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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
五章
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大司祭

「あ……そうですか……」


 瘴気の壁を越えられず、一人落ち込むクレアを励ますために部屋を訪れた俺だったのだが、どうやら相当落ち込んでいるらしく、執事のじいさんからまさかの不在を言い渡された。


 これには少しほっとした。というのも、最初は何か励ましの言葉を掛けてクレアの気持ちを切り替えさせられれば良いな~くらいの気持ちで部屋を出たが、よくよく考えたらクレアは俺に告白してるし、あれからしばらく会ってないしでを色々思い出して行くうちに、なんか超気まずいと言うか恥ずかしいと言うか、そんな何かモヤモヤなのかエチエチなのか良く分からないがドキドキしてきて、正直会いたくなかったからだ。


 だからこれには仕方がないと諦めようとしたのだが、ファウナは一体クレアの何なのか、ずっと部屋から隠れているようで隠れきれてない感じでずっと付いて来て、凡人の俺でさえこのまま帰っては駄目だと分かる程の熱視線をぶつけてくる。


 それはもう、姿を見なくても目がバキバキになっているのが分かるくらい凄まじく、ここで『分かりました。ありがとうございます』なんて言って去ろうものなら直ぐにでも襲い掛かって来る。

 そんなもんだから、一応それなりに粘る姿勢を見せなければいけなかった。


「どこに行ったのか知りませんか?」


 この執事のじいさんは、血縁関係とかは分からないが、常にクレアと一緒にいて、俺から見ても本当の家族のように絆が深い。そんなじいさんだからこそ、落ち込むクレアをそっと一人にしてあげようとでも考え、居場所を教えるはずが無いと思った。


「大司祭様である、トーマ様のお部屋へ赴いたようです」

「え?」


 言うのかよー!


「お嬢様は、瘴気に耐えられない己を深く悔やんでおりました。そこで、少しでも加護印について助言を授かるため、思い立ったようです」

「そ、そうですか……?」

「どうかリーパー様、お嬢様にお力添えをお願いします」

「え?」

「お嬢様は英雄になるためではなく、三年一組に残り続けるために苦しんでおります。お嬢様はいつもお帰りになられると、三年一組で起こったことを嬉しそうにお教えくれます。今日は何があったとか、誰と何のお話をしたとか、それはそれはとても楽しそうに。お嬢様はとても三年一組の生徒であることを幸せに感じています」


 おい! なんか急に喋り出したぞ⁉ 俺別に孫自慢とか聞きたいわけじゃないから⁉


 クレアが相当悩んでいる事、相当三年一組を大切に想っている事はとても良い話だ。しかし、今クレアは大司祭様に助言を貰いに行っているからの、明日でもう終わりという状況でクレアを助けてあげてくれに始まり、突然の孫自慢への流れは唐突過ぎて、先ずは状況を整理するために一旦俺にフリーの時間を渡して欲しかった。


「特にお嬢様は、リーパー様とお会いする事を大変お気に召しておりまして、様々な出来事をお教えくれます」

「そ、そうなんですか……」

「はい。それはそれは、大変楽しそうにお話しくださいます」


 そりゃそうだろう! アイツ俺にぞっこんだから! じいさん絶対知ってるよね⁉


 執事のじいさんが、突然クレアについて語り始めたのは、そういう理由らしい。じいさんにとって孫のような存在のクレアが悲しむ姿は耐えがたいらしい。

 だがしかし、それを俺に頼むのはどうなのか? 何故なら、家は超貧乏だし、貧乏だし、超貧乏だ。本当にクレアのことを思うのなら、将来も考えて普通エリックかキリアじゃね?


 っと、まぁそんなことを考えながら、このじいさんの話はいつまで続くのかと逃げるタイミングを伺っていると、埒が明かないとでも思ったのか、ファウナが入って来た。


「お話は聞かせてもらいました」

「あ……ファウナ来たんだ……」

「これはこれはファウナ様。お変わりありませんか?」

「変わりありません」


 さすがファウナ。顔は広い。そして意外と冷たい。


「それよりもリーパー。早く大司祭の部屋へ向いましょう」

「え? 何で? クレアは加護印についてアドバイス貰いに行ったんだよ? 俺たちが行ったら邪魔になるだろう?」

「何を言っているんですかリーパー! 今行かなければ後悔しますよ!」


 後悔⁉ 何故⁉


 大司祭であるトーマという人は、加護印を持つ元ガーディアンの一人で、それはそれは超偉いお爺ちゃんだ。それこそ家の爺ちゃんやクレアのお婆ちゃんたちと共に魔王と戦ったほどの実力者で、今俺たちが邪魔をしに行ったらクレアの加護印の発現のチャンスを奪う可能性があり、それこそ後悔する。

