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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
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偉大な物は人それぞれ

 法女様、ジョニーという二人の戦士が挑むユーフォ―キャッチャーとの不毛な死闘は、いよいよ一万円という大台を超えた。そんな戦いは、度重なる追い金によりジョニーの心を蝕み始め、遂にジョニーは倒れた。それでもなお俺たちはこの戦いを勝ち切らなければ、自宅というオアシスには辿り着くことは出来ず、遂に俺の出番が回って来た。

 果たしてこの戦いは一体いくらの金を溶かし終結するのか。そして俺たちは一体何しに日本へ帰って来たのか。


「よしっ!」

「おおっ! 取れた! 凄い!」


 ジョニーと交代して僅か三回。俺の圧倒的スキルにより、ユーフォーキャッチャーに封印されていたピカチュウはあっという間に解放された。


「はい。どうぞ」

「センキュ~。ありがと~!」


 アームの強度、ストップ後の滑り、ぬいぐるみの重さ、重心の確認。そして障害物の移動と位置調整。これらの作業に二回ほど費やし、三度目で完全に持ち上げてのフィニッシュ。

 法女様とジョニーが多額の資金を注ぎ込んだお陰でアーム強度は強くなり、完璧と言える吊り上げを披露して華麗にピカチュウは法女様の手に渡った。そんな完璧な勝利だからこそ、法女様は一番おいしいところを持っていかれても機嫌を損ねることなく、嬉しそうな表情を見せた。それどころか流石アメリカンだけあって、感謝の印だろうが俺にハグをしてくれるほどで、ふんわり漂う超良い匂いに俺も満悦だった。


「ゲーム、上手だね?」

「そ、そうでもないですよ? た、たまたまですよ?」

「そうなの?」

「そ、そうです」

「でもありがと~」

「い、いえ……」


 どうやら法女様は、口が悪いのは英語の方だけのようで、さっきまであれだけファックを連発していたが、会話してみると普通の女の子という感じだった。


「じゃあ……次はアレをやりたい!」


 本当に普通の女の子のようで、法女様はまだまだ遊び足りないのか、今度はガンシューティングゲームを指さした。


 あれはヤバイ。ただでさえギャング並みに口が悪いのに、銃なんて持たせたらそれこそマジでヤバイ。それに法女様がファックファック連発していたせいで俺たちは既に相当目立っており、いくら予言では襲われることは無いと言っていても、もうこれ以上は色々と危険だった。


「あ、あの……法女様?」

「ラクリマで良いよ?」

「え……でも……」

「あ~……法女様って呼んだら誰かに分かるから、あ~……変装。私たちは友達だから。ユーノー……あ~……オーケー?」


 法女様は日本語が苦手だ。そして俺は英語が苦手だ。互いにその認識がある俺たちだから、法女様はわざわざ言葉を選んでくれたようだった。

 そんな気持ちが分かると、法女様は口はあれだが優しい人なのだと感じ、寧ろ俺の方が迷惑をかけているような気がした。しかしこのままいつまでも付き合っているわけにもいかず、ここは心を鬼にして、リリアたちを相手にしているつもりで先を急ぐことを伝えることにした。


「あの……ラクリマ」

「何?」

「ゲームは止めて、先ずは俺たちの家に行こう」

「なんで?」

「これ以上……こんなに長く……あ~……」


 これ以上ここに居たら危ない。そう伝えたいのだが、ラクリマがどれほど日本語を理解できるのか分からず、もっと簡単な言葉を探した。するとラクリマは直ぐに俺が何を考えているのか分かったようで、大丈夫だと伝えてくれたのだが……


「分かるよ? この場所に長い間いたらって伝えたいんでしょう?」

「え! あ、うん……ラクリマが日本語苦手だって聞いてたから……」

「あ~! それなら大丈夫。私日本語ペラペラだから」

「え?」


 今までは簡単な日本単語を使ったり、英語の発音が多かったからあまり得意じゃないと思っていたラクリマだったが、俺が遠慮しているのを察すると怒涛の日本語を連発してきた。


