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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
第八章
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同窓会

「もしもし~リリア?」

“はい”

「あのさ~、ちょっとこっち大変な事になっちゃってさ、ちょっと手伝ってほしんだよね?」

“それは無理です。私たちはこれから、フィーリア様の祠に行って、私たちの聖刻を貰いに行く予定なんです。だからクレアとファウナを返してもらえますか?”

「なんで? フィーリア様の所行くのにクレア関係ねぇじゃん?」

“フィーリア様の所に行くのには、アテナ神様の聖刻者がいた方が楽らしいからです”

「そうなの? でもさ、こっちもヤバイからさ、クレアは良いけどファウナは駄目」

“それは困ります!”

「じゃあさ、先にこっちを手伝ってくれたらファウナも返すよ。だからさ、先ず合流してくんない?」

“なんで私たちの力が必要なんですか? 面倒臭いのは嫌ですよ?”

「いや、ほら、ついでだからさ、久しぶりに皆集めようと思ってさ、ジョニーたちにも声掛けようと思ってんだよ。だからさ、合流しない?」

“……絶対嘘ですね! どうせ家とか壊して直せって言われてるんじゃないんですか? それなら行きません!”

「いやいや、そんなわけないじゃん。とにかくさ、ファウナは返せないからさ、返してほしかったらイタリアに来てくんない?」

“……考えておきます。大体何故私たちなのですか? キリアとかエリックに頼めばいいじゃないですか?”

「あいつらは裏切り者だろ! あいつ等が攻めて来てんだよ! 分かってんだろ!」

“エリックは敵でも、キリアは違います。あれでしたらエリックだけ私たちの方へ来るように伝えてもらえますか?”

「それはそれで無理だろ! お前らが何されたか知んねぇけど、俺にとっちゃエリックはまだ敵じゃねぇんだよ!」

“じゃあエリックは取って置いて下さい。フィリアの得物です”

「それなら俺たちが絶対守るわ! なんでエリックを生贄にしなきゃなんねぇんだよ!」

“じゃあリーパーも敵です”

「やかましい!」

“とにかく、もし本当にジョニーたちも合流したならまた電話して下さい。じゃあ私たちは忙しいので”

「ああ! ちょっと待って! じいちゃんに変わ…………くそがっ! 次はジョニーだ!」


 マフィアによる三同盟が決まり、俺たちは何とかボスの承諾を得て一時的だが協定を結んだ。これによりカポン姉さん、苦労を含めた俺たちは仲間となり、マフィア間の問題は一時的だが解決した。だが俺をリーダーとした同盟は、アレックスたちへの宣戦布告となり、マフィアVSアレックス組織への争いへと発展していった。


 この事態にピンチを迎えた俺は、急遽聖刻者の知り合いという知り合いへ連絡を取り、戦力の補強を余儀なくされていた。


「……良いから来いってんだよ! カポンの娘だか何だか知らんが、ついでにそれも解決してやるから! 大体クソ父親なら一発くらい殴りに来いってその子に言っとけ!」

“それもそうだが……”

「ジョニーたちだってアレックスたちに狙われてんだろ? だったら俺たちと一緒に戦えよ! どうせ潰さなきゃなんないんだから」

“俺たちのチームにも、リーパーのチームにいる聖刻者と同じ聖刻を持つ聖刻者もいるんだぞ? 無用な争いが起きるだろう?”

「起きねぇよ! 実際今ここには、家のチームのルキフェル様の聖刻者と、他のルキフェル様の聖刻者が一緒にいんだよ! お前どんだけ聖刻者が狂ってると思ってんだよ!」

“そうなのか? ……しかし”

「良いから来いってんだ! もうこっちは戦争になってんだよ! それにエリックだってフィリアに狙われてんだよ! お前エリックボコボコにされて殺されても良いのかよ!」

“そうなのか? ……分かった。少し考えておく”

「なんで考えんだよ! 良いから一回こっち来い! 話はそれからだ!」

“そうは言われても、今俺たちはブラジルにいるんだ。行くにしても時間が掛かるぞ?”

