パソコン調子悪くて初期化した。大変だった。
ルーベルトとカンパネラの姉さんを一騎打ちさせれば全てが片付くと考えていた作戦。だがそこにはマフィアやそこへ関わる多くの人間の人生も絡んでおり、作戦は次第に大きな争いへと発展していった。
そんな中で、暗躍する皇太子率いる黒い紋章を持つ組織は俺たちにまで影響を与え、もう一歩のところで計画は崩れ始めた。
俺のミスにより、一時は失敗に終わりそうになった作戦だったが、何とか持ち直しあと少しで成功というところまで漕ぎつけた。だけどやっぱりこういう事にはトラブルは付き物のようで、最後の最後で黒い紋章を持つ奴らが孤児院を襲ったせいで全てが台無しになった。
この落とし前を付けさせるため、俺たちは未だに暴れ回る奴らの元へと急行する――
孤児院から数キロ離れた地点。孤児院を中途半端に襲撃した黒い紋章を持つ奴らは、一体何が目的なのか広い畑のど真ん中で暴れ狂っていた。
「あいつら……」
大分明るくなってきた空でも、まるで空爆でもしているかのように光が空を照らす。そこには遅れて爆発音まで響き、自分たちの居場所を知らせるかのようだった。
「誰かが戦っているのだろう」
「誰かって?」
「子供たちを守ってくれた、私たちのヒーローだ」
てっきり奴らは俺を誘き寄せるために暴れていると思っていたが、それを聞いて一気に気持ちが昂った。
「まさか……」
「何か知っているのか、モチロン・マックス?」
「以前奴らに会った時、奴らと戦っている人たちがいたんです。貴族みたいな服を着た人たちです。多分その人たちです」
「そうか……」
子どもたちを襲われたことで怒り心頭だった。だが、子どもたちを救ってくれたヒーローがいると知ると温かい気持ちに包まれ、冷静さを取り戻し上手く心のバランスが整った。
「ならば急ごう」
「はい」
姉さんが言っている事が正しいかどうかは分からない。それでももしそれが本当なら、俺たちは彼らに感謝を伝えなければならない。とにかく姉さんの言う通り先を急ぐ必要があった。
そこからさらに速度を上げて近づくと、本当に奴らは誰かと戦っているようで、次第に状況が鮮明になって来た。
戦っている人数は七人。だけど不思議な事に、その全ての気配が黒い紋章。もしかすると貴族のような服を着た若者たちが人間のため、黒い紋章の気配のせいで把握できないだけかもしれない。だけど近づけば近づくほど七人しかいないことが正確になり、どう探ってもやっぱり七人の黒い紋章を持つ奴らしかいない事が分かった。
そんでも奴らが誰かと戦っている事だけは確かで、とにかく誰かは分からないが俺たちはヒーローを助けるために急いだ。
現場に到着すると、気配はやはり七人だけだった。だけどやっぱり戦っているようで、その気配からはかなりの殺気が溢れていた。
そんな中でも姉さんは直ぐに状況を飲み込めたようで、一人の黒い紋章を持つ男の元へと向かった。
その男とは……あの時に置いて行かれた、まさかのツンツン金髪頭の彼だった。
「遅れてすまない」
この状況下で、直ぐに誰が敵で誰が味方かを見極められた姉さんは、やはり俺よりも戦闘経験豊富だ。そのうえきちんと彼への攻撃を弾き飛ばし、まるで遅れてきたヒーローのような登場までする姿は、ちょっと遅れて登場した三下の俺なんかより、人としても遥かに経験値が上だった。
この姉さんの参上には、今までの騒音が嘘のように静まり返り、そこにいる全ての視線を釘付けにした。
「貴方のお陰で私たちは大切な者を失わずに済んだ。感謝する」
姉さんはマジで戦闘経験値が違う。敵の攻撃を弾き、視線を釘付けにしても、平然と背中を向けてツンツン頭の彼に頭を下げる。
それは、未だに事態を飲み込めずポカンとしている俺とは違い、大人だった。
「あ、あの~……姉さん……本当に……」
「別にあんたたちのためじゃない」
全然意味分からんし、俺の顔見てツンツン頭の彼は気まずそうな顔見せるしで、何か違う気がした。そこで本当かと確かめようとすると本当だったようで、何か先ず礼も言えなかった自分に、なんか超自分が気まずくなった。
そんな俺を他所に、姉さんは大人の対応をする。
「貴方にその気がなくとも、結果として子どもたちは救われた。その事実だけで十分だ」
「…………」
既に終わった事実に対しての勝手な感謝。これではさすがのツンツン頭の彼でも反論できなかった。っというよりも、彼は相当頑張ってくれたようで、その体はボロボロ。喋る体力さえ今は無駄にできない状態だった。
「モチロン・マックス」
「は、はい!」
