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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
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同じ先生

 昼食を終え午後の授業。今回も前回同様、午後からは先生との対決と思っていたが、さすがにアニメのようなそんなハチャメチャな授業にはならず、俺は午前中と同じ先生の元、フラヴィ王子と共に基礎的な授業を受けていた。


「…………」


 午後からの授業は、三人で輪になり座り、手をつなぎ合って瞑想をするように静かに集中するというものだった。


 これは、先生が俺の体内に魔力を流し、それを受け取った俺がフラヴィ王子に流すという医療的な訓練で、三人の間で魔力を流し続けることでより魔力の流れを体感できる。そのうえ一度受け取るというか、先生が流してくれることで流道も良くなり、両腕間だが、かなり魔力の扱いが楽になるらしい。何より、先生とフラヴィ王子と手をつなげるという効果は絶大で、精神的にも多大な恩恵を受けていた。


「では流れを逆転させます。次はフラヴィ王子からリーパーさんに流して下さい」

「はい」


 先生の指示で、今度はフラヴィ王子が俺に魔力を流す。すると再び温かい何かが右手から左手に掛けてゆっくりと抜ける。


「どうですかリーパーさん。どこか熱を帯びる場所はありますか?」

「はい。両腕の肘と、左手の手首が少し熱く感じます」

「問題ありませんか?」

「はい。温かいと感じる程度です」

「分かりました。では続けます」

「はい」


 魔力は生命エネルギーと言われるだけあって、誰かに流し込まれると温かさを感じるのが普通らしい。そして魔力は流れの悪い所や体の悪い所に熱を帯びるらしく、その度合いでどの程度悪いかが分かるらしい。そのため今俺が温かさを感じた場所は、流れの悪い肘と、しょっちゅう腱鞘炎になる手首だった。

 しかし程よい温かさは寧ろ気持ち良いくらいで、返事を聞くと先生はそのまま続ける。


 両腕間を流れる温かい魔力、心静かな時間、そして先生とフラヴィ王子の温かい手。まるでヨガのようなセラピーのような何というか、とにかく至福の時間は最高で、なんかもうあっという間に時間が過ぎた。それは想像以上に早く、気付けばあっという間にニ十分という時間が過ぎていた。


「それでは一度休憩しましょう」

「はい」


 とても時間が過ぎるのが早く感じた。周りを見ればリリアたちの班とフィリアたちの班はまだ立ったまま先生の話を聞いており、全く時間が過ぎていないと思うほどだった。


「どうですか、アルバインさん? 慣れましたか?」


 休憩に入ると、先生は次の準備でもあるのか席を外した。残された俺たちは二人きりとなり、なんかちょっと良い感じになった。


「はい。フラヴィ王子のお陰で、なんか一気に魔法使いに成れた気分です」

「フフフッ。それはアルバインさんのお力ですよ。私はアルバインさんと同じ生徒ですから、私の力など関係ありませんよ?」

「そんなことはありませんよ。だって俺、日本での魔法の成績は一番悪かったんですよ?」

「ウフフフッ。それはこの眼鏡のお陰ですよ」

「それは確かにあります。でもやっぱりフラヴィ王子が、手の匂いを嗅がせてくれたり、鼓動を感じるように教えてくれたり、一生懸命に教えてくれたお陰ですよ」

「フフフッ。ありがとうございます。私も無礼にもアルバインさんに何度も触れてしまい、大変恐縮していたので、そう言って頂けると大変有難いです」

「いえいえ。それが良かったみたいです。やっぱり触れ合う事が大切なんだと知りました」

「そうですか?」

「はい」

「では、これからも気兼ねなく触れさせて頂きます。アルバインさんが上達するために」

「はい。どんどん触って下さい」


 あれれ? もしかしてフラヴィ王子俺の事好きになったんじゃないの? 俺はもう好きだから問題ないけど?


 笑うとき、手で軽く口を隠すようなフラヴィ王子の素振りは、とても上品で美しい。そのうえ謙虚でおしとやかで、ちょっと気のある冗談まで言える性格は、まるで絵に描いたような王女様だった。 

 そんなフラヴィ王子とこうして二人きりで、それも良い感じで話せるとは、英雄の子孫というのもなかなか悪いものではなかったと思った。ところが……


『おおっ!』


 折角良い感じでフラヴィ王子と話していると、なんかリリアたちの班で事件でもあったのか、驚くような声が聞こえて来た。

 その声は歓声のようで、フィリア班まで視線を送る程大きく、結構野次馬根性があったフラヴィ王子は立ち上がってしまい、折角の良い雰囲気を持っていかれた。


「何かあったのでしょうか? 休憩中ですので少し覗きに行ってみましょうか、アルバインさん?」

「え? ……えぇ」


 本当ならここから、『もう一回魔力を感じたい』とか言ってフラヴィ王子の手を触ったり『握った方が良いんじゃないですか?』とか言って手を握ったり、『フラヴィ王子のほっぺはスクーピーみたいですね?』とか言ってほっぺ触ったり……色々あるはずだったのに、誰だか知らんが余計な事をしたせいで、まだ諦めるわけにはいかない俺はフラヴィ王子から離れるわけにはいかず、付いていくことになった。


