表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
28/160

エドワード・アルバインという男

「リーパー・アルバイン! お前が鍵なんだ! 何か祖父から聞いてないのか!」

「ええっ⁉」


 魔人出現の可能性が高まり、急遽開かれたクラス会議。そこで先ずは俺たち全員の加護印の発現が目標として掲げられたが、それを発現させるためにはどうしたら良いのかという話になった。そして気付けば何故か俺が全部知っているみたいな展開になり、超面倒臭い事になり始めた。


「私も祖母から聞いたことがあります! リーパーさんの祖父のエドワード・アルバインさんは、英雄の中で唯一何故聖刻を与えられたのかは分からない人物だったと!」

 

 エリーック! それは完全にバカにしてるよ! 


「しかし祖母はこうも言っていました。エドワード・アルバインさんだからこそアズ神様はお選びになり、私たちは魔王を倒せたとも!」

「そうだ! それは俺も祖父から聞いた! 『あいつは一番弱いはずなのに、一番強かった』とも!」


 キリアー! それも完全に見下してるよ! お前ら何人んちのじいちゃんバカにしてんだよ!


 突然のじいちゃんいじめに、なんだかとても不快だった。しかし言っていることは事実だったようで、次々じいちゃんの良くない話が出てくる。


「そうだった! 私も思い出したぞ!」


 いやもう思い出さなくていいよ! クレアも何揚げ足見つけたみたいに盛り上がってんだよ!


「彼は凡人だったと!」


 バカにし過ぎだろ! 一応英雄だぞ! 何? もしかしてじいちゃんって嫌われてたの⁉


「だが彼以上に英雄に相応しい人物はいないとも言っていた! 剣も魔法も才能が無く、頭も良くない。しかしいつもいい加減でだらしなく、私たちは助けられたと!」


 しかしの使い方おかしくね⁉ 何も褒めてねぇじゃん⁉ ただ悪い事を追加しただけじゃねぇかよ⁉


 おそろしく卑怯ないじめだった。それこそちょっと泣きそうなくらいだった。それでも彼女たちにとっては希望の光のようで、まだまだ続く。


「アドラ! パオラ! お前たちは何か聞いていないのか? エドワード・アルバインについて」

「え? ……う~……ん」

「エドワード……エドワード……う~ん……あっ!」


 思い出すんじゃねぇよパオラ! パオラ落ち着け! 今お前はいじめに加担しようとしてるんだ! お前はそんな奴じゃないはずだろ!


「言ってた!」

「何と言っていた!」

「あいつは駄目だって!」


 なろー! オメーんちの祖父母許さん!


「でも強かったって言ってた。なんかもう人間じゃなかったらしいよ?」

「あ~、そんな事言ってた。本気になったら全員殺せたらしいぞ?」

「だよね~アドラ? 言ってたよね?」

「あぁ、言ってた」


 それも褒めてねぇから! ただのヤバイ奴だから!


 なんかとても悔しい気分に、泣きそうだった。そんな俺の気持ちを察したのか、リリアが“大丈夫?”という感じで優しく俺の袖を引っ張った。


 誰のせいでこうなったと思ってんだ! そんな目すんなよ! オメーに悪気が無かったのは分かったから!


 リリアが引くくらいの盛り上がりに、国際チームと日本チームの間には温度差が生まれた。それでも加護印の発現に最も有力な情報を得なければいけないクレアたちは、俺の気など知る由もなく頑張る。


「あ、あの……」

「なんだアルバイン! 何か思い出したのか⁉」

「い、いや……それよりもさ、加護印の出し方について話した方がいいんじゃないかな~……?」


 我慢の限界だった。これ以上じいちゃんの悪口を聞いていれば、俺の涙腺が崩壊するのは時間の問題だった。そんな俺の気持ちを察したのか、フィリアたちも加勢する。


「そ、そうですね! リーパーの言う通りです! これ以上時間を費やすわけにはいきません!」

「そうです! 何か良い案を考えましょう!」

「そうだな。その方が良い」

「そ、そうです! 時は金なりです! こんなことしてないで早く加護印に付いて話しましょう!」


 フィリアとヒーは本当に優しい。それに比べジョニーとリリアは、何気にこれ以上俺をいじめるのは良くない的な言葉を発する。


 何がその方が良いだ! 何がこんなことだ! お前らも何気にじいちゃんバカにしてんだろ!


 もう三年一組が嫌いだった。それなのにまだクレアはいじめ足りないのか、まさかの提案をする。


「そうだったな。しかしだ、これで大分話がまとまったな」

「はい」


 何が⁉ 何がまとまったの⁉ 


 何を根拠としてそう言ったのか謎だった。それでも国際チーム側ではまとまっていたらしく、外国人たちは納得したように頷く。


 許さんぞ外国人ども! 他人のじいちゃんを蔑むのが国際社会のやり方か!