「さっさと片付けるぞ。子どもたちが待っている。ヒーローが戻って来るのを」
「はい!」
本当は俺も彼に感謝を言わなければならない。だけど今はゴミを片付けるのが先。っというか未だに何が何だか良く分かっていない。礼よりも先に整理が先なのは事実だった。
それでも不思議と彼に対して言葉が出た。
「ありがとう。ちょっと休んでてくれ。いっぱい伝えなきゃいけない事がある」
「…………」
これは心の奥底から出た、本心だった。だけど彼が黙って睨むから、なんか……色々と気まずかった。
まぁそれでも、今は先にやる事があるから……今はこれで勘弁してほしかった。
そんな状況も、流石は頼れる姉さんが解決してくれる。
「さて、始めようか」
マジで仕事が早い姉さんは向き直ると、一気に仕事モードに入った。
「言葉は必要無い。祈りだけ奉げろ。己の人生に」
物凄い闘気に乗せ、姉さんはまるで悪役のようなセリフを放つ。そしてそれだけ言うと姉さんは、阿保みたいに大きなハンドガンをコートの中から取り出し、あり得んくらいの殺気を纏った聖刻を放った。
その聖刻は濃く、重ささえ感じさせ、正直ビビった。そのうえ今までどうやって隠し持っていたの? と思うくらいの金と黒のハンドガンが放つ圧倒的な存在感。
本物の殺気という物を初めて体感したかのようだった。
これに黒い紋章の、あの能面みたいな女が慌てて言い訳をする。
「わ、私たちは、貴女方と争うつもりはありませんっ!」
俺の時は表情を一切変えなかった女だが、意外と感情豊かなようで、人間らしい表情を見せる。しかし、姉さんの“言葉は要らない”を聞いていなかったのか、もう手遅れだった。
女が言い訳を口にすると、姉さんは迷わず銃口を向け引き金を引いた。
マジで戦車だった。打った瞬間物凄い衝撃波が発生し、俺とツンツン頭の彼はぶっ飛んだ。そしておまけで耳と内臓に大きな衝撃を受け、俺、ツンツン頭の彼は、早くもリタイア状態に追い込まれた。
姉さんの撃った弾は女に命中し、被弾した瞬間に相手の体を隠すほどの爆煙が巻き上がった。それでも腐っても黒い紋章を持つだけあって、魔法だか黒い紋章の力だか分からんが、何とか無傷で生還する。
唯一負傷したのが、俺とツンツン頭の彼だけ。
「大丈夫か、モチロン・マックス?」
「だ、大丈夫です……」
「彼も無事か?」
「は、はい。気絶してますが、今治療してるんで大丈夫です」
「そうか。いきなり悪かった。彼を連れて少し離れていてくれ」
「わ、分かりました……」
本当は、俺だって戦いたい。だけど今の攻撃が続くのなら、先ずはツンツン頭の彼の安全を確保するのが先。だってあんな大砲みたいな銃を片手でぶっ放せるのにいきなり撃つなんて、もうちょっと考えて欲しい。
普段は頭が良いのに、こういう状況では体が先に動いてしまう姉さんは、やっぱり黄泉返りなんだと痛感した瞬間だった。
「彼を安全な場所に移したら俺も戦います! 俺の分も取って置いて下さいよ姉さん! 俺だってはらわた煮えくり返ってんですから!」
「はらわたとは……随分と良い言葉を使うなモチロン・マックス。今の私の気分に合う言葉だ。急いで戻って来いよモチロン・マックス。奴らが鳥のエサになる前に」
姉さんブチギレ。ちょっと離れれば安全だと思っていたが、かなり離れなければ危険な感じがビンビン伝わって来た。
「さぁ行けモチロン・マックス。大切な恩人だ。頼んだぞ」
初めて姉さんから託された、頼んだという言葉。奴らに復讐したい気持ちで一杯だったが、この言葉で自分たちの役割を知り、もう俺と姉さんはチームになっていたんだと気が付いた。
それに気が付くと、こんな状況でも自然と笑みが零れ、また姉さんも笑みを返してくれた。
「んじゃ、ちょっと行ってきます姉さん。俺の分の怒りは置いてきます。頼みましたよ姉さん」
「あぁ」
聖刻ではなく、ゼロから信頼を築き上げたカスケードたちとは違う仲間。それがこんなにも心地良いとは初めて知った。
やっぱりこういうのは、やっぱりメインストーリーに絡んでいくものだと主人公たちの気持ちを知り、今は自分の役割を遂行する事に専念した。
カンパネラは魔法が苦手で魔具を作れないため、特殊な魔法陣を施した銃を扱います。そして今回出したのは、聖刻で強化した、言わば二段階目の強化を施した銃です。魔法強化では弾の補給が必要でしたが、聖刻版ではその必要はありません。そして、威力も強大なため敵味方関係なく巻き込む性能を有しています。ちなみに威力は調整できますが、それでも周りを巻き込みます。
最後に、サブタイトルというのは、こういう使い方は間違っているのでしょうか?




