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我らは英雄だ‼  作者: ケシゴム
六章
108/186

その夜

 戦いが終わった俺たちは、その日の夜、用意されたホテルにいた。


「ええっ⁉ 何故なんですかリーパー⁉」


 キャメロットで用意されたホテルは、もちろん俺たち関係者だけが宿泊する貸し切りだった。防犯上屋外のプールなどは使用できなかったが、ライトアップされた景色は美しく、白を基調にしたロビーや料理は正にハワイで悪くは無かった。


 そんなホテルで、ディナーを取りながら今後の行動について話し合いが行われていた。


「いや、だから、アズ様の聖刻の力は周りの奴から奪って使うんだから、もし“俺の”戦いに巻き込まれたらリリアたちなんか一瞬で死ぬんだぞ? そんな状況で……」

「そのためにフィリアがいるんじゃないんですか! フィリアがバリアを張ってくれれば大丈夫ですよ!」

「いや、だから、フィリアまだそれ出来ないんだって」

「そんな事は分かっています!」


 分かってんのかい!


「それでも折角聖刻者が二人も揃ったんですよ? ここでリーパーが抜けたら、また一人集めないといけないじゃないですか!」

「いや……ドラゴンボールじゃないんだぞ? そんな七人集めたからって願い叶わないぞ……」

「それでもダメな物はダメです!」


 アズ様の聖刻を手に入れてからずっと感じていたことがあった。それは祠に呼ばれたときと同じように、また別の場所で俺を呼ぶような感覚。それは祠と同じで行かなければいけないと強く感じるほどで、明らかに皆とは違う道を指し示していた。

 この感覚は多分エヴァの言う相性というやつで、どうやら俺は三年一組のメンバーとは違う人物の元へ行かなければいけないようだった。


 しかしそんなことはまだ分からないリリアは、当然この俺の発言には猛反対で怒っていた。


「でもよ、ジョニーだってツクモたちだって別に行ったじゃん。仕方ねぇじゃん」

「ジョニーたちは王子様やフウラたちが一緒だったからです!」


 確かに言われてみればそう。だけど俺の場合、誰か連れて行こうにも、誰もパッとしなかった。


「だけどアズ様の力見ただろ? 俺なら死なないし、首が無くなっても怪我もしないんだぞ? 一人でも大丈夫だ」

「でもリーパー、弱いじゃないですか?」

「うるせぇよ!」


 なんて失礼な奴! 


「大体よ、これは魔王を倒すための戦いなんだよ。別に俺たちが一緒に行動しなくたって良いんだよ」

「だったら別に私たちが一緒に行動していても問題ありません! 誰かが先に魔王を倒すかもしれないじゃないですか?」


 俺は、別にリリアたちがこれ以上無理をして命の危険を冒す必要は無いという意味で、優しさを込めて言ったのだが、リリアはまるで俺じゃ魔王を倒せないみたいな感じで言うから、ちょっとムカッと来た。


「それじゃ意味ないだろ! 何のために俺とフィリアは聖刻手に入れたんだよ!」

「そんなの人のために役立つためですよ! リーパーはどんな怪我を追っても死なないんですから、誰もやりたがらない危険な放射能とか、下水道掃除の仕事が出来るじゃないですか?」


 普通治療の方で“医者”ではなく、何故か本当に誰もやりたがらないヤバイ方を選ぶリリアには、社会奉公性を感じざるを得なかった。


「それにフィリアだって、増水した川の堰き止めや火事の延焼を防ぐ凄い仕事が出来るじゃないですか?」


 災害救助隊。それはある意味で魔王を倒すよりもとても現実的な仕事。だけどそれはそれで、聖刻を与えて下さった神様から天罰を受けそうだった。


「そんなことするために聖刻貰ったんじゃねぇよ!」

「魔王を倒すのも街を守るのも同じことです!」


 リリアがここまで俺に拘る理由は分かる。既にジョニーが離れ、ここで俺まで離れるのはとても心細いのだろう。実際リリアがここまで我儘を言ってもヒーが何も言わないのが、その気持ちを如実に表していた。


