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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
一章
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取り戻した平和

「おっ! おぉ! これを見て下さい! 当たりました!」


 キャメロットから帰国して一週間、俺たちは日常を取り戻していた。


「おぉ! やるなリリア!」

「はい! 遂にコンプリートですよ皆!」


 この日、俺たちは俺ん家に集まり、リリアが気まぐれで大量に買って来たビックリマンチョコを開けて、シールを集めていた。


「これも皆のお力のお陰です! ありがとうございます!」


 特にビックリマンシールを集めているわけではないが、リリアは遊び上手で、時にこういった変わった遊びを提案する。その代わり、時に付き合わされる俺たちは大量のチョコレート菓子を食べさせられるという拷問に合う。


「さぁリリア、早くファイルに入れましょう」

「はい! これでけものフレンズに続き、ワンピースもコンプリートですよヒー」

「はい。どんどんコレクションが増えて行きますねリリア」

「はい! やりましたよリーパー、またリーパーの家に私たちのコレクションが並びますよ~」

「はいはい」


 ガチャガチャやらシールやら、小遣いは少ないのにリリアはよう分からん物を買って来てはコレクションと称して家に置いていく。


「さぁ後はみんなでこのウエハースを全部やっつけるだけです! 頑張りましょう!」


 リリアが買って来たビックリマンチョコは、恐らく二十は超えており、既に俺は二つ食べ、ジョニーに至っては果敢にも七つは行っている。だがしかし未だその数は大量で、フィリアは二つ目の時点で手が止まるほど過酷な状況となっていた。


「さぁヒー。これを食べ終えて初めてコンプリートと言えます。ジョニーにばかり頼ってはいられませんよ~」

「分かっていますよリリア。頑張りましょう!」

「はい!」


 そう言うと、二人はジュースを片手に楽しそうにバリバリボリボリ食べ始めた――


 俺たちが法皇様へ自由を掛けた戦いを挑んだあの日。武器を持った兵士みたいな人たちに囲まれた俺たちは、死を覚悟した。しかし法皇様が大声で武器を下ろせと兵士たちを制し、膝をついて祈るようにして俺たちに謝罪を口にしたことで事なきを得た。


 それほど俺たち英雄の子孫というのは重要な存在らしく、さらに言えば、その時世界に現在十一人しか持つ者がいないと言われる加護印を、フィリアとジョニーが発現させたのが大きかったらしい。

 そのお陰で俺たちは無事日本に帰ることができ、別に招集されていたリリアたちのおばさんやフィリアたちのおじさんまで帰国する事もできた。


 帰宅してもじいちゃんは前代未聞の珍事に大笑いして『よくやった』と褒めてくれた。リリアたちのおばさんも帰りたがっていたから怒ることは無く、家に着くと三人で風呂に入って、久しぶりに一緒の布団で寝たという。フィリアたちも加護印を発現させたことや、俺たちを見捨てなかった事を大いに褒められたらしく、寧ろ俺たちの行為は身内には称賛の嵐だった。


 本来なら俺たちがしたことは人類を滅亡させるのと同じような行為だが、逆に言えば俺たちが協力しなければまたそれも同じことのようで、法律的にも特に罰則はなく、あれから俺たちは前と変わらない生活を送れていた。あ~、ただ一つ問題があったのは、学校の方は俺たちが突然転校するみたいな話が行ってたらしく、転校したはずが一週間ほどで突然戻って来た事には友達からツッコミの嵐だった。


 それもこれも含めて、なんだかんだ言っても今回の件は丸く収まったようで、今は前と変わらない平和な日々が戻り、俺たちにしてみれば良い経験という名の最悪な思い出になった出来事だった――


「おっ。残りは後五つですか……では残りは一つずつ皆で分けましょう」

「……そうですね。では、これはジョニーの分」

「お、おう! ありがとう」


 リリアとヒーは少食に見えるはずなのに、バリバリウエハースを三つずつ食べてもまだ足りないのか、少し躊躇う様に俺たちに配り始めた。


 いやもうジョニーは無理だろ! こいつもう何個行ってんのか分かんねぇんだぞ! 死ぬぞ!


「これはフィリアの分」

「あ、ありがとうございます……」


 フィリア! お前はもっと食え! お前おじさんや爺ちゃんに『お前は俺の誇りだ』って言われたんだろ! 俺たちを守れ!


「これはリーパーの分」

「あ、ありがとう……ヒー……」


 キッツいぜ! ビックリマンチョコ四個は正直キッツいぜ、ヒー!


 こうして俺たちは地獄から生還し、普段の地獄の生活に戻ることができた。しかし世界はいずれ魔王の存在に怯える日を迎える。その時は俺たちが生きているのかは分からない。だけどその時は必ず英雄は現れる。それが俺の子孫なのか、はたまた別の子孫なのか、もしかしたらどこかで俺たちの事を知っている誰かなのかもしれない。

 残念ながらそれは俺たちではなかったが、俺たちは今あるちっぽけな幸せを守り、生きていく。

 

                             完

 


「リーパー!」

「あ、おじいちゃんが呼んでますよリーパー?」

「え?」

「……おいリーパー!」

「なんだよじいちゃん!」

「明日、また法皇様の所から人が来るらしいぞ!」

「えっ⁉」

「明日の夕方来るらしいから、リリアたちにも伝えとけ!」

『ええっ⁉』


 何しに来んだよあいつら!


 一章は終わりです。二章は完成後投稿します。

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