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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
七章
149/186

メデゥエイーク家

 エジプト。そこは砂漠が広がり年中暑く、人々は皆ターバンを巻いている。町並みは砂色が多く、舗装もされていない道を、古い車が黒煙を上げながら走り回る。あちこちにピラミッドがあり、隣にはスフィンクスが佇む。

 

 全然違った。ほぼジョジョ三部くらいでしか知らないエジプトはそんな感じだと思っていたのだが、ビルはデカい、高級車がブンブン走る、建物は綺麗、その上ターバンなんて巻いてる人なんてほとんどいない。おまけに普通にスタバがある。


 初めて来たエジプトは恐ろしいまでにイメージとの差があり、情報操作による人間の底知れない力にはただただ圧巻されてしまうだけだった。

 ただ、カレーが好きなのは本当のようで、空港に降りるとカレーのようなスパイシーな香りがしており、何故そこだけは正しいのかは全くの不明だった。


 そんな大都市に、過酷な旅をしなくても良いと安堵していると、やっぱりこういう旅は砂漠に行かなければいけないようで、結局俺たちは暑苦しくギュウギュウ詰めの車でパオラの元へと向かう羽目となった。


 俺たちが目指すのは、モルドル自治区と呼ばれる地域。そこは前英雄であるモルドル様が魔王を倒したのちに、じいちゃんたちの力を借りて作った小さな国のようなものらしい。

 モルドル自治区は、差別を受ける黄泉返りが安心して暮らせる事を目的として作られた国のようで、エジプト内の地域だった。


 まぁつまり、パオラはお姫様だったという事。容姿も美しく、性格も良く、強い。さらに自分の苗字をちゃんとは言えない天然さも加わり、やはり結婚するならパオラだった。


 そのパオラの怪我を治すため進む旅は、長い砂漠の移動を続けてやっとたどり着いた。


 砂漠の中に隔離されたかのよう作られたモルドル自治区。そこは逆にジョジョ三部のエジプトのイメージとぴったり合う町並みだった。低い建物が並び、あちこちに露店が並ぶ。人々は伝統的な服装をしており、ちゃんとターバンを巻いている人もいる。

 だけど流石黄泉返りのための地区だけあって、体のサイズが大小さまざまだったり、獣人みたいな人がいたりしており、ジョジョというよりもズートピアと言った方が近かった。


 何よりこの圧倒的な活発感。まるで生命に溢れているような雰囲気はとても活力に溢れていて、人口二十万人ほどとは聞いていたが、まるで百万人はいるかのようだった。

 ついでに言うと、前英雄というのは物凄い力を持っているようで、既に到着しているようで、ここからでもアテナ神様の聖刻の気配を感じる実力には、間違いなくファウナだと思うがヤバかった。


 そんな町をさらに中心地に進むと、ひときわ大きな宮殿のような建物があり、やっと俺たちはパオラの家に着いた。


「あ、あの……すいません。パオラに会いに来ました。リーパー・アルバインです」


 流石は王の住む家だけあって周りは高い塀で囲まれており、大きな厳重な門の前には二人の衛兵が立っていた。

 そこで勝手に入る訳にも行かず声を掛けたのだが、その二人もまた黄泉返りで、一人はただでさえ暑そうなのに鎧を着たハスキー犬のような獣人。もう一人は鎧と武器は必要なのかと思ってしまうほど、全身岩石みたいな皮膚をした大男だった。


「お話は聞いております。ただいま確認致しますので、その場でお待ち下さい」

「あ……はい。分かりました……」


 絶対言葉は通じないと思っていた。だから声を掛けた時不安だったのだが、とても礼儀正しく、しかも流暢な日本語が返って来て驚いた。


 モルドル様は殆ど日本語しか話せなかったらしい。それでなんかここでは日本語が公用語だとは聞いていたが、まさかここまで日本人なのかというほど流暢な言葉には、あの見た目も相まってさらに驚きだった。


「案内の者が参ります。しばらくお待ち下さい」

「分かりました……」


 アドラとパオラのせいで、黄泉返りはあまり知能は高くないと勝手に思っていたが、どうやら違うらしい。凛々しい顔のハスキー犬みたいな人が綺麗な日本語で話すと、俺よりも頭が良いんじゃね? と思ってしまうほどで、寧ろアドラがアホ過ぎたと案内人を待ちながら故人を想った。


 その時間はとても懐かしく、“アイツって結局俺を何だと思っていたのか?”不明だった。


 するとようやく……だい~ぶ待たされ、ピーナッツが一体何なのかを考えるほど暇になると案内人が到着して、馬の蹄のような音に続きアホみたいに大きな牛タウロスのような黄泉返りが姿を現した。