 許されざる発言だった。そしてそれに頷くエリックやパオラ達も裏切者だった。


「よし! それでは皆! エドワード・アルバイン殿に会いに行くぞ!」

「ちょっと待ってっ⁉ じいちゃんに会ったって何も分かんないぞ!」

「何を言っているアルバイン? 今の話を聞いていなかったのか? これだけ皆がエドワード・アルバイン殿を頼るよう言われているんだ。会いに行かない理由は無い」


 今までの会話のどこにその要素があるのかは分からないが、クレアたちはこれこそが正解だと言わんばかりに否定する。


「いやだってよ……もしそうなら俺とっくに加護印出てるし……」

「う……」


 これにはクレアたちは、そりゃそうだという表情を見せた。


「それによ。クレアたちにだって元英雄のじいちゃんとかばあちゃんいるんだろ? ならわざわざ人んちのじいちゃんに話聞くより、自分ちのじいちゃんとかに話聞いた方が早くね? 聖刻だってそれぞれ違うんだし……」

「…………」


 俺の正論はあまりにも正論過ぎたのか、さっきまでさんざんじいちゃんをバカにしていたクレアたちは、黙りこくった。


「し、しかし……」

「あぁ……」

「それは……」


 余程自分ちのじいちゃんやばあちゃんは頼りにならないのか、三貴族揃って口籠る。ただアドラとパオラとスクーピーはこの会話の内容をよく理解していないようで、ん? っという感じで首を傾げていた。


 そこへ、やはりこういう時は突破口を開く才能があるリリアが、良い事を言う。


「じゃあ、リーパーのおじいちゃんよりも、もっと加護印とかに詳しい人に聞いてみるのはどうですか?」

「詳しい人?」

「はい。アニー先生とか?」

「おぉ!」


 流石リリアだと思った。確かに俺たちに魔王や聖刻について教えてくれる先生なら、間違いなく良い答えを教えてくれる。そう思っていると、さすがはクレア、率先して先生に質問する。


「アニー先生!」

「はい、なんでしょうか?」

「アニー先生は、加護印を発現させる方法を知っていますか?」

「はい」

『おおっ!』


 笑顔で答える先生は、やっぱり凄かった。


「ではそれを教えてもらえますか?」

「構いませんよ」

『おおっ!』


 頼りになる先生の登場に、教室内には歓喜のどよめきが起こる。


「ですが、私が知っているのは、アルカナ聖堂院で行われている方法です。それでもよろしいですか?」

「構いません! 教えて下さい!」

「分かりました」


 アルカナ聖堂院とは、なんか物凄い神聖な聖堂院らしく、そこでは現在世界でフィリアたちを含め十三人しかいない加護印を発動させた人物の内、七人が在籍するという何か物凄い場所らしい。


「私が知るのは、千日修行と呼ばれる方法です」

「千日修行ですか?」

「はい。千日間、毎日同じ時間に起床し、同じ時間に祈りを捧げ、同じ時間礼拝堂を巡礼して歩き、同じ時間瞑想し、同じ時間に同じ場所で眠るというものです。さらに毎日同じ時間に同じものを食べ、毎日飲む水分量も決められており、一日のルーティンを崩してはならず、当然一日たりとも休むことは許されないというものです」

「…………」


 あまりにも過酷な条件に、聞いてはみたものの誰も声を発しなかった。


「さらに付け加えれば、この千日修行は、三年間の見習い期間を終え、二年間の修行、そこからさらに三年間僧として従事しなければ、千日修行を行える許可がもらえません」

「そ、そうですか……ありがとうございました、先生……」

「いえ。お役に立てたのなら光栄です」


 絶対無理―! そんなに待ってたら人類滅んでるよ!


 過酷さもそうだが、時間的にも無理な条件に、一気に俺たちのテンションは下がった。っというか、既に加護印を持っている人が七人もいるんだから、その人たちに任せた方が遥かに早いと思い、やる気自体が無くなった。


「ど、どうする……皆……?」

「…………」


 これで三年一組の出番は終わった。そう思った。しかしリリアは突破口の神様にでも愛されているのか、さらに突破口を開く。


「そ、そうです! 法女様です! 法女様に聞きに行きましょう!」

「法女様? 法女様に何聞くんだよ? 法女様って加護印持ってんのかよ?」

「いえ、そうじゃありません! 法女様って未来が見えるとかいうじゃないですか! だから!」

「だから?」

「だから見てもらうんですよ! 私たちが加護印を出せるかどうか!」


 完全に運任せ! もうほとんど占いに近い案だった。それでも何年も修行してから千日間地獄の修行をするのに比べれば容易く、完全に行き詰っていたクレアたちは“こいつは天才か⁉”的な表情を浮かべ食いついた。


「それだリリア! もうそれしかない! もしそれが可能なら私たちは無駄な努力をしなくても済むぞ!」

「そうだ! その手があった! これなら俺たちでも希望が持てる!」

「流石リリアさんです! クレアさん! 早速先生に言って手配してもらいましょう!」

「ああ! 先生!」


 クレア、キリア、エリック。この三人は思っていたよりもダメ人間だったようで、クレアに関してはサラリと無駄な努力と言ったあたりに、なんか親しみを覚えた。そしてその勢いは凄まじく、完全に考える事を放棄した彼女たちの行動力により、後日俺たちは法女様の元を訪れる事となった。

 ここでまた休載します。今度はゆっくり行きますので、暫くお待ちください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