23話 停電後────不遇者
会場の参加者達が外へ逃げ出している時────
────何が起きてんだ?
パーティーで起きている現象を目の当たりにしているウィルが最初に思ったのは素朴な疑問だった。
突如乱入したガタイの良い男。その男は今警察によって拘束されているが、その直後に起きたビルの停電。
明らかに不吉な何かがこのビルで起きている。
市民達が慌てて警察の誘導を聞きながら、壊れた正面玄関から外へ出て行く様を見ながらウィルは今後どうするべきかを思案する。
────このまま外に俺も逃げるか……
────腹は膨れてるしな……
完全な飢餓状態に陥っていた身体は完全回復をしており、ウィルの頭は冷静な思考ができるまで復活を遂げていた。
しかし問題はその次である。
────景品とやらがどうにも気になる。
ハルネの用意した景品。
ウィルはその景品をあわよくば手に入れてそれを売り飛ばし、母国に一旦帰るというのが目的であった。
しかし今の状況になってしまえば景品の譲渡など行われる事はないだろう。
このままウィルは外に出た所で一文無しの為、どうせまた数日後には飢餓状態に陥る。
リスクを犯してでも地下に用意してあるという景品を盗みに行くべきか────
────いや、金を入手する手段なんていくらでもある。
────わざわざ危険を冒して盗みなんて狡い事をする必要はねえよな。
ウィルはそう考えると正面の扉に身体を向け、歩みを進めようとする。
しかし────
「君、少し良いかい?」
背後から響く軽い調子の声と肩に置かれた手によってウィルは呼び止められた。
「何か用でも?」
「単刀直入に聞くけど、君部外者でしょ?」
────……何だコイツは。
ウィルを呼び止めた男────乖穢はニコニコとした相変わらずの調子で言葉を続ける。
「おかしいと思ってたんだよねえ……明らかに場違いは見窄らしい服装。そして何より誰一人として君に挨拶をしない……ハルネさんの知り合いだとしても挨拶ぐらいは済ますよね?」
「……否定はしない。俺はちょいと一文無しって奴でさ。どうしても飯にありつきたくてさ。見逃しちゃくれないか」
見た限り乖穢は警官ではなさそうに見える。
他の警官達はちゃんとした制服を着ているのに対して乖穢はシンプルな黒のスーツである。
私服警官という線も考えられたが、乖穢の軽い話し方や、装備品なども特に見受けられない為、その線は薄いのではないかと思い、ウィルは嘘を付かずに真っ当に答えた。
しかし乖穢はその答えを聞くとさらに口元を歪めてみせた。
何か悪い予感を感じ取ったのかウィルは乖穢に踵を返して急いで外へ出ようとする。
「まあ待ちなよ。悪いようにはしないからさ」
しかしその背後から乖穢が歩幅を合わせて付いてくる。
「このままだと警察さんに侵入者のお仲間って事で突き出しちゃうよ?」
その言葉を聞いてウィルはピタリと脚を止めた。
「俺をどうしようって魂胆だ?」
「何簡単さ!少しこの場を盛り上げる為のスパイス的な?」
目の前の男は何を言っているのだろう。
そんな訝し気な視線を乖穢に送りながらウィルは次の言葉を待つ。
そしてその言葉を聞いた瞬間ウィルは大きなため息を吐くハメになった。それ程に乖穢の口から放たれた言葉は勘弁して欲しいと心の底から願ってしまう様な荒唐無稽な物言いだったのだ。
「さっき警察に捕まったヤバい奴いるじゃん?」
「ソイツを地下に差し向けて欲しいんだよね〜」
乖穢の提案聞いたウィルは文字通り大きなため息を吐いた。
────不幸だ……
と、心中で呟きながら。
× ×