「安心しろよ。別々に行動するって言ってもちょっとの間だけだ。聖刻貰ったあれだ。祠開いたのが分かるみたいに、誰かが呼んでんだよ。そいつ捕まえたらまた直ぐに戻って来るから」


 半分本当で半分嘘。多分呼んでいるのは一人じゃない。おそらく俺は俺で、俺に見合ったパーティーを組む必要がある。そのための新たな仲間。

 そしてもう一つは、同じ聖刻を持つライバル。同じ聖刻同士奪い合うために引き付け合う。

 多分そうやって聖刻者は成長しながらチームを作り、最後にはチーム同士で聖刻を奪い合う。だからじいちゃんは、聖刻者は殺人鬼だと言った。


 一度三年一組から離れれば、次に会うのは敵同士。そしてもっと言えば直ぐではなかった。


 それを本能的に知ってか知らずか、リリアは直ぐに嘘だと断言する。


「そんなウソには騙されません。もしそうならとっくにジョニーは戻ってきています!」


 もしジョニーがもう戻って来ていたのなら、それは完全にイーサン王子たちにハブられた以外にない。まだ聖刻を奪われたとかならまだしも、どんだけジョニーが嫌われていると思っているリリアには、愛を一切感じなかった。


「とにかくだ。こっちにはエヴァが残るんだし、俺は一旦離れるぞ」

「それでは意味が無いですよ」

「なんでだよ?」

「だってエヴァ……聖刻、貰えてませんもん……」

「はぁ?」


 そんなはずは……確かに正確に言えばもう持っていたから貰えてはいない。だけどそれを知っているのは聖刻を持つ俺たちだけのはず……


「どういう事だよ? エヴァだってちゃんと試練クリアしたはずだぞ?」


 そう言って“そうだろう?” とエヴァの顔を見ると、何故か皆は気まずそうに視線を落とした。


「どういう事だよ?」

「……だってエヴァ、直ぐに戻ってきましたよ? だから……その……」


 多分じいちゃんは“俺は試練をクリアしたぞ!”的な感じで戻ったつもりなのだろう。しかしその時間や戻り方、その後の雰囲気に問題があったのだろう。皆完全にエヴァは試練に落ちたのだと勘違いしており、そこには絶対に触れてはいけない空気まで出来上がっていた。


 下手くそッ!


「エヴァはちゃんと聖刻貰ったぞ! なぁエヴァ!」

「え? あっ、あぁ……」


 今、さんざんエヴァの話をしていたはずなのに、全く話を聞いていなかったのか、じいちゃんはいきなり話を振られたみたいな返事をする。そのせいで信ぴょう性を全く感じさせず、あのリリアが小さくリアルな声を零す。


「ほら……」


 おい! 今のほら……止めろ! 絶望感が半端ない!


「本当だって! ヱヴァはちゃんと聖刻持ってるから! そ、そうだエヴァ! なんか聖刻の力皆に見せて!」

「えぇ?」


 なんでじいちゃん“ほぇ?”みたいな顔してんだよ! なんでこんなにやる気ないんだよ!


 やる気が無いのはいつもの事だけど、俺が聖刻を手に入れたことで自分の役割は終わったとでも思っているのか、じいちゃんはいつも以上にでくの坊だった。


「なんでもいいから! リリアたちになんかアズ様の力見せて!」

「…………」


 一瞬、間があったが、何か見せなければ話が進まないのを理解したじいちゃんは、やっと動き出す。

 周りを見渡したじいちゃんは、何かないかと探す。だけどこんな場所で力を見せろと言われても実際は難しい。しかし経験豊富なじいちゃんなら大丈夫。

 そう思っていると、やっぱり駄目だったようで、ちょっと考えてからまた普通に飯を食い始めた。

 それを見て、またリリアが言う。


「ほら……」


 どんだけリリアの中でじいちゃんの評価は低いのか、完全に信用していなかった。


「違うって! 力見せろって言われても、こんな所じゃ難しんだよ!」

「力を見せろと言ったのは、リーパーじゃないですか?」


 確かにそう。言ったのは俺。


「じゃ、じゃあ……そうだ! なぁエリック! ちょっとそのナイフで指千切ってくれ!」

「ええっ⁉ 嫌ですよ! なんでそんな事しないといけないんですか⁉」

「大丈夫だって。エヴァが治してくれるから」

「そういう事じゃないですよ!」

「じゃあウィラでも良い! ウィラ! 頼む!」

「無理です!」


 こういう時に役立たないのが、三年一組の男子の悪いところ。俺が自分でやっても良いが、俺が治癒出来る事は知っているから意味は無い。こんな時ジョニーがいてくれたら問答無用でフォークで刺せたのに、今のメンツではやっぱり駄目だった。

