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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
三章
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更なる飛躍

 フラヴィ王子の助力もあり、何とか基礎的な感覚を掴んだ俺は、その後もフラヴィ王子と先生の誘惑に耐えながらもなんとか午前の授業を終えた。この頃には天性の才能を持つスクーピーも俺と同じくらい魔力のコントロールを身に着け、ヒエラルキー最下層のスクーピー班は、飛躍的な進歩を見せた。しかしその代償としてスクーピーは力尽き、昼食を終える頃には今回も無念のリタイアとなった。


 そんなスクーピーを欠いた俺たちだったが、いつもと変わらず午後の授業までの時間を、雑談しながら過ごしていた。


「リーパー、だいぶ魔力のコントロールが上手になりましたね?」

「そうだろ?」

「えぇ」


 今回魔法の授業ではトップフォーに入るリリアは、俺が命がけで習得した魔力コントロールを見て、褒めてくれた。ちなみに後三人は、パオラ、エリック、ヒー。


「しかしまだまだですね。今の状態を普段から出来なければダメなんですよ?」

「それ先生も言ってた。でもめちゃくちゃ難しいぞ? 今のでさえかなり集中して出来てるのに、それを常には無理だわ」


 常に魔力をコントロールし、無意識でも緩やかな状態にするのが基本らしい。それが出来なければ、仮に魔力を一点に集中させることが出来たとしても、穴の開いた風船のように空気が抜けるだけで、ただ寿命を縮めるだけになるらしい。しかしリリアたちでさえ眼鏡を掛けるまでは出っぱなしだったうえに、ちょっとでも気を緩めれば直ぐに元に戻り、魔法が何故習得するのが難しいと言われるのかが良く分かった。


「魔力のコントロールは自転車に乗る感覚と同じと言われるので、一度コツを掴めばすぐにできるようになりますよ?」

「それもフラヴィ王子が言ってた。けどそれとはちょっと違くねヒー?」

「そうです。正確には癖になるまでが正しいと思います」

「だろ?」

「はい。ですが、一度癖にしてしまえば、それこそ箸を扱うのと同じような感覚になるので、頑張って下さい」

「そうなの?」

「はい」


 ヒーが言えば、それが正しいと感じる。だが二人は幼い頃からおばさんの影響で魔法には触れているし魔力自体が多い人間で、出来て当たり前が普通だったから、多分本当は三か月くらい掛かるのだろう。

 だって俺、未だに箸のきちんとした持ち方できないもん!

 

 そんなリリアたちとは違い、普通の人間で、基礎から鍛錬を積んで来たジョニーがアドバイスをくれる。


「だがリーパーは全く魔力を感じた事が無かったのだろう?」

「あぁ。あの眼鏡なけりゃ多分まだ何もできてないと思う」

「あれは凄いからな」

「あぁ」


 あの眼鏡はマジで凄い。なんか最近出来た新しい技術の眼鏡らしいのだが、やっぱキャメロットは凄い。


「それでも全くの素人からいきなりそこまで上達するのは凄い」

「ま、まぁな。一応英雄の子孫だから。っというか出来なきゃまたクレアに怒られるだろう?」

「それは何とも言えない。それでも魔力のコントロールは覚えておいた方が良いのは確かだ」

「まぁ、出来ないよりはそりゃ出来た方が良いに決まってるからな」

「それもそうだが、魔力には甲と乙があるのは知ってるだろう?」

「あぁ」


 細かい事は分からないが、魔力の使い方は大きく分けて二つある、一つは炎とか電撃とか良くゲームとかで見る放出するタイプ。そしてもう一つは、自分の肉体を強化するタイプ。その中で覚えておいて損は無いのは肉体を強化する方だ。


 肉体を強化する事によって重い物を持ったり、頑丈になったり、怪我の直りが早くなったり、色々と便利な事が多いのだが、一番はやっぱり女性にも負けないようになることだ。


 人間は、男は魔力が少ない分身体能力が高く、女性は魔力が多い分男より身体能力が低い。しかし成人になるとその差がほとんどなくなり、身体能力はほぼ同じとなるらしいが、どうやら魔力の潜在能力は女性の方が圧倒的に多いらしく、魔力の扱いが出来る女性には、男では勝つのは難しいらしい。実際オリジンピック(魔力有りのオリンピック)では世界記録を持つのはほぼ女性で。ちなみに百メートル世界記録は二秒七なんぼとか。正に化け物!


