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2話 だから君は
「いや〜裕斗には悪い事をしたな〜」
無事検査を終えた乖穢はフロントに向かう途中でそんな事を口にした。
理由は実に単純だった。
乖穢は今────銃を隠し持っている。
検査は無事に突破した。
なら何処に銃を隠していたのか?
それは実に簡単だった。
鞄の裏側。
入念に調べていれば必ず見つかったであろう場所。
しかし今回は簡単に抜けてしまった。
何故なら……検査員が裕斗だったから。
普段の裕斗なら隈なく探し、銃を見事に探し当てていだろう。
しかし今回の裕斗は相手が乖穢という事もあり気が抜けていた。
酒を手にした時点でこれ以上は怪しい物は無い────そう安心を得てしまったのである。
乖穢は最初からこれを狙って裕斗の元に検査をしに行ったのだ。
もし自分の相手が裕斗なら、パス出来るはずだと。
そんな銃が入っている鞄を携え、第一目的を達成した乖穢は対象となるハルネの事を考えて更に一言加える。
「友人の面子なんて金の次だよね〜」
乖穢らしい、いかにもな言葉を。
× ×