「掛かっても良い! とにかく今すぐこっちに来い! フィリアたちだって合流すんだ! 来ないとこれ終わったらエリックの死体持ってお前たち狩りに行くぞ!」

“そ、そうなのか……? 分かった。出来るだけ早くそっちに行くようにする”

「あぁ、頼む。じゃあ待ってるからな」

“あぁ”

「じゃあな。……よし! ジョニーたちは確保できた」


 ジョニーチームゲット。次はマリアチーム。


「……もしもしマリア? あのさ~……」


 そんな感じで、同盟が決まり、宣戦布告として捕虜の黒い紋章の奴らを返してから、俺はずっと仲間集めに必死だった。


「大将。随分と知り合いが多いな?」

「多いもクソも、知ってる奴適当に連絡してるだけだ! お前も少しは仲間集めろよ! 俺たち魔王様と戦う前にぶっ殺されちまうんだぞ!」


 アレックスの組織は、リーダーアレックス率いる、俺の父さん、フィリアたちの父さんのチーム。ウリエル様の聖刻を持つアニー先生と、ミカエル様の聖刻を持つ猫ミィアが所属するチーム。キリア、エリック、聖陽君が所属する、裏切者クラスメイトチーム。その他にも良く分からんが、なんか色々な奴がいるチームが、分かっているだけでもある。

 それだけじゃない。傭兵軍団もいるし、私兵団もいるし、謎の黒い紋章を持つ奴らもいるし、なんか色々権力者とも繋がりがあるし、お金もあるし、武器もあるし、知名度もあるしで、俺たちなんかがデスノートを持っていても勝てる相手じゃない。

 それなのになんか知らんが、だれ~も友達がいないのか誰にも電話を掛ける様子が無い。

 それどころかタバコなんて吸っちゃってるくらい余裕あるし、世は正に世紀末状態だった。


「そう焦るな大将。俺たちだって今の状況は理解しているんだ」

「だったら誰かに連絡しろや! 友達もいねぇのかよ!」

「まったく……仕方ない。知り合いに連絡してみる」

「本当か⁉ 何だよ~お前も実は色々知ってるんじゃねぇか? 聖刻者か?」

「まぁな」

「誰の聖刻者だよ?」

「ウリエル様だ」

「マジでかっ! お前いつ知り合ったんだよ?」

「な~に、お互い聖刻を高め合った仲さ」

「おお! マジか!」

「あぁ。カマボコと言うんだ」

「結局カマボコかよ⁉」


 誰~も期待していないのに、ここでまさかのカマボコ再来。ま、まぁそれでも、カマボコも一応聖刻者だし、もしかしたら今はチームを組んでいるかもしれないしで、今は何でもいいから戦力が欲しいから、まぁいないよりもマシだった。


「ま、まぁ、とにかく連絡してくれ」

「任せろ」


 多分無理。確かに二人はライバル的な関係だったが、期間も短いし、多分今連絡しても冷ややかな目で見られるだろう。だけどちゃっかり連絡先を交換している事を知ると、おじさん同士で気持ち悪かった。


「……もしもし、俺だ。……なぁに、たまには酒でも一緒に飲もうと思ってな……あぁ。最近店を手に入れてな。美味い酒があるんだ……そうか……あぁ……そうだ……何っ⁉ ……なるほどな……あぁそうだ……あぁ……あぁ……それで……」


 さっさと用件を伝えろや! 何ちゃっかり嘘ついて呼ぼうとしてんだよ! それに何があって一回驚いたんだよ! 


 会話の感じから、多分友達だと思っているのはカスケードだけぽかった。


「……そうだ……あぁ……愛してるぜ…………」


 カスケードの気持ち悪い発言のせいで、電話は絶対切られた。それを証明するように、カスケードはスマホを耳に当てたまましばらくの沈黙を見せた。


「来てくれるらしい。仲間を連れてな」

「来んのかよっ⁉」


 絶対来ないと思った。っというか、寧ろ絶対来てほしくなかった。ここに来てキモイおっさんたちのイチャイチャなんて、さらに地獄が増すばかりだった。そんで電話が終わるとカスケードはスマホをポッケに仕舞い込み、マジでカマボコ以外知り合いがいないという事実にも、違う地獄が広がり始めた気がしてしょうがなかった。

 