「あ……」


 これには命を司るアズ様の力を持つ俺でもビビった。見上げるほどデカい図体、でっかい目玉、頑丈そうな頭、両方折れた角、お洒落なのか何なのか分からないが全身に巻いた包帯。

 こいつは絶対に言葉が通じない生き物だった。


「案内は彼が致します。彼に付いて行って下さい」

「あ……あ、はい」


 多分俺だけじゃなく、カスケードもチンパンもフォイちゃんもこの牛タウロスにはビビっていた。それほど放たれる獣感は物凄く、案の定言葉は通じないのか、ハスキー隊長が付いて行けと言うと無言で歩き出す姿には、皆なかなか踏み出せずにいた。


 それでも勝手にずんずん進むから付いて行くしかなく、とにかく後を追うしかなかった。


 宮殿の中はとても広く、高い天井が正に王の居城という感じだった。廊下も広く、壺やら彫刻やらがあちらこちらに飾られており、パオラたちがどれだけお金持ちだったのか分からないくらいだった。その上宮殿内は外と比べて涼しく過ごしやすく、ここだけ別世界という感覚は、どれほど高貴に扱われていたのかも計り知れなかった。

 

 こんな環境で育てば、いくらこんな俺でも英雄らしい人間になれたとじいちゃんを呪う。何故家は貧乏だったのだろうか?


 宮殿は予想以上に大きく、牛タウロスはまだまだ進む。それはもう俺たちだけで戻れと言われても道など覚えていないくらいだった。

 しかしこの辺りからもう近いのか、パオラが持つルキフェル様の聖刻を感じ始めた。


 すると、庭とは言えないほど大きな広間に出た。


 広間には日が注ぎ、溢れる緑の中央には噴水。周りには野菜や果物、日用品などを取り扱った出店が並び、高貴な服を着た住民が買い物や休憩をしている。

 どうやらここは宮殿内の商店街のようで、宮殿内にも大きな居住区がある規模にはさらに驚いた。


 そこを抜けると何故かまた宮殿内に入り、もうパオラの気配は近いはずなのにまた長い廊下を進み、また屋外に出た。だが今回はようやっと到着したようで、屋外へ出る際には衛兵のいる厳重な門を抜けた。

 そしたら、そこには滅茶苦茶広いはずなのに、周りを高い塀に囲まれた、めちゃんこ大きなお屋敷があった。それもでっけぇ庭付きの。


 廊下から抜けた際、太陽の光で一瞬目の前が白くなってから現れた緑豊かな屋敷を目にした時は、まるで別世界に来たのかと錯覚さえしてしまう絶景だった。

 それほど美しく、匂いが違った。


 このいきなりファンタジー世界へ来たかのような景色には、流石に足を止めてしまった。そしてこれがアドラとパオラの家だと思うと、憎しみにも似た妬みさえ抱いてしまい、なんかもう、英雄の孫を辞めようかと、物凄い精神的ダメージを負った。

 ただそんな俺の気持ちを知らないカスケードたちは爽やかな表情を見せ、フォイちゃんは大喜び。そして牛タウロスは振り向きもせず勝手に進む。俺だけが地獄に来た気分だった。


 そんでもさ、ここまで来たら牛タウロスに付いて行くしかなく、重い脚を引きずりながら屋敷へと踏み入れた。 

 そしたら、なんかめっちゃ執事とかメイドみたいな人なのか獣人なのか分かんないけどさ、何か一杯いて出迎えるしさ、何かパオラの部屋みたいな所の前まで行くとさ、ブリーチに出てくるエスパーダみたいな白い服着た、絶対ナンバーとか体に入ってるだろ的な強そうな奴らが守ってるしさ、どんだけ強くなったのか知らないけど、パオラは異常な強さの聖刻の気配放つし、ファウナの鬼のような聖刻の重厚感も凄いし、魔王城にでも来たかのような圧力にはもうなんか色々とズルくてさ、非常に不愉快でした。


 それでもや~っとパオラに久しぶりに会えると思うと、ファウナもクレアもいる事もあって、扉が開く前に服装を確認してしまう自分に、さらに不愉快でした。


 そんな不愉快だらけの旅だったが、いざ扉が開きパオラを目にした瞬間、そんな物は一瞬で吹き飛んでしまった。


 モルドル自治区の創設には、前英雄のほとんどが協力しています。特に仲の良かったエドワードが協力的で、全面的に協力しています。

 ただ今も尚黄泉返りには差別的な思想があり、モルドル自治区の周囲国とは、貿易関係以外はあまり友好的ではありません。しかしモルドルが持つ武力による抑止力により、モルドル自治区は平和です。

 その平和維持のため、後継者はパオラになる予定です。

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