 それを逆の意味で後悔というファウナには、もしかして公開って意味で言っているのかと思った。


「どういう事だよファウナ、公開って?」

「大司祭トーマは、加護印を持ちながら、ガーディアンにさえ選ばれなかった人物です」

「ええっ⁉」


 加護印を持っているのにガーディアンに選ばれないってどういう事⁉ 元英雄の一人じゃないの⁉


「どういう事だよファウナ⁉ だって俺たち、あの人は元英雄の一人だって聞いてるぞ⁉」

「それは彼や彼の周りが、都合の良い部分を語っているだけです。実際彼はガーディアンにこそ選ばれませんでしたが、一時は英雄チームと行動を共にしています」

「はぁ⁉ で、でも、それでも魔王討伐に少しは貢献したんだろう?」

「いえ」


 してねぇのかよ⁉


「彼がした事と言えば、口で見栄を張るくらいです!」


 そりゃ嘘だろ⁉


 ファウナが元英雄たちと直接会ったりして、歴史について深く精通しているのは知っている。だけどいくら何でもそんなことまで爺ちゃんたちが教えるとは思えられず、信じられなかった。


「とにかく、間もなくエヴァも合流しますから、トーマの部屋へ向いましょう!」

「ええっ⁉ エヴァも呼んだの⁉ 何で⁉」

「この件については、リーパーとクレアだけで解決して頂きたかったのですが、私たちが責任を果たす必要が出てきました!」

「責任?」

「とにかく話は後です! 行きますよ!」

「え! お、おいファウナ⁉」


 何の責任なのか知らないが、そう言うとファウナは一人勝手に憤り、俺の手を引っ張り速足で歩き始めた。

 そのとき、いつもおっとりしているファウナに、ちょっと強引に手を握られ引っ張られると、なんか新鮮でドキッとした気持ちになり、柔らかい手の感触が悪くなかった。


 そんな俺とは対象に、すっかり熱くなっているファウナがグイグイ手を引っ張り進むと、本当に招集を掛けられていたようでエヴァが合流した。


「お、おうエヴァ。ファウナを止めてくれよ?」

「エヴァ。付いて来て下さい」

「お、おう……」


 エヴァの姿が見えてもファウナは足を止めず、そのまま進む。エヴァもエヴァでいきなり呼び出されても逆らえないのか、大人しく従いついて来る。


「な、なぁエヴァ? どういう事だよ? 何で俺たち大司祭様の部屋に行かなきゃなんねぇんだよ?」


 いきなり呼ばれたエヴァに訊いても分かるはずが無い。だが俺も俺で急にファウナに引っ張られて訳が分からない。ただ分かっているのは、ファウナがかなり怒っているという事くらいで、何故ファウナが怒っているかそれすら分からないままだった。


「クレアがトーマのとこ行くからだろ?」

「いや、それが分かんねぇって言ってんの!」


 いきなり呼ばれたエヴァもやっぱり分かっていないのか、説明が面倒なのか、要領を得ない返事しかしない。っというか、どうやら表情的にも面倒な方。


「なぁ! トーマって大司祭様一体何なんだよ⁉ 別にクレアが大司祭様にアドバイス貰いに行ったって問題ないだろ⁉」

「え? あぁ、そうか。リーパー、トーマの事知らないもんな?」

「元英雄の一人くらいしか知らねぇよ!」

「あぁ~そうなのか?」


 エヴァは本当にマイペース。こんな状況でも“お前昨日居なかったから知らないか”的なノリで言う。


『なんか今日のファウナ機嫌わりぃな。昨日なんかあったの?』って聞いてんじゃないんだよ!


