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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
五章
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信頼

 いよいよ始まったラファエル様の試練。それは人工的に作られた結晶石を持ち上げるという簡単な物だったが、結晶石は魔障を放ち、近づくだけでも命に危険が及ぶとても凶悪な物だった。

 

 そんな試練に最初に挑むのは、俺たちの中で唯一加護印を発現させていないエリックという、初っ端から波乱の展開だった。


「おいエヴァ。本当に大丈夫なのかよ?」


 加護印はまだ発現させていないが、耐性だけは何とかある状態の今のエリックでは、結晶石に近づくことさえかなり危険なのに、触る事はもっと危険だった。それこそいきなりゾンビになる可能性もあり、不安しかなかった。


「大丈夫だ。やっぱエリックはラファエル様の聖刻貰うには十分素質がある」

「本当かよ?」

「あぁ」


 俺としては、スクーピーの方が断然素質があるように感じていた。それはアースアイやエリックよりも先に加護印を発現させた事、子供としての何にでも成れる溢れんばかりの才能というのもあったが、あの齢で自分の立場を理解し、覚悟とプライドを持って三年一組に参加しているという逞しさがあったからだ。


 それに比べエリックは、俺たちと同じく、言われたから来たという感じで、本気で世界を救ってやろうという感じではなかった。


 そんなエリックだったが、エヴァはエリックの才能に気付いていたようで、腕を組んだまま嬉しそうな表情を浮かべた。


「見ろよエリックのあの顔。良い面構えしてる。輝いてるぜ」

「そうか? ちょっと熱くなり過ぎじゃねぇのか? ヤバくないか?」


 変身と言っても良い程鬼の表情になったエリック。あれは確かに恐れるものなど無いというオーラを放っているが、良いというよりも少し意気込み過ぎているような気がした。そして間違いなく輝いてはいなかった。


「安心しろよリーパー。ありゃ間違いなくラファエル様に愛されてる奴の顔だ。多分加護印出すぞ」

「本当かよ……?」


 エヴァは自信を持ってそう言うが、俺としては冷静さを失っている危険な状態に見えた。

 そんな俺の不安を感じ取ったのか、エヴァはその理由を軽く説明する。


「ラファエル様ってな、普段は浄化の力で病気や怪我を治したりする優しい天使なんだけど、怒るとその力で全部浄化しちまう鬼みたいになるヤベェ奴なんだ」


 天使さま相手にやべぇ奴発言をするエヴァはやべぇけど、なんか重要な話をしているようなので、一旦そこは無視した。


「愛情と憎悪は、根源は同じ感情なのは知ってるよな?」

「え? あ、あぁ……」

「つまりエリックはそれだ。普段は愛情深く他者に対して接するけど、それが遠慮になって力を発揮できない。そりゃつまり、普段から自分に科した厳しいルールの中で生きてるって事だ。分かるか?」

「あぁ、言いたいことは何となく分かる……」


 要は自分で決めた暗黙のルール。例えばスポーツなどで、ファールにならなければ激しい接触もありだが、紳士的にフェアプレイをするのならそれは決してしないという事。だけどそうなれば相手はバンバン来てかなり不利になる。それは人生に置き換えればかなりキツイ物となるのだが、逆に考えればそのルールは、漫画などで言えば常に重たい重りを付けたような状態で、それを外した時は物凄い実力を発揮する。


 もしエヴァの言う通り、今のエリックの鬼の形相が重りを外している状態というのなら、この先物凄い事が起こりそうな気がした。だがしかし、その重りを外しているのがエリックである以上、そう楽観視できるような物でもなかった。


「まぁ、そう心配すんな。ラファエル様の聖刻を貰った奴ってのは、歴代全部鬼になるらしいから、ありゃ間違いない」

「そうなのか⁉」

 