「何かごめんね? バイオレットが『私が日本語が苦手だ』って言うから、話しかけ辛かったんでしょう?」

「えっ……う、うん……」


 それはそうだけど……一番の理由はトレバーみたいだったからとは、言えない……


「でも大丈夫。日本語はアルカナで必要以上に教えられたから。だから寧ろ英語より日本語の方が得意だから、普通に話しかけても分かるから大丈夫だよ?」

「そ、そうなんだ……」

「うん。あ、だけど平仮名とカタカナは読めるけど、漢字はほとんど読めないから」

「そうなんだ?」

「うん。でも聞いたり話したりは普通にできるから、普通に話しても良いよ?」


 流暢な日本語は、日本人の俺から聞いても日本人の言葉だった。そして日本語はきちんとした人に教えられているだけあって、さっきまでファックファック言っていた人とは思えないほど優しい言葉遣いだった。


「それよりも、もう少し遊んでいこうよ?」

「え?」

「さっきバイオレットも言ってたでしょう? 私たちは襲われることないんだから、普通に観光してても大丈夫だよ?」

「え?」

「それにエドワード・アルバインだっけ? 君のおじいちゃん?」

「う、うん……」

「君のおじいちゃんに会っても意味ないよ?」

「ええっ⁉」

「だってここに居る全員、多分だけどもう加護印出てるもん」

『えっ⁉』


 超サラリととんでもない事を言ったラクリマに、俺たち全員驚きだった。


「えっ⁉ ちょっと待ってラクリマ⁉ 俺たちって、俺とリリアたちもって事⁉」

「うん」

「えっ⁉」


 そんなはずはなかった。フィリアとジョニーが加護印を発現させた事で、俺たちももしかしたらと思い必死になって自分の体を調べた。それこそ穴という穴まで調べたくらいで、リリアとヒーも互いに調べ合っても何も無かったと確信していたほどだった。

 確かにフィリア曰く、加護印は自分で出そうとしなければ表には出ないと言うが、それでも俺たちに加護印が発現しているとは到底思えなかった。


 そんな疑問に、ヒーが確認を取る。


「失礼ですが、それは本当なんですか法女様? 私たちはあの日以降、自分たちの体を調べました。ですが、フィリアの助言を受けて魔力を高めたり、加護印が発現したような感覚をいくら探しても、全く加護印を見つけられませんでした。大変申し訳ありませんが、法女様が仰っている事は事実では無いと思います」


 加護印は選ばれた者だけに発現する超エリートの証。そんな物がいくら英雄の子孫だからと言って、何の努力もしていない自分たち凡人に発現するはずはない。多分ヒーが法女様であるラクリマに失礼を承知で言ったのはそういう意味なのだろうが、ヒーの意見には俺も賛成だった。


「あ~……じゃあ、加護印分からない人ちょっと手を貸して?」


 ラクリマも、多分と言っていただけに少し自信が無いのか、ヒーの意見を聞くと俺たちに手を出すように指示をした。そしてヒーから調べるようで、先ずはヒーの手を握った。


「ん~……」

「…………」

「ん~……」

「…………」


 本当に分かるのか、ラクリマはヒーの手を握り唸り、首を触り唸り、頬を挟んで唸る。その間ヒーはされるがまま無表情で立ち尽くす。その表情はいつもだが無心で、ペタペタ体を触られても表情を変えないヒーは、ちょっと滑稽だった。


「ん~……」

「…………」

「ん……あっ! ん~……あったあった! ここにあるよ!」


 なんか色々ヒーの首から上をペタペタ触ったラクリマは、遂に見つけたのか、ヒーの頭の上をクリクリ撫でると、ここに加護印があると言う。


「頭の……上ですか……?」

「うん! ここ! 多分髪の毛で隠れてるから分かんなかったんだよ!」

「そ、そうなんですか?」

「うん! ここに魔力を集めるようにしてみて?」

「はい。……どうですか?」


 髪の毛に隠れている場所という盲点には驚いた。しかしヒーが加護印を発現させようといくら魔力を高めても、何の変化も見当たらない。


「出てるよ~」


 本当に~? 法女様ただヒーの頭撫でたいだけじゃないの?


 いくら髪の毛に隠れていると言われても、発現の光は全く見えない。それはヒー本人も自覚が無いようで、ラクリマの軽いノリのせいで余計に信用が無いのか、疑問を投げかける。


「失礼ですが法女様」

「今はラクリマって呼んで。他の人に知られたくないから」

「分かりました。ではラクリマ。失礼ですが、本当ですか? フィリアやジョニーは加護印を発現させると、その場所が熱くなると言っていました。ですが私はそれを感じません」


 フィリアは右前腕、ジョニーは左胸に加護印があり、発現させるとそこがカイロでも当てられたかのように熱くなると言っていた。その感覚がしないというヒーの言葉に、俺もまだ遊びたいがためにラクリマが嘘を言っているのでは無いかと思った。


