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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
二章
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感性の違い

「なぁエリック」

「はい、なんでしょう?」

「エリックん家ってさ、どれくらい金持ちなの?」

「え?」


 昼食が終わると、それぞれがグループを作り午後の授業までの時間を過ごし始めた。

 

 リリアは、ヒーとパオラとフィリアで女子トークを始め、ジョニーはその横でスクーピーを相手にしながら四人の女子トークを見守るように聞いている。アドラは眠くなったようで、机に脚を伸ばし不良さながらに昼寝に入った。そして俺は、エリックが落ち込んでいたのが気になり、そのまま二人で雑談する事にした。


「いやだってさ、さっき爺とか呼んでた人とか執事とかでしょう?」

「え、えぇ。だけど私の中では執事というより、叔父に近いですけど」


 つまりエリックは根っからの金持ち。執事を叔父と感じている様子に、普通が分からないという理由に納得がいった。そこでエリックの普通を探すことにした。


「じゃあさ、エリックの趣味って何?」

「趣味ですか……」

「あ、別に趣味じゃなくてもいい。なんかコレクションしてる物とか好きなアニメとかでも良いよ」

「それなら、私は模型を眺めるのが好きです」

「模型⁉」

「はい」


 おお! 俺もプラモデル大好き! エリックも意外と普通の趣味あんじゃん! 


 意外な同士の出現に、少し楽しくなってきた。


「どんなの集めてるの?」

「集めているというほどではないのですが、やはり船や飛行機ですね」

「おぉ。良いねその趣味」

「ありがとうございます」


 俺とは少し好みは違うが、話が合いそうな話題にエリックと良いお友達になれそうな感じがした。


「え、でも、エリックん家って金持ちじゃん。やっぱ高いやつ集めてんの?」

「いえいえ。リーパーさんは何か勘違いしていますが、家はそれほどお金持ちという感じではありませんよ?」

「え! そうなの?」

「はい。今まで私が買ってもらったことのある中で高価な物でも、十歳の誕生日にジェット機。十五歳の誕生日に船を買ってもらったくらいですから、リーパーさんが思うよりそれほどお金持ちではありません」

「へぇ~」


 なるほど。どうやらエリックん家のおじさんとおばさんは、元英雄のおばあちゃんの言う通り普通を教えようとして、あまり物を買ってあげなかったのだろう。確かにさっきの昼飯は驚いたが、あれは色々貴族のパーティーとかで恥をかかないための教育の一環のせいだと思うと、納得だった。

 事実フィリアやジョニーもお金持ちだが、俺たちとはあまり変わらないという感じがあり、特にフィリアはケチだから、そう不思議な話ではなかった。


「寧ろリーパーさんの方がお金持ちなのではないのでしょうか?」

「いやいや、家貧乏だし」

「ハハハハッ! リーパーさん家が貧乏なら、家はもっと貧乏ですよ!」


 あ、エリック知らないんだ……いや、絶対知ってるよね? うちの父さんの事や借金四十一億あんの。それとも何? 元英雄のリーダーだから、あれくらいじゃビクともしないって思ってんのかなぁ~……


