表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
一章
4/159

フェニックスの予言

 ちんぷんかんぷんなじいちゃんの説得により納得したWSOの人たちは、世界は既に救われたというような表情を浮かべ、また明日細かな説明や支度のために来ると言い、俺への招待状だけ置いて嬉しそうに帰った。

 そしてじいちゃんは何事も無かったかのように茶の間に戻り、いつものように酒を飲みながらテレビを見だした。

 それに対し俺は、突然決まった外国への留学への心の準備とかあったが、まず先に何故じいちゃんは俺を生贄にしたのかが納得がいかず、微妙な空気の中ただ黙ってソファーからテレビを見るじいちゃんの背中を見ていた。


 なんでなんで? え、なんで? なんか世界を救えるのはお前しかいない的な感じで言ってたけど、完全に孫見捨てたよね? 多分リリアたちも行くだろうから問題は無いけど、なんかおかしくない?


 突如としての祖父の裏切りには、未だに整理も理解も出来ていなかった。あるのはただ、じいちゃんは本当は駄目人間なんじゃないかという疑心ばかりで、これが本性かとさえ思うほどだった。


 そんな中、リリアたちの所にもWSOの人たちが行っていたらしく、話が終わった幼馴染たちが家に集結した。


「どうしますどうしますリーパー! 私たち遂に外国に行けるんですよ! お土産は何を買いますか!」

「……」


 今俺たちが何をしにキャメロットに行くのか良く分かっていない事を言っているのは、三大神の一柱、フィーリア様の加護を受けた元英雄の子孫、五十嵐理利愛だ。


 歳は俺より三つ下のはずで、現在中学生。身長は低く、成績も低いが、落ち込むことを知らないんじゃないかというほど元気で、魔法を得意とする分類の人種らしく、基本的な魔法はほぼ使える。だけどおばさんが封印術師的な仕事をしていた影響か、訳の分からない魔法の方が得意で、ただの悪戯っ子。

 ばあちゃんが北欧の人らしく髪は銀髪で、おばさんは直系だが、妹に家督を譲り日本人と結婚したらしく苗字は五十嵐。だけど本家本元ブレハートの血を引く正真正銘の英雄候補。お父さんはリリアたちが生まれる前に死んじゃったらしく、今は親子三人で暮らしていて、超エリートのはずだけど一般人と変わらない生活をしている。


「リリア、私たちは旅行に行くわけじゃないんですよ? これから私たちはキャメロットに留学して、生活するんですよ?」

「わ、分かっていますよヒー」


 そして、全く話を聞いていなかったリリアを諭しているのが、リリアの双子の妹のヒー。


 ヒーも俺より三つくらい下のはずで、中学生。身長も顔も形もほとんどリリアと一緒で、声もそっくり。だけど成績は優秀で頭が良く、ストⅡがめちゃくちゃ強い。特にヒーが使うザンギエフは凶悪そのもので、一度攻撃を喰らえばKOされるまでスクリューパイルドライバーが止まらない。

 性格は阿保のリリアのせいか逆に大人しく、それもあっていつもリリアがちょっと眠たいような感じの目をしている。だけど……


「ですので、お土産を今考えるのは後にしましょう。今買っても失くしてしまいます」

「おぉ! そうでした! お菓子とか買ったら腐ってしまいます!」

「はい、そうです」

 

 やっぱり双子。基本的なスペックは同じ。


「だけどもフィリア。俺たち留学って言ってもいつまでいる事になるんだ?」

「そうですね……これはあまり考えたくないんですが、下手をしたら本当に魔王が復活してそれを倒すまでかもしれません」


 今俺が真面目な質問をしたのは、俺たちの中では最年長のフィリア。歳は十九歳で大学生。

 フィリアんちもミカエル様の加護を受けた元英雄の一人で、おじさんがライハートの家督を継いでいるから、俺やリリアたちとは違い超お金持ち。

 

 俺たちハーフやクォーターとは違い、日本に住んではいるが両親がアメリカ人で、見た目はバリバリのアメリカ人。そのため背が高く、髪は金髪、その上美形。家は実践武具格闘なんちゃらとかいう道場みたいなのをやっているため、めちゃめちゃ人を殴る事が強く、獰猛。そしてケチんぼ。

 しかし貴族とかエリートとかいう感じはなく、普通に俺たちと遊んだりリリアたちと買い物とか行ったりして、俺たちからしたら姉弟で一番上の姉という感じ。

 

「おい待てよフィリア。魔王復活なんてまだ四百年くらいあるんだぞ? そんなわけないだろ? 別に俺は『そのくらいの気持ちで行け』っていうの聞きたいわけじゃないんだぞ?」