 これは意外な情報に、思わず驚いた。


「あぁ。アウローラもそうだった。怒るとマジで鬼だった」

「えっ⁉ エヴァ⁉ エリックのおばあちゃん知ってんのか⁉」

「えっ⁉ あっ! やべっ!」


 何がヤバいのかは知らないが、なんかうっかり発言だったらしく、自分で言っていてエヴァは焦っていた。


「い、いや……まぁ……そりゃ一応俺! 要、支援組だから!」


 今要支援組って言わなかった⁉ えっ⁉ エヴァたちってそっちの方だったの⁉ てっきり養子縁組かと思ってた⁉


「そ、そうなんだ……」

「あぁそうだ!」


 ファウナの口ぶりからず~と養子縁組だとばかり思っていたが、要・支援が必要な方だったという事実に、それ以上何も言えなかった。でも考えると確かにそう。エヴァってどこか頭おかしいところあったから……


「それより今はエリックだ! そろそろ扉開けるぞ!」

「あ、あぁ! そうだな!」


 俺たちがなんだかんだ言っている間に、エリックは既にガラス張りの結界の前に辿り着いていた。そしてなかなか覚悟が決まらないのか、扉と睨めっこしていた。だが逆に俺たちがなんだかんだ言っていたのがエリックの邪魔をせず、丁度良い場つなぎになっていた。


 そんな場つなぎも程よく役目を終え、いよいよ注目はエリックに集まった。


 注目が集まると、それを待つような余裕など無いはずだから、本当に丁度良くエリックはいよいよ結界の扉に手を伸ばした。


 表情は相変わらず鬼の表情で、ここからでも分かるくらい額に汗を流し、息が荒い。それでも戦闘モードに入っている今のエリックに後退の二文字など存在せず、ドアノブに手を掛けると迷わず扉を開いた。


 すると、これだけ離れているはずの俺たちにも、はっきりと魔障の濃度が変わったのが分かる程の圧が流れ込み、加護印を持つ俺たちでさえぐっと踏ん張るような力が必要だった。

 

 これにはもうエリックはヤバイと思った。それほど瘴気は禍々しく、質量があるようにさえ重く感じるほどだったからだ。それでもエリックはまだまだ行くようで、まさかの結界への入室を果たした。


「ね、ねぇエヴァ? もう本当に止めた方が良いよ。あの中じゃエリック直ぐに倒れちゃうよ」


 エリックが結界に入り、扉を閉めると一気に圧は無くなった。だがそれが逆に結界の中の恐ろしさを鮮明にし、俺より早くエリックの危機にマリアが止めるよう声を零す。


「さっきも言ったろ? それはエリックが決める事だ」

「で、でも……」

「それに見て見ろよ。ウイラとスクーピーを」


 そう言われ二人を見ると、二人は真剣な眼差しで黙ってエリックを見ていた。それはまるで絶対の信頼を置いているようで、二人が放つオーラが俺たちに邪魔をさせない空気を放っていた。


「お前ら兄妹だけだぞ? エリックを信じてないのは。ここで止めたらそれこそお前らはもう仲間じゃなくなる。それでも良いのか?」


 誰かを信じるという事は、決して今のような危険な状態でも止めず、必ずやり遂げてくれると見守る事ではないと思う。だけどあの幼いスクーピーでさえ、兄の危機でも真剣な眼差しを向ける姿から“信じる”という強い意思を感じ、なんか俺たちだけが何も分かっていないのだと思った。


「まぁ良いから黙って見てろ。お前ら二人には丁度良いかもしれん。一生誰にも頼らず生きて行こうと思っていた兄妹にはな」


 それを聞いて、まるで心の奥底をエヴァに見透かされたかのような気がした。

 

 誰にも頼らずは少し違うが、俺は他人からしたら大したことは無いが、あることがきっかけで独りでも生きて行くと決心した。それはとても下らない理由だから誰にも語ることはしないが、そんな俺の決心をまるで知っているかのようなエヴァの言葉に、何が分かるのか知らないが、エリックを信じるしかなかった。


 それはマリアも同じだったようで、一体どんな人生を歩んできたのかは知らないが、何かを物語るような表情を見せていた。


 遅れました。ブックマーク登録ありがとうございます。前話は、午前二時頃に確認して投稿準備をしていたので、普通に忘れていました。言い訳していますが、大変申し訳ありませ。

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