「そりゃそうだよ。だって君は、生まれたときから多分持ってたから。それが当たり前だから分からなかったんだよ」

「本当ですか?」

「うん。だって今まで私が加護印の発現を感知したの十人だけだから」

「えっ⁉ ラクリマは加護印を発現させると分かるのですか?」

「うん。一応そういう力だから、初めて誰かが発現させると分かるの」


 さすが法女様。っというか、そうでなくてはあんなギャングみたいな言葉を使う人が法女になど成れない。ユーフォ―キャッチャーですっかり忘れていたが、ラクリマはああ見えて法女様であることを思い出すと、その言葉の信ぴょう性は物凄かった。


「だから私が知らなかったのは、そういう事。私これが分かるようになったのは四歳か五歳くらいの時だから」


 衝撃の事実に、全員驚きだった。しかしラクリマにとっては何も驚く事ではないようで、そのまま今度はリリアの事を調べ始めた。


「じゃあ次は君ね。君たち双子だから、多分同じ場所にあるよ……ほら」

「え? ……ほ、本当ですか?」

「うん。一個の卵から生まれる双子ってクローンみたいなものだから、同じ」

「そ、そうなんですか……?」

「うん。だから力入れてみて? そしたらはっきりするから」

「わ、分かりました」


 多分一卵性の双生児と言いたかったのだろうが、まさか加護印まで同じとは、加護印が良く分からなかった。遺伝的な物なの?


「うん。やっぱりそうだよ」

「本当ですか⁉」

「うん」

「おぉ! やり……」

「じゃあ次」

「うぅぅぅぅん……」


 まぁ一応俺たちは英雄の子孫だし、英雄になるためにキャメロットへ行った。そして今までそんなんでも無かったが、ここでやっと、それも姉妹で自分たちの才能が認められて喜ぶリリアだが、もうどうでも良いラクリマにあっさりスルーされたことで、リリアは空回りしたような声を出す。


 あれだ。ラクリマって本当にリリアみたいな性格だわ。多分もう早く遊びの続きやりたくて面倒になって来たんだ……


 ちょっとリリアが可哀想だったが、もう加護印なんてどうでもいいラクリマは、そんな事など気にもしないで俺を調べ始めた。


「ん~……」

「…………」

「ん~……」


 手を握ることからスタートしたラクリマは、肩を触り首を触る。


「ん~……」


 そして加護印の位置をより正確に知るためか、胸を触り腹を触る。そして首を傾げ、背中を触る。


「ん~……」

「…………」

「ん~……」


 あれ? これもしかして無いんじゃね?


 あるんだか無いんだか知らないが、ラクリマは言った手前『やっぱ君だけは無いわ』なんて言えないのか、俺をコマのように回しながら体中を触り、首を傾げるを繰り返す。


「ん~……」

「あ、あの……」

「あ、ちょっと待って。分かりづらいから」

「あ……すみません……」


 多分あるみたい。だけど薄いのか小さいのかは分からないが、俺の加護印はなんか分かり辛いらしく、ラクリマは頑張って探す。が、そのうちイライラしてきたのか、考えるように自分の首元を掻くと、突然俺の服を捲り直接肌を触りだした。


「あ……あの~……」

「ノゥッ! トーキング!」


 出たっ! ラクリマは多分クレア並みに短気なのか、自分の思い通りにいかない事態になるとイライラして英語が出るらしい。それでもファックが出ないだけましだと思い、これ以上ラクリマの機嫌が悪くならないよう心掛けた。そしていよいよ俺の加護印の場所が判明する。


「ん~……多分だけど、君の加護印は体の中にある」

「え? ……そんな事あるんですか?」

「ん~……知らない」


 知らない⁉ 


「だけど動いているから、多分心臓なのか、血なのか、多分そんな感じ」


 どんな感じ⁉


「オライ! 分かったからアレしよう!」

「えっ⁉」

「アレ! あのマシン!」


 俺たちにとっては重要な事なのだが、ラクリマからしてみれば初めから分かっていたのだからどうでも良いようで、もう話を切り上げて終わらせようとする。っというか、もうラクリマの中では終わっているようで、ガンシューティングゲームに向かい、珍しそうに銃を手にしていた。


 その姿は無垢そのもので、小さな子供が初めて触るように瞳を輝かせているのを見ると、俺たちはもうそれ以上何も言えなかった。


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