 そんなことをやっているから、増々女子たちが優位に立つ。


「食卓を汚すような事は止めて下さい。もうエヴァには無理です」


 リリアのこの発言により、女子の視線が俺に集まった。こうなるともう大人しく腰を下ろすしかなかった。

 すると、やっと場が落ち着いたと思ったのか、クレアが口を開く。


「リーパーの気持ちは良く分かる。しかしこの状況では、やはり今リーパーに抜けられるのは非常に苦しい。誰かが次の聖刻を手に入れるまで我慢してくれないか?」


 それは完全に、今の男子では役立たないと言っていた。それなのに、な~んも理解していないエリックはそうだと頷く。


「そうですよリーパーさん。リーパーさんには高い治癒能力があるんですよ? フィリアさんの力で守り切れなかった人でも完治出来るんですよ? “誰か”が怪我をしても大丈夫なんですよ? もう少しだけ一緒にいてもらえませんか?」


 お前をゾンビにしてやろうか!


 全く戦う気の無いエリック。エリックの言葉にそうだと頷くウィラ。この二人が先ず自力で聖刻を手に入れに行った方が効率が良いのではないかと思ってしまった。

 それに、これ以上兄弟と離れたくないリリアとヒー。好きな人と一緒にいたいクレアの思惑も考えると、こいつらを一度蝋人形に変えた方が早い気もして来た。


 このままでは話がまとまらない状況は、非常にマズい状況だった。そこでやっとファウナが口を開く。


「皆さん落ち着いて下さい。確かにリーパーの力は私たちにとってはとても強力です。ですが、リーパーは影なんです」

『ええっ⁉』


 喋ったと思ったらいきなりひどい事を言うファウナには、俺も思わず声が零れた。


「ど、どういう事ですかファウナ⁉ リ、リーパーはいつも通りですよ⁉ ちょっと我儘になったくらいで影なんですか⁉」


 リリア。慌て過ぎて余計な言葉を零す。


「リーパーが影のわけないだろファウナ⁉ 確かにいつもより“は”やる気がある感じはするが、それは一時だけだ!」


 クレア。どうやら生前の俺はボーちゃんに見えていたらしい。


「影の定義とは人を……大丈夫です! リーパーは影ではありません!」


 ヒー。自分で言ってみてやっぱり俺が影だと気付いたみたいで、力で押し切るつもり。


「…………」


 エリック、ウィラ。スクーピーは良いとして、お前ら何か言えや!


 ファウナの一言で、一部を除いて騒然となった。だけどヒーの言葉を聞いて、強ちファウナの言う事は間違ってはいないと思うと、やはり俺は皆とは離れた方が良いのだと思った。


 そこへエヴァがダメ押しをする。


「ファウナの言う事は間違ってない。リーパーの力の使い方を見ていると、俺もファウナと同じ意見だ」


 じいちゃんがそう言うのなら間違いない。俺自身正しいアズ様の力の使い方が分からない以上、前英雄であるじいちゃんが言うのなら間違いない。

 それでも納得のいかないリリアは、増々口が悪くなる。


「何故そんなことが分かるんですかエヴァ! 聖刻も貰ってないのに!」


 どうして分かるんですか? ではなく聖刻“も”貰ってないのに “!”は相当興奮しているのが分かった。


 これは本来なら相当強い言葉だったが、昔からリリアを知るじいちゃんにとっては屁でもなかったようで、皆が一瞬リリアを見たが平然と言葉を返す。


「アズ様の力ってのはな、誰かの命を奪って、それを自分の力として使うのが本来の使い方なんだ」

「だからリーパーはその力を使って怪我を治していたじゃないですか! どこも影ではありませんよ!」

「リリアの言う通りそこは間違ってない。だけどリーパーは、一人から全部じゃなくて、沢山の命から少しずつ命を奪って力を使っていた。そこが間違いだ」

「どこも間違ってはいませんよ! リーパーは優しいから、皆からちょっとずつ命を貰って、誰も死なないようにしていただけですよ! 誰かを殺してまで力を使う方が影じゃないですか! それにリーパーは聖陽君のようにはなっていないです!」