 言っても良いが、言って同情されても辛いものがある。そこであまりそこは触れないようにしようと思った。


「まぁでも、家も結構厳しかったからさ、エリックとあんまり変わんないよ?」

「そうなんですか?」

「うん。だって家も誕生日に自転車とかは買ってくれたけど、プラモとかは自分の小遣いで買ってたもん」

「プラモ……ですか?」

「うん。戦車とかガンダムとか」

「ガンダム⁉ えっ⁉ ガンダムって、あのアニメのガンダムですか⁉」

「え? そうだけど? あ、エリックガンダム知ってるんだ?」

「え、ええっ⁉ リーパーさんガンダム持ってるんですか⁉」

「うん。エリックの家の近くには売ってないの?」

「売ってないですよそんなの⁉」


 あ、そうだった! エリックって外国の人だもんね。そりゃガンプラなんてなかなか買ってもらえないもんね。


 ここで初めて、エリックが日本人ではない事に気付いた。


「そうなの? エリックって国どこ?」

「わ、私は、イタリアです……」

「そうか。なら仕方ないな」


 ガンプラが何処の国まで発売されているのかは知らないが、さすがにイタリアには無いと思うと、エリックがここまで驚くのは無理は無いと思った。


「日本なら普通に売ってるよ。イオ……スーパーとか電気屋のおもちゃコーナーに」

「ええっ⁉ スーパーや電気屋に売ってるんですか⁉ ガンダムが⁉」

「うん」

「ほほ本当ですかリーパーさん⁉」

「うん」

「だってガンダムですよ⁉ なんでそんなところにあるんですか⁉ それはもうスーパーではなくガンダム工場じゃないんですか⁉」


 余程ガンダムが手軽に買える場所にあることが羨ましいらしい。まさかガンダム工場とまで言うとは、エリックのガンダム愛には感服だった。


「日本ってさ、世界的にも見て小さな島国じゃん。だから日本ではそういったちょっと大きい店におもちゃ屋がくっ付いてんだよ」

「おもちゃなんですかガンダムって⁉」

「おお! 良い事言うねエリック。そうだね。もうあれは兵器と言っても過言じゃない!」

「ですよね⁉」


 正にプロ。そう! ガンプラはもはやおもちゃではない! あれは日本人が生み出した精密な芸術品! 

 