「まぁ、分かりやすく言えば、ダメな奴だ」

「どういう事だよ⁉ ちゃんと説明しろよ!」


 マジどういう事⁉ 仮にも元英雄の一人だよ⁉ エヴァもファウナもバカにし過ぎじゃないの⁉


 エヴァとファウナが特別養子縁組時代に、様々な英雄と出会い学んできたのは容易に想像がつく。それなのにトーマって人だけは異常に毛嫌う理由が分からなかった。それこそ過去にトーマって人に何かされたんじゃないのかと勘ぐってしまうほどで、二人に報復に巻き込まれるのだけは勘弁してもらいたかった。

 ところが、ここでエヴァがとんでもない事を言う。


「まぁあれだ。前にもリーパーに言った気もするが、あれだ。トーマって奴は、ち〇こに加護印あるんだよ」


 それ前に誰かに聞いた! でもそれがどう関係……


「ええっ⁉ ち〇こに加護印あんの⁉ それどこを加護してんだよ⁉」

「ち〇こだろ?」

「いや、そんなこと聞いてねぇよ⁉」

「え? 違うのか?」

「違ぇよ! 加護印がどこかじゃなくて、なんでトーマって人がダメなんだって聞いてんだよ⁉」

「あぁ、それか?」


 エヴァとは全然話がかみ合わない。悪い奴じゃないけど、エヴァもまたダメな奴。


「ち〇こに加護印あるって事は、それだけ若いって事だ」

「意味わかんねぇよ⁉」

「おめぇ、ち〇こ若いんだぞ? そこにクレア行くんだぞ? 分かるべ?」


 分かるべ? って……


「そんなわけないだろ! 大司祭様だぞ⁉ 大体クレアが嫌がるだろ!」

「でも今のクレアなら、『俺と寝れば加護印出る』って言われたらするだろ?」

「しねぇよ! 大体大司祭様何歳だと思ってんだよ⁉」

「だから加護印の力があるんだろ?」

「加護印馬鹿にし過ぎだろ!」


 エヴァはそういう系のAVが好きなようだ。そんな非現実的な理想など存在するはずが無い。もしあるのなら、あの時既に俺はクレアにやられている。


 そんなあり得ない話に、増々訳が分からなくなっていると、ここでファウナもあり得ない事を言い出す。


「エヴァの言う通りです。今のクレアならあり得ます」

「ファウナまで何言ってんだよ⁉」

「トーマという人物はそういう輩です。もし仮にそうならなかったとしても、クレアをトーマに会わせるわけにはいきません!」


 この二人どんだけ元英雄馬鹿にしてんだよ⁉ この世界終わるぞ⁉


「それに、リーパーだって結婚するならクレアが処女の方が良いに決まっていますよね?」


 結婚しねぇし! 決まってねぇし!


「兎にも角にも、先ずはトーマの部屋に急ぎましょう! そこへ行けば全てが分かります!」


 こうして、兎にも角にも先ずは行ってみなければ分からず、兎にも角にも俺たちは大司祭トーマの部屋へと急いだ。


 これよりさらに間が開きます。消防団を題材とした恋愛小説を書こうと思い、数年前より消防団に入りました。すると、六月に演習があるため、カレンダーは散弾銃で撃たれた並みに予定が入りました。これにより増々小説を書くのが厳しくなりました。ちなみに書こうと思っている内容は、火の消せないダメダメ消防団に上司の命令で入れられた主人公が、そこで同い年の物凄くやる気のある女性と出会うというコメディー系です。

 彼女は主人公の隣の部屋に住んでいるという事で、やたらと主人公を訓練に参加させます。そんな彼女に最初は毛嫌いしていた主人公でしたが、徐々に恋心を抱くという物です。火事があれば銀色の防火衣を着て家から自転車で署に走ったり、サイレンが鳴る度『御用だ御用だ』と口走るヒロインを抜擢しようとしているため、いつものケシゴムワールドです。


 モップの方はかなり元気です。大きくなったし、毛並みもかなり美しくなりました。ただ、私が家に居れば遊べと鳴くし、風邪でもないのに常に鼻水プラス鼻提灯を膨らませています。そして寝るときは相変わらず同じ布団で寝るので、私の睡眠レベルは最悪です。モップは凄い子で、寝るときは何故かトの字に寝るし、体を全開に伸ばしへそ天で寝るし、朝早く起きるので困ってます。早く大人になって一人で寝られるようになって欲しいです。


 というわけで、次話はかなり間が開きます。よろしくお願い致します。

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