 リリアの言う通り。俺も誰かの人生まで奪おうとまでは思わない。この世界を守るために寿命を少し分け与えてもらうだけなら、致し方ない。寧ろ死神みたいな事をする方が影だ。

 そう思っていたのだが、やはり自分が影だと影が何なのか分からないようで、エヴァに諭される。


「お前たちは勘違いしている。生きていれば幸せ、寿命が少し減るだけなら問題ない。命ってのはそんな人間的に簡単なもんじゃない。お前たちに分かりやすく言えば、リーパーが目を怪我しました。だから目玉をくれ。リーパーが心臓を失いました。だから心臓をくれ。って言ってるもんなんだよ。リリア、目玉や心臓を取られた人間が、どうやって生きていくと思うんだ?」


 このエヴァの言葉で、一斉に皆の表情から血の気が引いた。


「それに、誰かの怪我を治すのは、アズ様の力の中じゃかなり難しい。特にリーパーみたく他の生物からなら尚更だ。同じ種族同士ならそのままとまでは行かないが、代替えとして流用できるが、別種となると一度命をエネルギーレベルまで分解しなくちゃならない」


 やっている事は非常に高度だが、その力の使い方のせいで命を奪われた者は生涯の障害を負う。エヴァの例えは俺たちに分かりやすく伝えるためだが、実際に力を使った俺からしたら、それはまだ慈悲に溢れていると言っても過言ではないだけに、如何に自分が非道な力の使い方をしていたのかが酷く伝わった。


 それでもまだエヴァは伝え足りないと思ったのか、まだ続ける。


「お前たちも知ってるだろ? アズ様が死神って言われてるの? アズ様は命を循環させるのが役目なんだ。ちょっと奪って苦しめるのは間違いだと思わないか?」


 エヴァの言う通り。全て奪って使ってあげれば、その命は再び生を得て転生できる。それをしないで半殺しにするのは、苦しめ傷付ける事と変わりない。

 これは自分が影だと認めざるを得ない。


 皆もエヴァの説明には認めるしかないようで、もう誰も否定はできなかった。


 そんな状況で切り替えが早いのがリリア。


「では……どうすればリーパーは元に戻るんですか?」


 俺が影なら離れるしかない。それが皆にとっても一番良い答え。そこで話が終わるはずだったが、すぐさま“ならどうする?”に切り替えられるリリアはさすがだった。


「やっぱり一回離れるしかない。リーパーは特殊な力の使い方を覚えたせいで、このまま成長すれば意図しなくてもお前たちからも寿命を奪うようになる」

『⁉』


 今日一の驚きが皆を包んだ。


「リーパーは今、人間が観測できないレベルの微生物やウィルスとかからしか命を奪う事しかできない。だけど聖刻が馴染めば引っ張る力は強くなって、協力的な命なら何でも奪っていくようになる。一応フィリアの結界の中にいれば守っては貰えるが、ちょっとした瞬間や緊急時になればそれも難しくなる」


 まだ俺は初歩的な力しか使えない。だからこそエヴァの言う事は否定することが出来なく、その可能性は十分あった。それに将来的にリリアたちからも命を奪うようになるなら、完全に力をコントロールできるようになるまで離れなければならない。