「甲を覚えれば健康な体が手に入るし、筋トレも楽しくなる。特にリーパーは睡眠時間が長いうえに朝が弱いだろう?」

「まぁ……」


 朝は確かに弱いが、俺がいつも夜九時に寝るのは昔からの習慣と言った方が正しい。


「甲を覚えれば六時間睡眠でも十分足りるし、目覚めも良い。それに激しい運動をした次の日でも、疲労や筋肉痛はほとんど無い。運動するのが楽しくなるぞ?」


 何『さぁ今日から始めよう!』みたいな健康食品の紹介みたいな事言ってんだよ! こいつ俺にプロテイン飲ませようとしてない?


「それにリーパーは元々体が丈夫だ。もしかしたらコントロールを覚えれば直ぐに甲を習得できるかもしれない」

「まぁ……そうかもしれんけど……」


 確かに俺は丈夫な方だ。昔冬に小屋の屋根の上から頭から落ちてもなんともなかったし、わざとじゃないけどリリアに間違ってドアギロチン喰らってもなんともなかった。まぁそれは多分昔っから毎晩みそ汁の代わりに牛乳一本以上飲んでたのが原因だと思うが……。


「でもそれも結構難しいんだろう?」

「いや、そうでもない。今は皮膚か、表層に流れる魔力をイメージしてコントロールしているだろう?」

「あぁ」

「それを骨に変える感じだ」

「へぇ~、結構簡単そうだな」


 皮膚というより、体全体の水量を抑えるイメージで今はコントロールしているが、それを聞くとよりイメージがしやすく、なんか簡単にできそうな感じがした。そこでちょっとやってみた。


「……こんな感じか?」

「…………」


 眼鏡が無いので、俺も誰も分からなかった。そこでヒーが、パオラに確認する。


「パオラ、どうですか?」

「う~ん……師匠ちゃんとやらないから良く分かんない」


 所詮覚えたてのペーペー。俺程度の才能では、パオラにとってはウンチと変わらないようで、ほとんど変化が無いらしい。

 するとここでフィリアが無言で俺の腕を掴み、何故か突然思い切りしっぺをして来た。


“ペチンッ!”


 え? 


“ペチンッ!”


 え? え?


「へいっ!」


“バチンっ!”


「…………」

「どうです?」


 何が⁉ 


 二度しっぺをして、最後は気合を入れて何故かビンタして来た。


「え?」

「痛くないですか?」

「あ、あぁ……」


 それを聞くと、何故かエリックまで驚きの声を上げた。


『おお!』


 え? なんなの?


 訳が分からなかった。突如始まった俺への折檻に、ただただ皆が喜ぶというイベントは、マジで意味が分からなかった。

 そんな俺に、リリアが意味を教えてくれる。


「凄いですねリーパー! できてますよ!」

「えっ⁉」

「甲ですよ!」

「えっ! 今俺出来てたの⁉」

「はい! 痛くなかったんですよね?」

「あぁ……」

「ならできてます!」

『おお!』


 どうやらこっちのセンスの方が俺にはあったようで、皆は驚きの声を上げる。


「え? 嘘でしょ? 今俺出来てたの?」

「はい! 嘘だと思うなら、もう一度今度は何もしない状態でフィリアのしっぺを受けて見て下さい」

「え? ……わ、分かった。フィリア、もう一度頼む」

「はい。じゃあ行きます……ふんっ!」


“ペチンッ!”


「痛いッ!」


 本当にできていたか確かめるために、今度は何もしていない状態でフィリアのしっぺを受けた。しかしフィリアは頭がおかしいから、今度は何もしていないって言ってるのに、なんか魔力を込めるように二本の指にコオォォォっという感じで力を溜めると、さっきよりも数段本気でしっぺをして来た。


「どうですかリーパー? 痛かったですか?」

「お前バカだろ! 骨折れたと思ったわ!」


 あり得ん一撃は痛みを通り越し、手先が痺れるほど強烈だった。腕真っ赤っか!


「どうですかリーパー? もう一度やって下さい。そしたら本当にできたか分かります! 今度は私がこのフォークで思い切り刺しますから、これが刺さらなかったら成功です!」


 何を言ってるのリリア⁉ やる訳ないじゃん!


「やる訳ねぇだろ! お前もし失敗したらフォーク刺さるじゃん!」

「何言ってるんですかリーパー? だからこそ試す価値があるんですよ? 魔力はピンチになればなるほど力を発揮するんです! だからここで一気に壁を超えるんです!」

「何の壁だよ!」

「己の限界の壁です!」

「やかましいわ!」

「ほら行きますよ~?」

「やっ、やめろっ! バカじゃねぇのお前!」

「ほれっ!」

「やめろっ!」


 こうして俺は、また一つ成長した。

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