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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
七章
111/186

烈戦

 大阪の地名も分からない商店街。そこで始まったアズ様の聖刻を掛けた戦い。道行く人がスマホ片手に観戦する戦いは、第二ラウンドを迎えていた。


「くそぉぉぉー!」


 第二ラウンド早々、怒りで目玉を治す事さえ忘れるブロリーの隙を突き、死角を利用して俺は優位に立ち回っていた。


 怒り任せに死角に入る俺を追って腕を振り回すだけのブロリー。俺はそれを利用してブロリーの周りをぐるぐる回りながら、その辺にある物を拾い、執拗に膝を壊しに行っていた。


「逃げるなぁぁぁ!」


 自転車、看板、傘、お婆ちゃんとかが押してるタイヤの付いたヤツ、名前は分からんがその辺にあった魚。とにかく拾える物は拾い、膝を狙う。最初はほとんど効果は無いと思っていた攻撃は、回数を重ねるごとに破れたズボンから見えるブロリーの皮膚を赤く染め出し、それなりに効果を出し始めていた。


「いい加減にしろっ! そんな攻撃は効かんっ!」


 効果としてはあるようだがほとんどダメージは無い。だがそれは肉体的な話であって、俺としては精神攻撃を狙っている以上、キレ散らかすところを見ると効果絶大だった。


「強がんなよ。大分膝が赤くなって来たぞ? どんなにムキムキになっても所詮生物。鉄には敵わねぇんだよ!」

「貴様ぁぁぁ!」


 そろそろ膝攻撃は攻略されそうだった。そこで最後になんでか知らんが落ちていたスリッパを投げつけ、次なる作戦に移った。


「ほら! 次行くぞ!」

「うおおぉぉぉ!」


 怒りでほぼパニックになっているブロリーは、敢えて攻撃タイミングを教えるとさらに激昂し、本当にブロリーみたいに叫んだ。そして膝を狙って来ると思っているようで、拳を打ち下ろす体勢を取った。

 その態勢こそが狙いだった。


「残念! そこじゃねぇ!」


 上から叩くには程よい頭の角度。そこへ向けて思い切り取って置いた小麦だか片栗粉だか分からんが、白い粉の入った袋を思い切り叩きつけた。


「うおおおぉぉぉ!」


 叩きつけた袋は見事に破裂し、白い粉がブロリーの視界を奪う。さらにおまけで、意外と強烈だったようでブロリーは今日一の叫びを上げた。

 だがこれは段取り。ブロリーが衝撃と粉で視界を奪われ混乱しているうちに、また両手を合わせて力を集約させた。そして粉を振り払うブロリーが脇をガラ空きにするタイミングで、渾身の一撃をお見舞いした。


「うわぁあああ!」


 今度は完全にわき腹を捕らえた。その衝撃は鋼鉄のような皮膚を抜けめり込むのが分かる程完璧に捉え、今日始めてブロリーをぶっ飛ばしダウンを奪った。


「っしゃあああ!」


 言うまでも無いが、また右腕はぶっ壊れた。だがあの巨体からダウンを奪ったことが嬉しく、腕もそのままに思わずガッツポーズをするほどだった。


「きっ、貴様ぁぁぁ!」


 流石にあの条件でのクリティカルヒットは、ダメージを与えたようだった。ぶっ飛んだブロリーは片膝をついたが立ち上がるのには時間が掛かるようで、そのまま呼吸を整えるようにこちらを睨んでいた。


 それを見て、さらに挑発する。


「ワンッ! トゥッ! スリーッ!」

「うううぅぅぅ!」


 指を立てながらのカウント。それも敢えてネイティブ発音に近づけてのカウント。怒り狂うブロリーには効果覿面だったようで、歯を食いしばり顔を真っ赤にさせて唸る。


「おいおいどうした? いつまでそうやってる? それとも何か? お前刃牙に出てくる、花山薫みたいに体中傷だらけにするのが夢なのか?」


 花山薫は格好良い。特にあれだけの体格を持つブロリーなら、憧れるのも無理はない。そう思うと、奴がいつまで経っても目玉を治さない理由に、何となく納得がいった。


「よし! それならちょっと待ってろ。今そこの魚屋から包丁借りてくるから、お望み通り傷だらけにしてやんよ」


 これは挑発の面もあるが、俺としても是非手伝いたいと思っての発言だった。もしそうなればあの肉体。リアル花山薫の実現も夢じゃなくなる。

 そういう意味もあって言ったのだが、今のブロリーでは理解は難しいようで、また飛び掛かろうとしていた。


 そんな時だった。


“ピーポーピーポー! ウゥゥゥ~ン!”


「チッ!」


 ここから第三ラウンド。そう思っていた矢先、誰かが警察にでも電話したのだろう、救急車やパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 その音は直ぐに大きくなると続々と警察官までやって来て、ブロリーに頭を冷やす時間を作ってしまった。

 それだけじゃなく、あろう事か駆け付けた警察官は野次馬たちから話を聞くと直ぐにこっちに来る始末で、完全に邪魔になった。


 クソッ! 場所を変えるしかない! 折角良い感じだったのに、また最初からやり直しだ!