 ここまで危険性を示されると、リリアもそれが一番適切だと思ったのか、もう何も言わなくなった。


 だけどこれで“一旦”皆から円満とまでは言えないが、蟠りなく離れられる機会を得られたと思うと、結果としては悪くは無いと思った。そう思っていたのだが……


「それに……俺も良く分からないとこがあんだ」

「え?」

「普通影になったら性格とか見た目とか変わるから直ぐに分かるんだが、リーパーは特に変化が見られない。もしかしたら中身は変わってるのかもしれない」


 その瞬間、皆の視線が一斉に俺に集まった。それでもエヴァは続ける。


「リーパーって昔っから怒っても、たまに分からない時があんだよ。普通に笑うし、普通に喋るし。多分周りに気を遣う性格だからそうなるんだと思うけど、もしそうだったら今も変わらない理由がそれなのかもしれない」


 本当に余計な一言。今のエヴァの発言のせいで、まるで俺が良い人の仮面を被るサイコパス殺人鬼みたいな印象を皆に与えてしまったようで、一気に空気が重くなった。


「お、おい……そ、そんなわけないだろ? ……俺はいつも通りの俺だよ?」


 正に一触即発の状況。俺が喋っても誰も身動き一つ取らず、無言で見つめる。もっと言えば、聖刻の力のせいで皆から発せられるオーラが臨戦態勢になっているのが分かるくらいで、今は呼吸一つ間違えることが出来ない状況だった。


「…………」

「…………」


 非常にマズい状況。ちょっとでも動けば戦闘が始まる。そのくらいの緊張感が漂っていた。特に自分で言っていたじいちゃんまで何故か“そうだったのか”みたいな感じで見ているせいで、もう手に負える状況じゃなかった。


 そんな状況で、あまりの緊張かエリックが突然変な呼吸をしたせいで、一気に事態は急変した。


“ピー……”


 本当に鳥のさえずりよりも小さな喉からの音。その音が聞こえたと思った瞬間、いつの間にかファウナが俺の後ろから喉にあの白い刀を押し当てていた。


「動かないで下さい。少しでも変な動きを見せようとしたら、首を落とします」


 これがアテナ神様の聖刻の力。流れのある物、つまり今は時を止めて俺の喉に刀を押し当てた。流石はクレアの祖母であり、前英雄! ……って言うか! 何でだよ⁉


 ファウナなら分かっているはず。俺が影ではないことくらい。それなのにこの動きは異常だった。ところがそれも全て俺の為だった。


「とても残念ですが、リーパーにはここで私たちから離れてもらいます。ですが安心してください。影であろうと表であろうと、必ず最後には表になります。だからリリア。今一時、大きく成長するために旅をさせます。それはリーパーだけではありません。リリアも、ヒーも、クレアも……ここに居る全員に言えた事です」


 聖刻の力だけじゃなく、心としても成長させるための旅。それはルフィーだけじゃなく、悟空だってケンシロウだってジョジョだって通って来た道。そうやって彼らは大きくなった。俺たちもそうなれとファウナは言っている。俺の首に刃を突きつけながら。


 この思いやりのある言葉は、己の弱さを知っている三年一組には沁みたようで、皆は一度目を伏せたが、次に上がる目には強い光を宿していた。


「これでもう誰も、リーパーが離れる事を許さない人はいませんね?」


 ファウナの問いかけに、もうリリアですら首を横に振らなかった。

 それを確認すると、ここでファウナは刀を下ろした。


「ただ一つ、リーパーにお願いがあります。それは、今日はもう遅いので、旅立つのは明日の朝にして下さい。そうすれば今夜は誰も眠れない夜を迎える必要はありませんから」


 ここでどんなに揉めても、もうわざわざ眠る必要のない俺は、皆が寝静まったら勝手に出発する気だった。それを見透かしてこんな演技までして皆と最後になるかもしれない夜を楽しめというファウナには、まだまだ勝てる気がしなかった。


 その夜。俺たちは一つの部屋に集まり、夜が明けるまで楽しいひと時を過ごした。

 幼いが故に、ここ最近の展開で口数が減っていたスクーピーの名前を確認するほどでした。他にも、喋っても特に需要の無いエリックとウィラは、覚えていても描きませんでした。クレアに関しては、意外と暴力的な事は苦手なので、付いて行けなかっただけで、普通に委縮して口数が減っていました。後、もうこんなにいたら描くのが面倒なので、次話から章が変わります。

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