 まるで世界にガンプラが認められているようで、とても誇らしかった。


「でもさ、俺の部屋狭いからさ、あんまり飾れないんだよね」

「えっ⁉ リーパーさん部屋にガンダム飾ってるんですか⁉」

「うん。あ、でもガンダムだけじゃないよ? 他にも戦車とか飾ってるからさ、今は五体くらいしか置けなくって」

「五体も⁉ えっ? えっ? 他にも戦車とかも飾ってるんですよね⁉」

「うん。俺作ったやつだからさ、あんまり出来は良くないけど……」

「ええっ⁉ リーパーさんが作ったんですか⁉」

「そう。あれ? エリックは作らないの? 飛行機とか?」

「無理ですよ⁉ ……いえ、私はあまりそういうのは得意ではないので、出来たやつを買ってもらってます……」

「あ~そうなんだ。でも気にすんなよエリック。それも人それぞれだ」

「あ、ありがとうございます……」


 作るのが楽しい派か、眺めるのが楽しい派か。はたまたそれを動かして遊ぶのが楽しい派か。楽しみ方は人それぞれだが、同じ造形を楽しむ同士に、なんだか良い気分だった。


「だけどまた新しいの出てんだよね。他にも買えなかったやつとか」

「え? 新しいの……ですか?」

「うん。ここならさ、欲しいもの何でも買ってくれるじゃん。だけど作るとなるとさすがにヤバイかな?」


 素組みをするだけなら問題は無かった。しかし塗装をしようと考えると、いくら自由に使って良いと言われる部屋でも、気が引けていた。


「作るって……どこで作るつもりですか……?」

「え? 俺の部屋だけど?」

「それは無理ですよ⁉ 流石にそれはキャメロット王も許してくれませんよ⁉」

「あ~やっぱり~? なんか五月蠅そうだもんな、そういうの」

「当たり前ですよ⁉」


 貴族とかそういった人は、やはり臭いとか色移りとかを嫌うらしい。エリックが必死に説得する姿に、聞いて良かったと思った。


「じゃあ仕方ないか。買うだけ買って、後は日本に帰ってから作るわ」

「か、買うのもやめておいた方が良いですよ……」

「え~? そこまで?」

「当然です! ここはキャメロットですよ⁉」


 やっぱり偉人が集まるだけあって、プラモを買おうものなら塗装まで疑われるレベルらしい。なんだかんだ自由と言われても、暗黙のルールがあることにガッカリした。


「まぁ仕方ないか。あ~あ。こういう所は日本の方が良いよな~。自転車とかバスでちょっと行って自分で買ってこれるから」

「え?」

「あ~そうそう! 家って田舎だからさ、隣町まで行かないと買えなくってさ」

「ええっ⁉ もしかしてリーパーさん、ガンダムや戦車自分で契約してくるんですか⁉」

「うん。契約って言うか、日本じゃ予約しなくても店行けばすぐ買えるし、その日に持って帰って来れるよ?」

「持って帰ってくる⁉」

「そう。自転車だとちょっと大変だけど、俺買うのリアルグレードばかりだから」

「リッ、リアルグレード⁉」

「うん。マスターグレードだとちょっと高いし、パーフェクトグレードは手が出ない」

「パッ、パーフェクトグレード⁉」


 エリック超驚愕。エリックからしてみれば、ただでさえ手に入らないガンプラなのに、マスターグレードやパーフェクトグレードが並ぶ店内は、想像ができないのだろう。


「そ、それって日本では普通なのですか⁉」

「うん。金さえあれば小学生でも帰るよ?」

「小学生⁉」

「日本じゃ普通だよ? それに俺なんかよりもずっと上手い人一杯いるし、ちょっと大きい店なら店員さんが作ったやつ飾ってあったりするよ?」

「ほほっ、本当ですか⁉ ガンダムが⁉」

「うん」

「さ、さすがイギリス、フランス、アメリカがいる連合国相手に戦争を仕掛けた国だけはありますね……いえ。でも何故かリーパーさんがいれば魔王なんて簡単に倒せそうです」

「そこまで言う? でも、なんかありがとうエリック」

「い、いえ」


 まさかここまで褒められるとは予想外だった。だが悪い気は全くせず、寧ろエリックが好きになった。

 そこでじいちゃんに連絡して、家に飾ってあるガンダムを送ってもらい、プレゼントしようと思った。


「じゃあさエリック。今度家にあるガンダム一個やるよ」

「えっ⁉ ガンダムをですか⁉」

「うん。俺作ったやつだから色とかはみ出してるとこあるけど、リリアにもやったりしてるから遠慮しなくてもいいから」

「えっ⁉ リリアさんにも上げてるんですか⁉」

「うん。でもリリアの奴直ぐ壊すんだよ。その度に直すの大変でさ」

「ええっ⁉ ガンダムをですか⁉ ……えっ⁉ それでリーパーさん直すんですか⁉ どうやって⁉」

「直すって言っても、穴開けて真鍮入れたりして、接着剤でくっつけるくらいだよ?」

「接着剤⁉ そんなんで大丈夫なんですか⁉」

「いや、またすぐリリアの奴壊す」

「そうですよね⁉ 接着剤じゃ無理ですよね⁉」

「でもエリックに上げるのは壊れてないやつだから安心して?」

「ま、まぁ……それは有難いですけど……私でも扱えますか?」

「大丈夫だよ。落としたり折らなければ」

「落としたり折る⁉ そ、そそれ、死にませんか?」

「う~ん……粉々にならなければ、接着剤で何とかなると思うよ?」

「粉々⁉」


 どうやら余程プラモデルを作ることが苦手らしい。そこであまり気が引けないよう言葉を掛けた。


「別にいいよ壊れても。壊れたら捨てて良いし」

「捨てる⁉ えっ⁉ それってどうやって廃棄すればいいんですか⁉」

「え? 燃えるゴミの袋とかでいいんじゃね?」

「燃えるゴミの袋⁉」

「で、どうする? いる?」

「あ……そうですね……では、もし魔王が復活して、戦わなければいけなくなったときに頂きます」

「ハハハッ! 分かった。じゃあじいちゃんに頼んでおく」

「ありがとうございます……」


 この後しばらく俺たちは意思疎通のずれに気付かぬまま数日過ごし、後日、じいちゃんに送ってもらったガンプラを渡したとき、初めてお互いの勘違いに気付いた。


 三つ目のいいね! をもらいました。ありがとうございます。ですが、いいね! をもらう度にこうして後書きを書いているわけにもいかず、かといって貰って当然という形でお礼も言わないのは無礼だと思います。そして、こういった評価は作者ではなく、キャラクターたちのためにあると思うので、そこで、集めてどうする気なのかは分かりませんが、リリアとヒーがいいね! 貯金を始めたので、いいね募金という形で頂こうと思います。

 これは、哀れな姉妹を救おうという募金です。いいね! が増えるたび双子の姉妹が喜ぶだけのものとなります。この話が面白かった、もう使わない、家に余っているという方、是非いいね募金にご協力願います。

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