 俺としては最悪だった。多分またブロリーを怒らせることは可能だが、再びとなればかなりの時間が掛かる。それに下手をすれば流れを持って行かれて逆にこっちが不利になることだってある。

 折角掴んだチャンスなのに、ここで仕切り直しは止めて欲しかった。


 しかしここでこれ以上戦えば被害はさらに大きくなるため、仕方なく仕切り直しをすることにしたのだが……


「動くなっ!」

「え?」


 何を思ったのか、俺たちがアズ様の聖刻者と知らないのか、警察官たちは見た目だけで悪だと決めつけたようで、ブロリーに対してだけ拳銃を突きつけて制止を促した。


「地面に伏せろっ!」

「早く伏せろっ!」

「伏せろっ!」


 ブロリーを取り囲み、拳銃を突きつける警察官。

 

 怖いのだろう。武器を持っていないとしてもブロリーのあの巨体と白目。そのうえ上半身裸だ。人間が怖がるのは無理も無かった。


「なんだ貴様らは?」

「動くなっ! 地面に伏せろっ!」


 かなり危険な状況。警察官たちはブロリーが聖刻者だとは知らない。ただデカい馬鹿力の異常者としか思っていない。このままでは警察官たちは殺される。

 そう思っていても、これ以上被害を広げたくはない思いとは裏腹に、相手との実力差も分からない無知な人間の方が悪いと考えてしまい、ブロリーに任せる事にした。

 それが悪かった。


 拳銃を突き付けられるブロリーは、当然そんなものなど怖いはずもなく、平然と立ち上がる。警察官も当然指示に従わないブロリーにさらに騒ぎ立てる。そして遂には天井に向けて威嚇射撃までしてしまい、戦う意思を見せた。


「地面に伏せろって言っているんだっ! これ以上従わないなら撃つぞっ!」

「なるほど……どうやらアズ様は俺に味方をしているようだな」

「何を言っているっ! とにかく伏せろっ! 黙って指示に従えっ!」


 拳銃に囲まれるブロリーは何かを感じ取ったのか、警察官の言葉も無視して俺に語り掛けていた。

 それが何を意味しているのかは分からなかったが、物凄く嫌な予感がした。その次の瞬間だった。


 高速で腕を振り回したブロリーは、とり囲む警察官の二人の頭をあっという間に掴んだ。そしてその二人から命を取り込み始めた。


 さらに膨れ上がる筋肉は限界を超え、血管が浮き出る皮膚は赤みを帯び、上昇する体温は体から白い湯気を上げる。身長もさらに大きくなり、腕はもう俺の胴体と変わらないくらい太い。ついでに負傷も完治させ完全復活。ただ、白目だけは既に極致に達していたようで変わらず、充血するくらいだった。


 それでもまだ足りないブロリーはまた警察官を捕まえて吸収し、最後には取り囲んでいた警察官全員を取り込んでしまった。

 

「力が漲るぞおおおぉぉぉ!」


 キャパシティーオーバーは一目で分かった。その影響でブロリーは精神まで異常を期しており、見た目も赤鬼のようになっていた。


 それでもただの肉体のパワーアップ。かなり厄介な状況にはなったが、もうここまで来たら周りの被害など気にする必要もなくなった。後でラクリマ達から文句を言われそうだったが、今は戦う事が楽しくて、面倒なことは考えず目の前の敵に集中することにした。


「かかって来いやっ! 第三ラウンドだ!」

「行くぞぉぉぉ!」

 ブロリーは、リーパーが勝手にブロリーと言っているだけで、本名ではありません。彼は日本に留学に来ていたアジア人大学生で、所謂ガリ勉です。そんな彼はアズ様の聖刻を得たのち、ロシア方面へ向かうために一度大阪の自宅へと戻っていました。

 そこへたまたまリーパーが近くへ来たのですが、運動も苦手で気弱な彼は、まだ聖刻を得てから間もない事もあり、当初戦うつもりはありませんでした。しかしリーパーが迷った後車で移動した事で、彼はリーパーが恐れをなして逃げたと感じ攻勢に出ました。

 彼は、いずれは世界に名を遺す学者になりたいと頑張る程頭が良かったのですが、ガリ勉であったという事でムキムキマンに憧れがあり、そのために力を使ってしまい、力の制御が出来ずに理性を失いブロリーになってしまいました。


 もし彼がもう少し後で登場していた場合は、もっとスマートな戦いをしました。ですがそれだとリーパーは間違いなく負けてしまうので、主人公補正という事で脳筋ブロリーにしました。

 ちなみに、少しでも頭の良さを残した場合、リーパーは直ぐに魂を引っ張り出されてこの物語は終了しています。


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