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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
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試練と旅立ち

 襲撃を受けた事で行き詰っていた俺たち。そんな俺たちに救いの手を差し伸べるかのように法女様が訪れた事で、何とか俺たちは当初の目的を果たす機会を得た。

 

「皆さん、全員無事で良かったです。大変でしたね」


 法女様もあの場にいて、相当怖い思いをしたはずだが、やはり法女という大変な職に就くだけあって、あんな思いをしても平然としている。それこそ言葉からは『あれくらいは大したことは無い』という器の大きさがして、恐怖の後の安堵で未だに椅子から立ち上がれない俺たちとは違いピンピンしている法女様は、とても同じくらいの年齢とは思えなかった。


「さて、貴方たちが私の元を訪れた理由は、分かっています。そして私もそれを予言し、貴方たちに伝える準備が出来ています。貴方たちは準備が出来ていますか?」


 法女様があんな事があったのにも関わらず、中断をせず俺たちの元を訪れたのは、既に俺たちが何のために訪れたのかを予言済みだったようで、直ぐに本題に入った。

 これには驚きを感じ、あの襲撃すらも分かっていて試練として俺たちに与えたのだと思うと、法女様の底知れない実力に恐れ入った。


 そんな法女様は、まるでゲームにでも出てくる女神のようで、無駄など一切なく、有無を言わさず俺たちに進むべき道を指し示す。


「これより貴方たちは、ジャンヌ・シャルパンティエ、エドワード・アルバインの、おっ……お、お……」


 そこまで言うと法女様はどうしたのか、突然言葉を詰まらせた。すると法女様の付き人みたいな、ちょっと年上の女性が後ろから法女様に何か耳打ちした。


「もと?」

「……元……れ……しょ……」

「ヤーヤー……」


 コソコソ話をしているのだが、僅かに聞き取れた声は何かを確認するかのようで、何故法女様が付き人みたいな人に聞いているのか不思議だった。しかし確認が終わると何事も無かったように法女様は話を続けた。


「元を訪れ、話をしなければいけません」


 ?


 話が途中で切れ、中途半端に戻ったことで俺たちは一瞬眉を顰めた。


「そして、話を聞かなければいけません」


 おそらく聖職者として普段から固い言葉を使っているからなのだろうが、法女様の言葉には違和感がした。それこそ外国人が片言を喋っているようで、俺には上手く理解できなかった。


「だけど、それは……」


 ここまで言うと、また法女様は言葉を詰まらせた。そして今度は法女様から付き人の女性に何か耳打ちをした。


「ごにょごにょ……」

「ごにょごにょ……」


 今度のはかなり小声で全く何を言っているのかは聞き取れなかったが、相当込み入った話らしくしばらく二人は早口で何かを話し合っていた。そして話が終わると、何故か付き人の女性が話し始めた。


「皆さん、法女様はあまり日本語がお上手ではありません。ですので、ここからは私が詳細をご説明致します」


 あ……そういう事?


 クレアやエリック、アドラたちでさえ日本人じゃないのに日本語が上手かったから、これには納得だった。寧ろアドラたちが異常だったと思うほどで、また一つ謎が深まった。


 しかしこれでようやく話が分かりやすくなり、自分たちがやるべきことを理解しやすくなった。


「皆さま方にはこれより、前英雄である、ジャンヌ・シャルパンティエ様とエドワード・アルバイン様の元を訪れ、加護印や聖刻についてのご助言を受け賜わって頂きます」


 家のじいちゃんと、シャルパンティエという名からおそらくクレアのおばあちゃんだと思うが、その二人からアドバイスを貰えという指示には、それほど驚かなかった。っというか、家のじいちゃんに会って話を聞いても大した役に立つとは思えず、違う意味で驚いた。

 しかしここで口を挟むわけにもいかず、とりあえず話を最後まで聞こうと思った。


「ですがこれには、獲得と確認を行う必要があり、二つのグループに分かれて同時に進行して頂きます」


 獲得と確認?


 おそらく獲得は誰かが加護印を発現させるという意味だろうが、確認に対しては何を確認するのか全く分からなかった。そして二手に分かれて同時に行うという説明に、なんか面倒臭さを感じた。


 そんな疑問をクレアがぶつける。


「一つ良いですか?」

「どうぞ」

「二つのグループというのは、私の祖母と、リーパー・アルバインの祖父であるエドワード・アルバイン殿の元を、別グループで訪れるという事ですか?」

「そうです」

「つまりフランスの祖母の元は私が、日本のエドワード殿の元へはリーパーがリーダーとしてという意味ですか?」

「そうです。しかしメンバーは予言により既に決まっています」


 なんとっ⁉ 


 まさかそこまで決まっているとは、法女様の予言の力には驚きだった。


「フランスへは、クレア・シャルパンティエ、キリア・レオンハルト、エリック・ポロヴェロージ、スクーピー・ポロヴェロージ、アドラ・メドゥエイーク、パオラ・メドゥエイークの六名。日本へは、リーパー・アルバイン、理利愛・ブレハート、妃美華・ブレハート、フィリア・ライハート、ジョニー・ライハート五名と、法女であるラクリマ・ジブリール・ミハエルとその警護として私が同行致します」

「⁉」


 何故法女様が俺たちに同行するのか謎だった。そしてなんだかんだ言っても、結局日本から来た俺たちが全く同じメンバーであり、今更じいちゃんに話を聞きに行くというのは、とても意味があるとは思えなかった。

 だが予言である以上必ずそこには意味があるはずで、疑問を抱いていても誰もこの指示には質問さえする事も無く、話は続く。


「そして日時ですが、明日、日の出と共に出発して頂きます」

『えっ⁉』

「ちょっ! ちょっと待ってください! まだ私たちは誰に何の目的で命を狙われているのかさえ分かっていないんですよ⁉ 今の状態で私たちがそのような事をすれば、いつ誰が命を失うのか分かりませんよ⁉」


 あまりの無茶ぶりに、さすがのフィリアも慌てて意見する。


「それが試練です。護衛は付きますが、彼らは身を顰め監視します。貴方たちは自らの考えで行動し、目的を達成してください。それが叶わなければ、貴方たちは加護印を得ることは無いという事です」

「⁉」


 俺たちは法女様どころか、アルカナに何を聞きに行くのか伝えていない。それが今、付き人の人だが、彼女の口から俺たちの目的を告げられたことで、法女様の力は本物だと思った。するとさっきの襲撃や、この状態での出発などの理不尽な出来事は全て定められたものだったのだと感じると、試練という言葉に嘘は無いのだと痛感した。


「さぁ皆さん、どう致しますか? 法女様の予言は未来を変えることが出来ないほどのお力です。ですが、英雄の子孫である貴方たちなら、未来を変える可能性は十分にあると法女様は仰っていられました。決断まではまだ時間は十分あります。どうぞお考え下さい」


 予言はされているが、未来を変えられる可能性がある俺たちが判断する。この時初めて、アニー先生が口を酸っぱくして言っていたあの言葉の意味を理解した。

 

 “自分たちで考えて判断する”


 先生の教えは正しかった。俺たちはそれほど重要な人材で、その決断は世界の命運さえ握る。今まで超優遇されて、最後はどうせ違う人が英雄になって良い思い出で終わると思っていたが、命を狙われた事や迫られる決断に、俺は……いや、俺たちはここでようやく、英雄の子孫として自分たちの役目と重責を思い知ることになった。

 また休載します。

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