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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
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知らない世界

 突然起きた襲撃事件。しばらく俺たちは何が自分たちの身に起きたのか理解できず困惑していた。しかし時間が経つと共に理解し始め、説明を受けた事で何が起きたのかをやっと理解した。


 あの時、法女様が叫んだ相手は、どうやら俺たちを狙っていたようで、正体がバレた事で暴挙に出たのではないかという。それに他にも仲間がいて全部で四人いたらしい。そしてあの時窮地に陥り逃走を図ったことであんな事態になったらしい。ちなみに四名全員はその場で殺されたという。


 護衛には数名の負傷者が出たようだが、俺たちには怪我人はなく。法女様も無事だった。というのも、あの時アドラが咄嗟に魔法を撃とうとしている手を切り落した事が大きいらしく、その後もアドラ、パオラ、フィオラさんがいち早く二名を無力化した事が功を奏したらしい。

 ただ、何故俺たちが狙われていたのか、あの時何故アドラが大剣を持っていたのか、何故アドラたちが護衛の人よりも早く反応できたのかはまだ聞けないくらい動揺しており、俺たちは完全に落ち着きを取り戻してはいなかった。それどころか、とても法女様と話が出来るような状態じゃなく、俺たちはそれすら忘れて事件の真相が知りたかった。


「現在キャメロットへ確認を取っている状態です。こちらでは彼らの情報は渡されていますが、審査を通り派遣されている以上キャメロットからの連絡が無ければ何とも言えません」

「分かりました」


 こんな想像もしない事態に未だに落ち着かない俺たちに変わり、フィオラさんがアルカナの責任者から話を聞く。


「彼らが所属する組織や、目的については何か分かりませんか?」

「現在調査中です」

「そうですか……」


 キャメロットから付いてきた護衛の人だけに、フィオラさんが尋ねてもアルカナの人が分かるはずが無い。それは分かっていても、俺たちはそれが知りたかった。


「ただ、あのような状況でも、迷わず子孫である皆さま方を狙ったことから、彼らの目的は法女様では無い可能性があります」

「それは間違いないと思います。彼らは攻撃をする際、最も近くにいた私ではなく、被害範囲が広くなる中央を狙っていました。そのことから彼らは余程動揺していたと思われ、あの攻撃は咄嗟の判断だったと思われます」


 フィオラさんは、アドラの右側に座っていた。そして攻撃してきた人物は、フィオラさんの左斜め四十五度くらいの位置に立っていた。


 フィオラさんは、アドラたちのお姉さんで、俺たちと同じくらい聖刻を与えられる可能性が高い。もし彼らが英雄を潰す目的でいたのなら、あの場面では最も暗殺できる可能性が高いフィオラさんを狙うのが普通だろう。そう考えると、怪我は負わせても殺せる可能性が低くなる全体攻撃は効率が悪い。それに、あれが本当に咄嗟の判断なら、法女様でなく俺たちを狙ったことから、狙いは最初から俺たちだったのだろう。


 フィオラさんの言う通り、彼らが俺たちを狙っていたというのは間違いないと思った。


「それについてですが……大変失礼な事を申し上げてしまいますが、お許しください」

「構いません。続けて下さい」

「はい。メデゥエイーク家の家系は黄泉返りだと存じ上げています。当然彼らもそれは周知しているはずです。そんな彼らがメデゥエイーク家の者を狙うとは考えにくく、あの場面では英断だと感じました」


 あんな状況でも一早く対応できた能力には確かに驚いた。だがアルカナの警備責任者が英断とまで言った事にはそれ以上に驚き、黄泉返りがどれほどの力を持っているのか恐ろしくなった。


「ですが、彼らが無差別に狙ったという事実から、フィオラさんの考察は正しいと思います。そちら側では何か心当たりはありませんか?」

「……強いて言うなら、メデゥエイーク家に問題があるのかもしれません」

「メデゥエイーク家ですか?」

「はい。黄泉返りであるメデゥエイーク家は、頻繁に襲撃があります」


 えっ⁉ 襲撃⁉


 まるで漫画の中のような話に、耳を疑った。しかしフィオラさんは大真面目だったようで、非情な現実を語りだす。


「それは御存知かもしれませんが、魔王と同類、または魔王崇拝者であると思われているからです」


 魔王崇拝者⁉ それって……


「他にも、異形な種として虐げる者もいますし、表には出ていませんが未だに悪魔狩りや魔女狩りなどの名目で正義を主張する者もいます。そんなメデゥエイーク家ですから、いくらでも敵はいます。もしかすると私たちに原因があるのかもしれません」


 黄泉返りもそうだが、世界には多くの差別が存在する。特に魔女狩りや悪魔狩りは、世界では撲滅へ向けてかなり進んだ。しかし日本でさえ未だに差別用語を使う人もいて、犯罪者と同じくらい嫌う人が多い。

 

 今までリリアたちが高魔族であっても差別を感じたことは無く、アドラたちが黄泉返りだと知っても偏見や差別は感じていなかった俺は、フィオラさんの話に大きな衝撃を受けた。

 

 これを聞いて、室内には重たい空気が流れた。そして話の信ぴょう性から原因はメデゥエイーク家にあったのではないかという疑惑が生まれた。しかしこれを警備責任者は否定する。


「その可能性は低いと思います。仮に彼らが悪魔狩りを目的としていたのなら、あのような状況でも攻撃の選択はしないはずです。彼らが例え戦闘のプロであっても、黄泉返りの能力の高さから、情報漏洩を恐れて即座に自決を選ぶはずです。実際彼らの奥歯から致死性の毒物カプセルも見つかっていますし、彼らは最後までそれを使用していません。その点から、こちらではメデゥエイーク家に問題があるとは認識しておりませんので、メデゥエイーク家のご子息は気に病まないで下さい」

「ありがとうございます……そう言って頂けるとこちらも楽になります」


 内容は衝撃的な物だったが、自分たちに責任があると気に病んでいたフィオラさんの優しさに、一時だが疑った自分が情けなかった。


「とにかく、今は何も分かっていない状況ですので、憶測や考察などで状況を判断せずにいて下さい。警備の方は私どもで万全を期しますので、皆様方はご自身のやるべきことだけに集中して下さい。それが先の未来に繋がります」


 あんないきなりの状況。アルカナの方でも全く何が起きているのか分からない状態なのだろう。全く不安は拭えないが、それが分かると今俺たちがどうこう考えても意味が無いのだと理解した。

 

 その後しばらく俺たちは頭の整理が付かず、ただ怯えながらしんみりとした空気の中その場で待機をさせられた。それは二時間以上続き、何とか皆は落ち着きを取り戻したが、この先どうすればいいのか、何故俺たちは狙われたのかなどの想いが混じり、何もできなかった。


 そんな時間を終わらせたのは、まさかの法女様だった。


 法女様もあの場で襲撃を受けた一人だったのだが、さすがは神聖なる法皇様の娘だけあってこれくらいではへこたれないようで、こんな状態なのにわざわざ向こうから話をしたいと言って来てくれた。


 これには、狼狽する俺たちは吉報となった。未来を見通す力がある法女様なら、この先俺たちがどうすれば教えてくれる。既にお先真っ暗となった俺たちは、藁をもつかむ思いで承諾した。


 これにより俺たちはやっと法女様との面会に辿り着き、当初の目的を果たすことになる。だが、俺たちの未来はそうそう簡単に開かれるものではないようで、法女様のお告げにより更なる困難へと突き進むことになる。


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