「まぁ落ち着きなよリーパー。別に姉さんはそんなことを言っているわけじゃない」

「あん? どういうことだよジョニー?」


 今フィリアと俺の会話に割って入って来たのは、フィリアの弟のジョニー。歳は俺より一つ上。

 ジョニーもバリバリのアメリカ人だが、黒い短髪と、渋い声と、北斗の拳に出てきそうな濃い顔のせいでそこまで外国人という感じではない。だけどプロテインと超重量剣術をやっているだけあって体はゴツく、身長も高いから、日本人ではないのだと思う。


 寡黙で、体のわりに大人しく、英雄の子孫であることを誇りに思っているようで気高い。そして自然に優しく、人造人間のパイナップル頭みたいな感じで、たまに電柱とかにいる雀を見てほほ笑むヤバイ奴。

 戦ったら間違いなく強いが、俺たちの中では一番弱い存在。


「姉さんが言ってるのは、法女様が予見したからそう言ってるだけだ」

「ほうじょさま? 誰だそれ?」

「法皇様のご息女様の事だよ」

「ん? 結局誰なんだよ?」


 ジョニーはいつも分かりづらい。その上ゲームはくそ弱い。成績は学校一らしいけど、いつも武人という感じのせいで、俺たちの中では常に浮く。


「ガブリエル様のお力を与えられたという、巫女のような人の事ですよリーパー」

「へぇ~」

「なるほど。私はてっきり不死鳥の話かと思いました」


 流石ヒー。物知りだし分かりやすくて助かる。危なく俺とリリアは、フェニックスの履く五足の靴か何かで永遠に考える事になった。


「で、その巫女様と魔王復活は何か関係があるのか?」

「はい。法女様は歴代で最も予見能力に長けているようで、七割から八割ほどその予言は当たるそうです。ですので、WSOの人たちが言っていた事が本当であれば、魔王復活は七十パーセント以上の確率であり得るという事です」


 えっ⁉ あの人たちそんな事言ってた⁉ やっべぇ~ほとんど話覚えてねぇや!


 なんかサラリとヒーに話聞いてましたか的なプレッシャーがあり焦ったが、俺とほぼ同時にリリアが眼球をパニックになったように一瞬左右に振ったのを見て、こいつも留学の話しか覚えてねぇ事が分かると少し安心した。


「でもそれ予言だろ? 歴史上はこんな短い時間で復活なんてした事ねぇんだから、絶対外れるだろ?」

「そ、そうですよヒー? そんなにポンポン魔王が復活していたら、既に人類は滅亡しています」

「そうだ」


 歴史やじいちゃんの話では、魔王復活の兆しがあってから魔王が復活するまで大体二十年くらい掛かるらしい。なのにそれを倒すまでという恐ろしい話に、リリアも俺の意見には賛成だった。


「ですがリーパー、法女様は地震や飛行機事故、今起きているウクライナの戦争まで予見し、その場所を正確に予言しています。さらにもっと言えば、オリンピックの金メダリストや大谷翔平選手のような歴史的な人物の出現まで言い当てています」

「ま、まさか~? それはメディア受けとか狙って、法女様は凄いみたいな印象与えたいだけじゃないの~?」

「そ、そうですよフィリア、今はネット社会で嘘の情報だってたくさんあります! リーパーの言う通り、どうせその方が法女様らしいとかいう理由で広まっているだけですよ!」

「そうだ~。大体七割から八割ってなんだよ? 天気予報の今日明日くらいでも外れることあんのに、人間がもっと先の事そんな確率で当てられるわけないじゃん」

「そうですよ! わ、私たちだって、これからもしかしたら大人になるまでキャメロットにいなければならないかもしれないという事くらい、ちゃんと覚悟していますよ!」

「そ、そうだそうだ!」

「そうですそうです! わわ私たちの……」


 そ、そそそんなの当たる訳ないじゃん! どどどどうせ何事もなく直ぐ帰って来れるよ! なんで俺たちがそんな長い間外国にいなければいけないんだよ! 今までそんなメソポタミアとかなんか人類滅亡とか、フリ―メイソンの陰謀論とかあったけどなんも無かったじゃんん! そんなの絶対当たる訳あるはずないじゃんん!

 

 俺たちは必死だった。例えフィリアたちが哀しそうな目で黙って俺たちを見ていても、俺たちは必死だった。

 

 そんな俺たちの懸命さも虚しく、三日後俺たちはいよいよキャメロットに向け出発する。


 この世界では、世界共通語は日本語となっています。後に軽く出てきますが、補足しておきます。理由は、かなり昔に英雄たちが集まったときに全く言葉が通じず、無駄な時間を浪費したためです。もっと言うと、その時のリーダーがリーパーみたいな人物で、何度教えても覚えないから『じゃあ一番頭の悪い奴に合わせてやるよ』的な理由です。


 我らは英雄だ‼ は、私の中ではかなりの自信作でした。しかし面白いとか文法とか以前に、見てすらもらえないという壮絶な惨状になっています。そこで、間もなくクライマックスになるかもしれません。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