 そんな感じで付いていくと、特段変わった事があるようには見えず、ただパオラが右手に炎、左手に電撃を纏っているだけだった。


「流石パオラ様。これほどとは……」


 何が凄いのかは分からないが、フラヴィ王子は目を丸くしたように驚く。その眼差しは羨望に近く、とても声を掛けづらい状態に、何を驚いているのかヒーに尋ねた。


「ヒー? 何をそんなに驚いてんだ?」

「あ、リーパー。あれを見て下さい! パオラが両手で異なる魔法を発現させてます!」


 一度に複数の魔法を発動させるのは、相当難しいとは聞いたことがあった。しかし俺がお知えられた先生は、『オナラとくしゃみを同時にする』とか訳の分からん例えを使っていて、確かにそれは同時にしたら大変だとは思っていたが、結局よう分からんかった。


「それって凄いのか?」

「はい! あれが出来れば、二属性を混ぜ合わせ、特殊な術や新たな術を生み出せます!」

「そ、そうなんだ……」

「はい!」


 なんか凄い技術であるのは何となく分かった。だがそれがどれほど凄い事なのかはピンと来なかった。そんな俺の心中を察したのか、話を聞いていたエリックが例える。


「リーパーさん。あれは大谷翔平選手と同じくらい凄い事なんですよ?」

「え? 大谷?」

「はい。ベーブルースが百年以上前に打ち立てた、二ケタ勝利二ケタ本塁打を達成するような物なんですよ!」

「ふ、二ケタ? 本塁打?」

「はい!」


 エリックが言わんとしていることは何となく分かる。俺だって北海道人だからファイターズ応援してたし、大騒ぎしてたから大谷翔平選手の活躍は知ってる。だけど野球はパワプロくらいでしか知らないから、その例えだと良く分からなかった。

 そこへ、それでもまだピンと来てない俺に気付いたリリアが、分かりやすい例えを出してくれる。


「リーパー! あれはブルーアイズとレッドアイズとブラックマジシャンを生贄にして出すモンスターに、究極完全体グレートモスとカオスソルジャーをパワーボンドで融合して、ホルアクティで三回攻撃するぐらい凄い事なんですよ!」

「マジでかっ!」


 結局ホルアクティでしか攻撃してないが、なんか物凄い条件をクリアしているという説明に、ここで初めてパオラの物凄さを知った。


「えっ⁉ じゃあパオラって賢者なの⁉」


 賢者とは、なんか魔法の凄い人の事。


「いえ! 賢者ではありません!」


 ちげぇのかよ! そこは賢者で良くね⁉


 物凄い事は物凄いらしいが、賢者ではないようで、リリアはテンションの高いまま普通に否定する。


「じゃあパオラってどれくらい凄いんだ⁉」

「パックを買ったら全部プリシク引くくらい凄い事をしています!」

「マジかっ! じゃあパオラに遊戯王買って貰ったら全部プリシク入ってるのか⁉」

「いえ! それは違います! 今パオラがやっていることはそれだけ凄いという事です!」

「マジかっ⁉」


 パオラがプリシクを引けない事も、全部プリシク引くくらい凄い事をしている事も、リリアが普通に否定した事も、色々含めて驚愕だった。


「でもお前も魔法得意だから、同じことできるんじゃないのか⁉」

「無理です! もし私が同じことをやろうとすれば、ウンコを漏らしてしまいます!」

「マジでかっ⁉」


 こいつもあの先生に教えられたのかよ⁉ 俺と同じで悪いとこばっかり覚えてる⁉


 まさか小学校の時の魔法の先生が同じだったという事実に、またまた驚愕だった。


「じゃあよ! なんでパオラはそんな事できんだ⁉」

「それはパオラが凄いからです!」

「凄いって、実はパオラは本当は頭が良くって、実は物凄い努力家って事か⁉」

「いえ違います! それは……」


 その後、パオラの凄さに授業は急遽パオラ一色になるという展開を迎え、俺はフラヴィ王子との淡い時間を失った。そして授業が終わってパオラにあの凄い魔法に付いて話を聞くと、『気付いたら出来てたから良く分かんない』という答えが返って来て、結局俺たちはパオラの謎については全く分からないままで、なんだか色々訳の分からないまま魔法の授業は終了した。


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