な、なんだ貴様ら⁉」
大司祭トーマは、年の割にはかなり豊満な体系をしており、禿げた頭と金のネックレスと白いガウンが良く似合い、いきなりの登場に泡来る姿は金満悪代官という感じだった。しかし今現在、クレアがどうかも分かってない状況では、見た目こそは悪党という感じのトーマであったが、完全に俺たちの方が悪党……いや、犯罪者だった。
それでももう大司祭トーマを悪党と決めつけているファウナは、後に引けないんだかどうだか知らないが、堂々と正義のヒーローを演じる。
「お久しぶりですねトーマ。変わりありませんね」
「お前たちは確か、キャメロットの生徒⁉ いくら英雄候補だからと言って、こんなことが許されると思うのか! 私は加護印を持っているんだぞ!」
大司祭トーマブチギレ。そりゃもちろんそう。いきなり壁壊して入って来るわ、馴れ馴れしい口調だし、武器持ってるわで、俺でもリリアがこんなことしたら、バラバラにして塗装して、椅子として組み立ててリサイクルショップに売りに行く。
「おや? 私たちの事をお忘れですか?」
「お前たちなど知らん! こんなことをするのはファウナかエドワードの孫か!」
この時のトーマが言ったファウナは、リリアたちのお婆ちゃんの“ファウナ・ブレハート”の事。っというか、昔っからこんな事すんのはブレハート家かアルバイン家の血筋くらいしかいないらしい……そう言えば家の父ちゃん犯罪者!
「おやおや。一時とはいえ同じ時を過ごした間柄でも、忘れてしまったのですか?」
「お前など知らん! 随分口の利き方を知らん奴だ!」
ファウナは相当トーマの事を舐めているようで、今まで見せた事もない態度で小馬鹿にする。そのせいで激昂するトーマは、ファウナの事を知らないの一点張り。
そんな状況なのに、今度はそこにエヴァまで加わり始めた。
「まぁ落ち着けよファウナ。こいつは直ぐ居なくなったからな、聖刻の事良く知らないんだろ?」
「なるほど。そうでした。それで私たちの顔を見ても気が付かなかったわけですか?」
「そりゃそうだろ。こいつ『神の力なんて所詮まがい物だ』って言ってたし」
「そうでした」
俺には分からない三人の過去。三人が一体どんな関係なのかは知らないが……俺たち絶対後で懲罰確定! 何でこの二人余裕ぶっこいてられんの⁉
もう人生の終わりだった。ここまでの事をしでかしてしまっては、もう言い逃れは出来ない。それは例え加護印を持っていてもだ。なのにエヴァたちはさらに大司祭様を挑発して罪を重ねる。
「それよりもトーマ。クレアはどこにいるんですか?」
「お前たちには関係ないだろ! 無礼な奴め! 今憲兵を呼ぶ! お前たちはそこで黙って立っていろ!」
完全に終わった。ここで憲兵なんて呼ばれたら、何の罪になるかは知らないが俺たちは牢屋に入れられる。そうなったら弁護士とか来て、行く行くは裁判となり、最後には懲役が確定する。そしたら俺たちは服役して、出て来た時には魔王は居なくなってて、俺たちは残りの人生をバイトとかしながら過ごさなければならない。それに家には多額の借金もあるし、その頃にはじいちゃんも死んじゃってるだろうから、俺は鉄骨を渡って指をもがれて地下労働所で働くか、ホームレスになるくらいしか道は無い。
ファウナたちのせいで、俺の人生という物語はここで終わりを告げた。だがそこへ至るまでの過程は語られなくともまだ続くようで、ファウナとエヴァは物語を織りなす。
「呼んでも誰も来ませんよ、トーマ?」
「何を言っている小娘が!」
「アズ神様の力も知らないのですか?」
「何だと!」
「今この場においては、全てアズ神様の力が支配しています。助けを呼んだところで、誰も貴方の声には従いませんよ」
「何を寝ぼけた事を!」
ファウナマジ何言ってんの? 自分のしでかした事を直視して、頭おかしくなったの?
俺たちが助かるとしたら、それこそ神様のお力が必要だ。だけどそんな物などどこにもない。多分ファウナは夢見る少女系女子だったようで、幻想の中さ迷っているようだった。ところが……
「どこにアズ神様が居られるというんだ! 寝言も休み休み言え!」
「あらら。トーマは本当に私たちの顔を忘れてしまったようですね? エヴァ」
「ったく……トーマ、お前は本当に駄目な奴だな! これやる度にどれだけ“奪う”のか知ってんのか!」
話は良く見えないが、何やら二人は本当にトーマの知り合いのようで、話が通じないと見るやエヴァは苛立ちを見せた。そして……
「よく見とけ!」
そう言うとエヴァは……というかエヴァの姿が、徐々に変化し始めた。それはまるで急速な成長という感じで、エヴァの姿が見る見る大人になっていった。それどころか、勢い余ったのかそのまま成人へとなり、中年となり、最後は老人に。そして……
「じいちゃん⁉」
モップが、人間で言う青年になるまで投稿ペースはかなり遅くなります。今までは出来るだけ傍にいていつでも相手が出来るようにしていましたが、よくよく考えたら成長過程にある今のモップにとってはとても大切な時期だと知りました。なので開いている時間は出来るだけモップに使おうと思います。
楽しみに待っている方がおりましたら、大変申し訳なく思います。
ついでに、現在六月の演習に向けて消防団の訓練を行っております。今年私は、ポンプ車操法という、消防車からホースを伸ばして放水するという演習を披露する団員に選ばれました。最初は、人前で披露するのは緊張するなと訓練していましたが、いざ放水したときのホースの重さや圧力を体験すると、そんな気持ちは一瞬でぶっ飛びました。
これは小説の取材としては最高の体験なのですが、もう私はホースは持ちたくありません! あんな死ぬ気で押さえないとぶっ飛ばされるのは勘弁して下さい!