「モチロン・マックス。確かに戦力は必要だ。だが、いくら数を集めても統率できなければ意味がない。特に我々のような聖刻者は、互いが聖刻を狙うライバルだ。仲間集めも大事だが、先ずは冷静になれ」

「そんな事言われても姉さん……向こうがいきなり何十人も連れて来たらどうするんですか?」

「相手が蛮族でもない限り、争いの前には必ず対話がある」

「それはそうかもしれませんが、相手は魔王を復活させようとしている蛮族ですよ?」

「彼らは蛮族ではない。蛮族がそんなこと出来るはずが無い」

「でもやってることはほとんど蛮族と変わりませんよ?」

「奴らは資金、兵力を集め、各国の有力者を入念な計画を練り配下に加えている。阿呆な為政者が治めたふりをしている国よりも遥かに優れている。それほどの相手だ、必ず使者を寄こす。その前に派手な動きはあまりするな」

「既に奴らの手下をボコボコにしたのに?」

「だからこそだ。怒りは冷静には勝てない。逆手に取れるぞ?」

「そ、それは……」

「それにだ。もしもモチロン・マックスの言う通り奴らがいきなり総力戦を仕掛けてくるような馬鹿なら、こちらは今の戦力でも十分戦える」

「向こうは何十人も聖刻者がいるのにですか?」

「言っただろう。統率できなければ意味が無いと。聖刻者は一人一人が強大な力を持つ。そんな奴らが何チームといるんだ。放っておいても勝手に共食いを始めるさ」

「ま、まぁ……たしかに……」


 戦闘、それも団体戦において姉さんは、俺たちなんかよりもずっと知識も経験もある。特に一人一人が強大な力を持つという言葉には説得力があった。だが……そう思っていたんならなんでもっと早く言わなかったのか! もうこっちはなんか色々集めちゃったし、来たら来たで統率なんて出来る気もしないしで、早く言わないからこっちは勝手に崩壊し始めちゃった!

 

「とにかく向こうが使いを寄こすまで慌てるな。今我々がしなければいけない事は、如何に交渉を有利に進めるかの条件を準備する事だ」

「準備と言われましても……」

「大丈夫だモチロン・マックス。我々は既に不可能を可能にしている」

「ま、まぁ……そうかもしれませんけど……」


 本来なら手を組むことなどあり得なかった三マフィア連合。そしてまさかのカンパネラ姉さんとルーベルトの共闘。っというか、俺が聖刻を手に入れている事が既に奇跡の連発で、確かに俺たちは既に不可能を可能にしていた。

 だが、アレックスに関しては完全なる喧嘩売りであり、絶対向こうはブチ切れている。現在不可能を可能にしているが、流石にガンジーが助走を付けて殴り掛かって来てもおかしくない事をしているだけに、何が可能性なのかさえ不明な状況だった。


「まぁ、とにかく落ち着きなさいリーパー。数では圧倒されていても、こちらもそれ相応の戦力を有しています。あちらにとってここのマフィアがどれほどの価値があるのかは分かりませんが、ここで大きな争いをしているほどの余裕は無いはずです。彼らの目的は魔王復活であり、世界征服ではありませんから」

「そうだけどファウナ……でも……」

「リーパーの気持ちは分かります。だからこそ落ち着きなさい」

「う~……ん……」


 マジでこの人たちの余裕は何なのだろう。それとも逆に怖いくらいの余裕こそが、勝利の鍵なのか。

 こういう事に関しては普段はほとんど役に立たない仲間たちだが、俺なんかよりも遥かに経験豊富なため、頼りになんだかなんないんだか良く分からなかった。


「ただ、私は仲間を集めるという事に関しては賛成です」

「えっ?」

「私も久しぶりに皆と会って、思い出話を聞きたいです」

「…………そうか」


 余裕を超えた余裕。ファウナにとっては、アレックスの組織などアウトオブ眼中なのだろう。その強さの上限は計り知れないが、心のデカさも計り知れなかった。


 そんなこんなで、結局俺の仲間集めは続き、同時にカスケードたちが交渉条件を探しその時に備えたのだが、やっぱりこういう事には早さというものが付き物のようで、ほとんど準備も整わない状況で、アレックスの組織からの使いがやって来た。


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